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咲きほころぶ踊り子たちの肖像 舞姫爛漫  第6回 「七雪ニコ」 【3】
写真・文・インタビュー=インベカヲリ★ モデル=七雪ニコ

ストリップ劇場でのストリップショー。黄金時代は過ぎたといえ、根強いファンはいまも劇場に通っています。そして踊り子たちもまた踊り続けているのです。そんな彼女たちの姿を追う「舞姫爛漫」第6回、七雪ニコさん掲載中です!
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踊り子になっちゃおう! なっちゃえ! なってやる!みたいに思って
でも第一歩を踏み込むまでに1年とか2年とか掛かりましたね

まわり道


「男の子に好きになってほしいとき、アピールするじゃないですか。私は自分の描いた漫画を見せたり……これはキチガイ沙汰かもしれないけど、踊りを踊ったりするんですね」

そう言って恥ずかしがると、キャ〜っと顔を伏せた。

好きな人を振り向かせるのに、自分の得意なことを見せたい気持ちはよくわかる。しかし、七雪ニコの踊りは、果たして一般男子にウケるのか。

「森本君に見てほしくて、友達にビデオで撮ってもらったんですよ。ワンピースの衣装を作って、曲を選んで、踊りましたね。そのときは笠置シヅ子の曲とか使いました」

一生懸命に作ったが、再生した映像を見て、七雪ニコは呆然とした。

「コレ出したらヤバイんじゃないかと思って。自分にヤバさを感じたんですよ」

迷うことなく、その映像を森本君に見せることは止めにした。

「踊りは好きだけど苦手だったのね。運動も好きだし、体動かすのも、歌うのも、喋るのも全部好きなんだけど、恥ずかしくて嫌だったんですよ」

あるのは表現衝動のみ、といったところか。運動神経のなさにコンプレックスを抱いていた七雪ニコは、自分には何ができるのかを考えていた。自分が出たい。でも自分を出す表現にはためらいがある。悩む日々を送っていた学生時代のある日、ふいにストリップ劇場へと足を運ぶ機会が訪れた。

「女の子の友達が無料券をくれて、『すごいよいから』って勧められて、彼女と一緒に観に行ったんですよ。そしたら、今までヤバイんじゃないかと思ってた自分の踊りでの表現が、いや、ヤバくないんじゃない?って思えるようになって。私がやるのはこれなんじゃない?って。ストリップが大好きになって、月一回のペースで彼女と観に行くようになりましたね」

七雪ニコという人間を表現するのに必要なのは、踊りの上手さや格好よさといったものではなかったのだろう。「脱いで」「踊る」ことを条件に、自由な表現のできるストリップは、どこまでも広がりを見せる。

「感覚的にこれだ!っていうか、ピンときた、みたいな。電撃結婚って感じ」

七雪ニコは、ストリッパーになろうと決心した。

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「踊り子になっちゃおう! なっちゃえ! なってやる!みたいに思って。でも第一歩を踏み込むまでに、私は1年とか2年とかじゃないくらいに掛かりましたね。『踊り子をやりたい』っていう自分を認める壁があって。私なんかにできるわけない、私っていうものでお金を稼ぎ出すなんてことが、あるわけないじゃんって思ってたんですね」

踊り子という道を、頭の片隅に置きつつ、アルバイトをする日々を送っていた。面接を受けに行く勇気がどうしても出てこない。初めてストリップを観た日から数年が経ち、気付けば彼女とは別れ、一人暮らしをしていた。生活は落ち着き、何かを始めるなら今だと感じた。

「それで踊り子になるしか、やることがなくなったんですよ。とりあえずジムに通ったり、毎日フーゾク誌を見て、ストリッパー募集を探したり。ストリップ劇場に行って、好きな踊り子さんのポラを勇気を出して買ってみたりしましたね」

自分に自信が持てなかった七雪ニコは、迷ったあげく「一番優しそう」という理由でTSミュージックを選んだ。

「他のところじゃ塩まかれちゃうよ、唾吐かれちゃうよと思って」

ファッション誌を見て、モテそうなカーディガンを買い、縮毛矯正をかけた。「普通のお姉さん」風で面接に挑んだ七雪ニコは、不安をよそにあっさりと合格した。そして2週間後にはデビュー。しかしデビューさえすればよいというものでもなかった。

「仕事があんまり決まらなくて、もうその生活がダメになってきて。決まったり決まらなかったりとか。それでなんか無理だなと思って。なんかもう死んじゃうなと思って」

「仕事が入らなかったってことですか」

「……ま、そうだね」

踊り子は、自分の所属する劇場以外にも、他所の劇場から呼ばれて全国各地を周る仕事だ。売れっ子の踊り子は、すぐに興行が決まって引っ張りだこだが、客が入らない踊り子であれば呼ばれることも少ない。

待てども、待てども、電話はかかってこない。七雪ニコは「売れてない」部類の踊り子だった。

気付けばデビューから1年が経っていた。売れっ子の踊り子であれば、一周年記念として、大勢のファンから花束やプレゼントをもらい、祝福される興行となるはずだ。しかし七雪ニコの一周年は、仕事すら入っていなかった。踊り子の仕事に全精力をかけているのに、なんとも空しい。

「でも自分的には記念日だから、何かやりたかったんですね。それで東中野のレンタルスペースを借りて、ストリップの発表会をやることにしたんですよ。知り合いを呼んだり、ネットで呼びかけて人を集めました」

自分でスペースを借りて一周年イベントを行なうとは、踊り子としては異例の行動だ。ストリップを観たことがないお客さんがいっぱい集まり、小さな会場は満員になった。

「そしたら『仕事でやりませんか』って声をかけてくる人がいて、えー!?と思って。こっちは全然そんなつもりないし」

意外な場所からのオファーに、七雪ニコは困惑した。

「こっちは劇場のストリッパーなのに金を産まない、だから自分でやってるのに、なんなんだろうと思って。はあっ!? 何いってんのっ?くらいの気持ちがあって、ずいぶん懐疑的だったんだけど。まいっかーと思って、それから外で踊ることはちょこちょこありましたね」

七雪ニコは、ストリップ劇場以外でもストリップをすることがある。ライブハウスでバンドと一緒に出ることもあれば、演劇の舞台にストリッパーとして立つこともある。東京ビッグサイトで開かれる「デザインフェスタ」のステージで脱いだこともあった。ストリップ劇場での七雪ニコを観たことがなくても、美術的なイベントで七雪ニコを観たという人は多い。2003年には写真家から声をかけられ、「デジタル写真集」も出版している。てっきり彼女は、最初からそういう活動を視野に入れていたストリッパーなのかと思ったら、意外にもそうではないという。

「意欲的にそっちを始めたわけでは全然ない。なんとなく呼ばれて増えただけ」

あくまでストリップ劇場のストリッパーという意識が強かった。しかし肝心の劇場からの仕事はなかなか入らない。七雪ニコは、わけがわからなくなっていた。

「なんか他のことをやってる人ってよく思われるんだよね。他の場所でのストリップと、劇場でのストリップは全然関係なかったはずなんだけど。ストリップ劇場のストリッパーじゃないらしいみたいな雰囲気があって。自分を上手くコントロールできないし、生活できないし。それで2年ほど前に、踊り子を休業しようと思ったことがあったんですよ」

劇場に相談すると、特に引き止められることもなく辞めることが決まった。

「辞めてどうするの?」と聞かれた。

「とりあえずパン屋さんでバイトしようと思います」と答えた。

最後の興行の日、七雪ニコは知り合いをたくさん呼んで、華々しく終えようと思った。声をかけると、みんな喜んで来てくれた。

ストリップ劇場での最後のストリップ。七雪ニコは頭が真っ白のまま、やけくそにステージをこなした。会場は満員だった。

「そしたらそしたでさ、私が結構お客さん呼んだっていうかさ、その10日間の興行は、私がもてはやされる週になってしまったわけよ。『なんかニコちゃんスゴイらしいじゃん』くらいの」

個性的なストリッパーは、ある種の人間には確実にウケていた。その状態を目の当たりにした劇場側は、去っていこうとする七雪ニコを引きとめた。

「これからは都合が合えば出てもらえますか?」

七雪ニコは喜んだ。

「だってストリップの仕事が一番やりたかったんだから。私なんか全然必要とされてないのに、居座っちゃってスミマセンみたいな感じがあったから。『いいかな?』 『いいとも!』だよね」

そして現在、デビューから5年目を迎えている。

(続く)

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Nanayuki Nico x Inbe Kawori★

七雪ニコ
新宿TSミュージック所属。2004年2月21日シアター上野にてデビュー。新潟出身、B型、双子座。好きな言葉は「楽しんでくれよ、さもきゃくたばっちまえ!」。ステージ上ではピアニカを用いるなどPOPな演目を披露、また積極的にタッチショーも行なっている。劇場以外でもパフォーマンスを観ることができる数少ないストリッパーのひとり。

香盤情報

福井・芦原ミュージック劇場
6月11日-20日
撮影=インベカヲリ★
モデル=七雪ニコ
取材協力=シアター上野

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インベカヲリ★ インベカヲリ★ 東京生まれ。編集プロダクション、映像制作会社勤務を経てフリー。写真、文筆、映像など多方面で活動中。著書に「取り扱い注意な女たち」。趣味は裁判傍聴。ホームページでは写真作品を随時アップ中。

インベカヲリ★ http://www.inbekawori.com/

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08.05.24更新 | WEBスナイパー  >  インタビュー