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I want to live up to 100 years
「長生きなんてしたくない」という人の気持ちがわからない――。「将来の夢は長生き」と公言する四十路のオナニーマエストロ・遠藤遊佐さんが綴る、"100まで生きたい"気持ちとリアルな"今"。マンガ家・市田さんのイラストも味わい深い、ゆるやかなスタンスで贈るライフコラムです。1年くらい前から、体重計に乗らなくなった。
なぜか。ひとことで言うと「あきらめ」である。
20代、30代の女子にとっては非常に残念なお知らせであるが、40代というのはまあ太るものだ。私の場合でいうと、この数年で8キロ近く体重が増加してしまった(そしてたぶん今も絶賛増加中)。
「好きな食べ物はビールと脂身と甘いもの」と公言し、その通りの食生活を送っているのだから当たり前と言えば当たり前だけれど、それでも30代の頃はここまで簡単に肉は付かなかった。
さらに厄介なことに、年をとるとダイエットをしても痩せなくなる。
20代や30代の頃なら3日も絶食すれば2~3キロはすぐに落ちた。でも40代になるとそうはいかない。たとえ3日間絶食して1キロ減っても、次の日焼肉で祝杯をあげたらすぐに1.5キロのリバウンド......若い頃と同じ、いやそれ以上の努力をしても一向に報われないのである。
これじゃ投げ出すなというほうが無理だろう。
そんなわけで最近はすっかりおばちゃん化が進み、ボタンがとまらなくなったジーンズを押し入れの奥に突っ込んで、ウエストがゴムになったロングスカート姿でノシノシと過ごしている私(潔く捨てられないのもおばちゃんの特徴。ええ、わかってますよ......)。
でも実をいうとこの四十路まるだしの今のおデブ状態、そこまでダメだとは思ってなかったりもする。
いや、それどころか「いよいよ豊満熟女にシフトチェンジするときが来たか......」と内心ワクワクしたりもしているのである。
考えてみると、そもそも私は年をとるのがあまり怖くなかった。
年をとると容姿に衰えがくるし、体力が落ちてできないことも増えてくる。もちろんずっと若くいられるのならそれに越したことはないけれど、今の10代、20代の女の子のように「ババアになったら女扱いされなくなってしまうんじゃないか」という恐怖は、ほとんどなかったと言っていい。
その理由の一つは、10代や20代の頃に「女の子だから」という理由でちやほやされた経験がないせいだと思う。
少女時代はアダモちゃんみたいな天パー頭でわんぱく相撲の横綱を張っていたし、高校の頃はバリバリの帰宅部。家に帰ってすることといえば布団にもぐって前日の夜にエアチェックしておいた深夜放送を聴くことだけだった。当然、男の子とデートする機会も皆無だ。思えば、大学時代もフリーター時代も遊ぶ相手といえば同性の友達か女の先輩ばっかりで、男の知り合いはほとんどいなかった(そう、恥ずかしながら私の「女の人生」が始まったのは、30歳を過ぎてエロ業界に足を突っ込んでからなのだ)。
今でもよく覚えているのは、高校を卒業して最初の同級会で「男は4000円、女は......うーん、3000円でいいや」と言われて感動に打ち震えたこと。チンコがついていないってだけで、1000円もトクできるなんて......! まあ、それくらい"女子であることのメリット"とは無縁の10代、20代だったと思って欲しい。あの頃から見たら、ちょっとやそっとシワができたって、40代はパラダイスだ。
そして、私がおばちゃんを肯定しているもう一つの理由は、AVの存在である。
若い女の子は、いろんなことに悩んでいる。「太っている」「胸が小さい」「他の子よりアソコが黒い気がする」「もうすぐ30歳になってしまう」――。そんな話を聞くと、心底こう言ってあげたくなる。
「AVを観ればいいのに......」
いわゆる喪女だった私は、大学に入って一人暮らしをするようになった頃から頻繁にAVを観るようになった。もちろんオナニー目的だ。AV好きが嵩じて、今ではAVライターなんてこともやっている。
エロ目的で観始めたAVだったけれど、多くの女性と多くのセックスを見ていたら、いつの頃からか年齢がどうだとか身体つきがどうだとかいうことは、そこまで大きな問題ではないんじゃないかと思えるようになってきた。
今のアダルトビデオに出ている女の人は、本当に多様だ。
麻美ゆまや吉沢明歩やRioみたいにアイドル級のルックスとエロさを兼ね備えた子ももちろんいるけれど、ちょっと奥を覗いてみれば、それこそ星の数ほどの価値観が潜んでいる。
例えば、豊満女性専門メーカー。
街を歩いていても、"まぐろ物産"というメーカーのAVで汗まみれになって3Pしている豊満AV女優よりもBMI値の高い女の子はそうそう見かけない。でもバスト120センチ、ウエスト90センチ、ヒップ130センチ。そんなお肉の塊のような女性が、ちゃんと性の対象になっている。
AVの世界ではしばらく前から熟女ブームが続いていて、熟女メーカーもすごく元気だ。若い男優の前でたるんだお腹をさらけだし、頬を赤らめて恥じらう五十路妻はいとおしい。
マカロンくらいの大きさはゆうにある乳輪を「エロい」「たまらん」「最高!」と褒めそやす殿方たちはもはや多数派。AAカップの洗濯板おっぱいも、お尻のほうまでみっしり生えた陰毛も全然アリだ。
言っておくが「下を見れば安心するだろう」なんてケチな料簡では決してない。
世の中には、それを上とか下じゃなく"代え難い魅力"だと思っている人、麻美ゆまのコスプレ物より『初撮り五十路妻ドキュメント・寺島信子』に興奮する人たちが間違いなく一定数いるのだ。そうじゃなけりゃ、わざわざお金を払ってそのAVを買ったりなんかしないだろう。
そして、AVの中で恥じらったり欲望を露にしたりしてる彼女たちは、女である私の目から見ても魅力的だ。たとえ、目に見えてわかるようなコンプレックスを持っていても。
もう一度大声で言おう。
「年をとるのが怖い」という女子は、熟女AVを観るといいと思う。年も体重も、女の本質に関係ないってことがわかるはずだから(一般女性にとっては抵抗があるだろうが、今は無料動画が見られるサイトもたくさんあるし、布団にもぐったままスマートフォンでこっそり観ることだってできる)。
テレビでは熟女芸人が熟女の魅力について語り、コンビニには熟女雑誌が何冊も並ぶ。たぶん有史上で最も熟女がチヤホヤされている時代が今だ。そもそも、60代のロマンスグレーから見れば我々なんてまだ小娘なんだから、三十路になったって四十路になったって、心配することないはずなのだ。
なーんて威勢のいいことを言ってはいるが、私もまだまだそこまで悟れてはいないのが本当のところ。年下の女の子達と撮った写真の中にうちの老母そっくりな二重あご熟女が写っていればダークな気持ちになるし、殿方からあからまさに「守備外!」みたいに見られるとへこんだりもする。
でも、熟女と言われる年齢になったからって、すべてが終わるわけでもない。人生も女も、ゆるゆると続いていくのだ。だから、あきらめ半分、希望半分。そんな感じでいければいいと思う。
先日、デブ専&熟女好きの男性に会ったとき「太ってきたから豊満熟女にシフトチェンジしようと思ってるんだよね」と言ったら、「遠藤さんなんてまだまだ中途半端! 最低でもあと20キロ増量してください!」と一喝されてしまった。
豊満熟女への路も、なかなか険しいようである。
文=遠藤遊佐
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14.09.06更新 |
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