WEB SNIPER Special Cinema Review!!
真魚八重子とターHELL穴トミヤの映画の話にかこつけて【5】
『映画秘宝』や朝日新聞映画欄などで活躍されている映画評論家・真魚八重子さんと、WEBスナイパーの映画レビューでお馴染み・ターHELL穴トミヤさんが、お互いに話したいテーマを持ち寄って映画談義に花を咲かせたら......!? 時には脱線もありでお届けする規格外の対談連載、第5回は「女性から見た、男性が共感してそうな映画」をテーマに、ジャド・アパトー監督『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』、デヴィット・ウェイン監督『ぼくたちの奉仕活動』を取り上げます! 前後編に分けてのお届けです。編 前回はターHELLさんに「異性から見た、異性が共感してそうな映画」を挙げていただきました。今回は真魚さんの番ですね。挙げられた作品を教えてください。
真魚八重子(以下「真」) 私が考えた「男の人ってこうなんじゃないかな」という2本は、『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』 と『ぼくたちの奉仕活動』です。どちらも彼女のほうがキャリアウーマンで、男はボンクラという話。俳優が一部かぶっていて、コメディ映画の繋がりも感じさせる作品ですね。『無ケーカク~』はクラブでいい雰囲気になった女の子とヤッて、一晩限りのつもりだったのに彼女が妊娠してしまい、出産するって決めたから彼が手伝おうとする映画。彼女のほうは、テレビのエンタメ番組のキャスターに決まったお祝いでクラブに来ていて、彼は日常的にマリファナを吸い、クラブに行ってといういつもの生活の中で来てる。で、いい雰囲気になって、彼女が泥酔してたからヤッちゃって。
ターHELL穴トミヤ(以下「タ」) 原題の「Knocked Up」は「打ち上げる」とか「孕ませる」「妊娠させる」って意味なんですね。真魚さんはこの映画のどこに男性っぽさを感じたんですか? やっぱセス・ローゲンが演じてるキャラクターとか?
真 このセス・ローゲンは現実の彼も20代半ばだし、映画の設定も23歳と若くて、基本的にぼんやり過ごしてる。彼はぼんやりしてたい人。
タ (笑)。
真 私の中に、"男の人は男同士で過ごしてるほうが楽しいんじゃないか疑惑"があって。この映画は同居してる男5人が無職。セス・ローゲンが高校生の時に郵便配達の車に轢かれて、その保険金で食いつないでる。それにたかってる男友達4人とセス・ローゲンが昼間から卓球やったり、ビデオを観たりしてる。そういう生活はきっと楽しいよね。一方で一晩だけ寝たキャサリン・ハイグルに「妊娠した」と言われて、急に父親になる意志を持たなきゃいけないというのは、結構な追い詰められ感があるんじゃないかと。その辺で男性らしさがあるかなと思いました。
タ ボンクラ男にとっての一つの恐怖ですね。ブルーレイの特典映像を観てたら、未使用シーンで仲間が「女なんかと付き合うからお前はこんな目に遭うんだよ!」って言ってて。
真 (笑)。
タ もう、このセリフがボンクラ男の全てを代弁している(笑)。典型的なホモソーシャルなんですけど、僕もものすごく分かるセリフ。男たちでワイワイやってるチームが必ずブチ当たる壁が女だという、これは永遠のテーマですね。
真 やっぱりセックスはしたいわけじゃない。そうなると定期的に会えたほうがラクでしょ。毎日クラブで引っ掛けるのは大変だし、そもそもイケてない人ばかりで、自分なんか恋人ができない、女の子から告白されたことないって人たちだから、凄いジレンマですよね。男同士でいたほうが楽しいのは分かってるけど、彼女も欲しいという。
タ ボンクラ系の映画でそのジレンマへの対処法は2パターンあって、一つはバカ過ぎてそのジレンマの存在に気づかない。
真 (笑)。
タ 女の子と仲良くなったらどうなるか、その先に思いが至らないっていう。『無ケーカクの命中男~』は絶対そっちだし、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』もそっち。あとになってから「彼女ができたら、男同士で遊ぶ時間がなくなっちまうんじゃねーの?!」って気づくという。もう一つは男同士が最初から女性のインパクトに備えていて、女性は性の対象としてだけ割り切るみたいな。「同じ女とは二度合わない」とかルールを決めて、人間としての関係性を求めない。
真 それは女の子1人に対して、1回しかしないと決めてる人たちなわけ?
タ そうそう、そういう秘密結社を作り上げる。で、女性によって彼らの関係性が絶対に変わらないようにするっていう。
真 でも、それじゃ結婚できないですよね。
タ そうなんですよ。ちょっと前に公開したザック・エフロンの『恋人まで1%』がまさにそんな話で、男同士で女と深入りせずヤリまくるっていう誓いを立てて、毎晩バーまでナンパに行く。で、一番モテてイケイケのエフロンだけが誓いを守り続ける。他の仲良しメンバーはそこまでモテないしイケイケでもないんだけど、それなりに出会いがあって、そのうち「俺なんか運命感じちゃったから結婚するわ」みたいなことになる。すると「ルールはどうなった!」って、結局一番ヤリヤリ、イケイケだったザック・エフロンだけが置いていかれちゃうっていう、そういうビターな映画だったんですけど。それと比べると『無ケーカクの命中男~』は「女なんて」というノリもありつつ、でもそれがそこまで強くない。全体としては結婚祝福ムードだし、子供も「産まれてくるならいいじゃない」という。やっぱ「セックスしたら父親になるなんて、考えてもみなかった......」みたいな、アホならではの優しさのある映画ですよね。
真 セス・ローゲンが彼女から「あなたは父親になれる人じゃないから、友達でいて。それで、好きな時だけ父親の役をやってくれればいい」と言われますよね。それは寛容な提案だけど、凄い突き放されてる。自分が未熟なことを、本能的に感じた彼女から告げられてるわけで。彼もそれを分かってちゃんと会社に就職して、部屋も借りて、赤ん坊を迎えられる準備をする。この「仲間を切る」という決意が凄いなと。
タ たまり場から出て行くんですよね。引っ越しをして独り暮らしを始める。
真 昔の仲間から「クラブ行かないか」って電話がかかってきても、「明日早いから寝るよ」って。そうやって自分の世界を変えていくことが、そんなに断腸の思いの大変なことなのかという。
タ 当たりまえだろ!って、そっち方向に「凄い」なんですね(笑)。僕なんかはもうそこで「人生とは、ここまで辛いものなのか......」って。
真 女性はそこをあっさり切り替えて、疎遠になっていくと思う。納得済みでね。置いていかれるほうが焦るだけで、置いていくほうは自然に次のステージへ行く。だからあのキャサリン・ハイグルは男性に断絶を迫る女で、男の人からするとどうなのか。
タ でもセス・ローゲンの仲間たちはそこまで彼を責めないですよね。俺たちと女どっちを取るんだ!とか言わずに、今後どうすべきか部屋で話し合う。で、「そんなの絶対中絶だ」ってヤツが2、3人いて、1人は「何言ってんだ、こんなに素晴らしいことないだろ。産めよ」といって、ワイワイ。要はみんなバカなんだけど。
真 (笑)。
タ 学級委員会感覚っていうか、でもバカゆえの善良さでバランスがとれてるのかなと。子供の学費どうするの?保険は?とか具体的な話するヤツとかいなくて、でも流れに任せてる感じがある。
真 出産の時も全員駆けつけて産まれるのを待ってるしね。いいヤツらじゃん。
タ そう、いいヤツ(笑)。産む時に女性が絶叫して「うおおおおっ」って声が待合室まで聞こえてきて、仲間の1人が「俺心配だから見てくる」って病室に(笑)。
真 (笑)。
タ 何も考えずにガチャッと入っていったらまさに頭が出てくる瞬間で、「出てけ!」「あわわわわ、行くんじゃなかった」って(笑)。
真 血の気が引いちゃってね。もの凄く怖いもの見たって感じで。
タ 徹頭徹尾バカだなと(笑)。一方で主人公のお姉さんは、結婚してて子供が2人いて、いろいろ具体的なアドバイスをくれるんですよね。
真 刺身はダメ、はしかの予防注射もダメと言う。今流行りのワクチン拒否?
タ 打つとかえってよくないとか言って。で、はしかとか流行らせちゃう。
真 そういう予防注射打ってない子供は、アメリカは学校側が入学を拒否していいみたい。
タ 最近これ、うちの兄夫婦がまさに同じ状況になって。夫婦が予防接種を打つ派と打たない派に分かれて。結局打ったらしいけど。
真 へぇー!
タ うちの場合は兄貴がダメ派で(笑)。
真 えぇ!
タ 兄貴がネットで見て、予防接種打つと危ないって。奥さんのほうは何バカなこと言ってるの、打たなきゃダメに決まってるでしょって。それで押し切られて打ったらしいけど。
真 (笑)。
タ そういうのがアメリカでもこの映画の頃から始まっていた。意識高い系というのかナチュラル系というのか分かりませんが。
真 だからやっぱり、彼女も自然分娩するようになってますよね。
タ そうなんですよね、この出産シーン。
真 いざ出産が始まると、あまりに痛いから「麻酔を打って」と言いだして。でもこの時点ではすでに打てないから、自力で産むしかない。
タ もう遅ぇんだと。アメリカでは麻酔打つほうが圧倒的多数だから、この姉妹はやっぱり流行に敏感というか、オルタナティブな立場なのは間違いない。ただ、姉貴も人生うまくいっているようでいて、実は映画が進んでいくうちに暗雲が立ち込めてくるんですよね。
真 姉のレスリー・マンは、夫のポール・ラッドが打ち合わせと言って夜な夜な出かけていくから「絶対浮気だ」と。それで妹カップル同伴で夫の後をつけていくと、架空のドラフトをやっている現場に踏み込んでしまう。
タ また男たちが(笑)。で、そいつらがまた「女は連れてくるなって言っただろ!」みたいな。
真 やっぱりホモソーシャルなことをやってる。
タ そのせいで夫は妻から三行半を突き付けられて。私に黙ってこんなドラフトゲームやってるなんてあり得ないし、他にも1人で映画を観に行っていたとかポロポロ出てきて。
真 そう、『スパイダーマン3』をね。
タ 『スパイダーマン3』(笑)。それを知った妻が「私も観たかったのに!私を誘わないなんてあり得ない!」と。
真 確かにこの家庭は奥さんのほうが子供の面倒を見ていて、彼女が1人で外出するにはベビーシッターを呼ぶ必要がある。でも旦那さんは自由に出て行けるから、やっぱり差はあるよね。
タ その怒りは一理ある、感情の爆発っぷりはすごかったけど。一方でセス・ローゲンとこの義理の姉のボンクラ夫はだんだん意気投合していくんですよね。
真 ドラフトゲームやってた義理の兄について、「彼は正しいよ」とセス・ローゲンが言うから、妊娠中の彼女に「あなたなんかもういい!」って道路の真ん中で車から降ろされる。
タ 叩き出されて(笑)。男女の間でわだかまってたすれ違いが一気に爆発する。
真 セスが「おまえの姉貴は嫌なヤツだ」って(笑)。
タ 禁止事項ばかりじゃないか!って男同士の連帯感が(笑)。姉妹は姉妹で苦労が分かるから肩を持ち合う。
真 男同士の会話と女同士の会話が全然違う。ポール・ラッドとセス・ローゲンは「景気づけにベガスへ遊びに行こうぜ」と、幻覚キノコを持ってシルク・ドゥ・ソレイユを観に行く(笑)。
タ (笑)。
真 で、バッドトリップして「シルク・ドゥ・ソレイユが怖い!」と言って逃げだす(笑)。
タ あのシーンは爆笑。
真 (笑)。姉妹のほうは「私たちはクラブに行きましょうよ」と。だけど妊婦と年増だから、店側に「君らは店に合わないからダメだ」と拒否されてしまう。それで寂しく道端に座って、レスリー・マンが「男の人はズルい。年をとっても渋くカッコよくなっていくのに、私はただ醜くなっていくだけ」と。これは切実。
タ 同じ年をとるにしても、こっちはクラブからBANされるのに、向こうはシルク・ドゥ・ソレイユでラリってるという。
真 呑気だよね、男の人のほうが。
タ しかもその後、ベビーシッターが12時過ぎたら怒るから帰んなきゃと帰宅するのがえらい。男たちのほうはシルク・ドゥ・ソレイユでバッドトリップして、ホテルの部屋に戻ってからセス・ローゲンがなぜか説教を始めて。
真 ラリったまま(笑)。
タ 2人して「ワーッ」となって、「それ以上真実を言うな」「家に帰りたい!」みたいな。それで家に帰るんだけど、まあお気楽ですよね。そのあいだ赤ちゃんが待ってるわけじゃないし。
真 キャサリン・ハイグルのほうは出産に備えなきゃいけないし、テレビキャスターに出世したばかりだから、なんとか上司に妊娠したことを隠そうとしたり。彼女は出産や自分のキャリアとか、心配事がたくさんあるのに、彼のほうは本当に悩みがちっちゃい。
タ (笑)。セス・ローゲンはまず自分は虐待しないだろうかというところで悩むんですよね。俺は絶対子供を虐待しちゃうよと。それにセスの父親が、すごい役に立つんだか、立たないんだか分からないアドバイスをくれる。もう一つの映画でも、エロ博士みたいなヤツがエロいアドバイスを、やたらマジな顔でしてくるじゃないですか。「オッパイを見る時は気づかれちゃダメなんだ。フォーカスしろ」みたいな(笑)。
真 (笑)。
タ マジ顔でどうでもいい知識を伝授するシーンって、観ていてかなり血が騒ぎますね。
真 女の人はそういうアドバイスはしない。女同士のアドバイスはもっとリアルで、痛い話が多い。
タ たとえば、この映画の中だと、同じ加齢でも女は不公平なのよとかそういう話になるのかな。あとやっぱり彼女のほうの母親は「中絶したほうがいい。産むべき時に産めばいい」って言う。
真 でもキャサリン・ハイグルは出産することを選ぶ。そこら辺はアメリカの倫理観という感じがしましたね。
■男の人が、「あれは私の正体じゃなくてホルモンが支配してた姿なの」と理解してくれたらOK。(真魚)
タ 中絶するアメリカ映画ってあったかな。でもアメリカだとキリスト教が結構強いから、それこそトッド・ソロンズとか振り切れた感じになりそう。
真 保守派の声が大きいし、中絶は避けたい描写だろうなと思う。
タ セス・ローゲンは最初から結婚したいし、お父さんにもなりたいんですよね。妊娠が発覚した段階から「やったぜ」という。
真 ビビッて「俺が父親に?」っていう感じだけど、中絶の発想はない感じ。
タ 最初からないんですよね。それはアメリカ社会の空気を内面化してるのか、未来の生活への想像力がないのか、でも純朴な感じ。ジョナ・ヒルは堕ろす派で、「絶対やめろよ」とか、病院行っても「病院は不吉だ」とか。
真 「炭疽菌があるぞ」とか(笑)。
タ 「ここは人が死ににくる場所だ」とかずっとネガティブなことを言ってて面白い。あと、この映画でセス・ローゲンは無職なんですが、自分では「仕事はある」って自信満々で言ってるんですね。で、その仕事というのは女優がどの作品でオッパイを出してるかをまとめたデータベースサイトで。
真 「そのサイトがそろそろオープンするんだ」って、まだオープンしてない(笑)。セス・ローゲンは産着とか、育児の参考書を買うことにも協力的だったから、キャサリンの中で好感度が増すんだけど、やっぱり貯金はないし、買った育児書も読んでなかったのがバレたり。何回かそういうトラブルが起こる。
タ キャサリン・ハイグルも一度は、彼らのコミュニティに入っていくんですよね。気づくと彼女もサイトのためにオッパイチェックを始めてたりして、「なん分なん秒、オッパイ出たよ。アンダーヘアも出たわよ」って(笑)。
真 (笑)。
タ でも心が離れた時に、キャサリン・ハイグルが1人で映画を観ているシーンがあって。オッパイが出てきた時にたぶん今思い出してるんだろうな、もうチェックしなくていいんだ私って思ってるんだろうなと、あそこもよかった。
真 そうそう。
タ 僕がこの映画で最も女性を感じたのは、やっぱあの姉夫婦のことで喧嘩になって、セスを車から追い出すシーン。あの時の彼女のキレ方。論理じゃなくて「あなたは今私を支えてくれれば良くて、私が何を言ってもイエスって言えばいいの」って、そういうキレ方をする。これはホントに実際言われたらムリなやつだなと。っていうか相手が狂ったのかと思ってびっくりすると思う。だけどこれ、結婚した友達が言ってた奴だって、都市伝説じゃなかった!って凄いリアルでした。セス・ローゲンは相手の怒りを文脈で解釈しようとして戸惑うんですよね。お姉さんがポール・ラッドにブチ切れた『スパイダーマン3』の時も、同じようなキレ方で......。
真 でもちょっとキレ方が違ってて、「私も『スパイダーマン3』観たかったのに」って言うと、ポール・ラッドが「じゃあ来週一緒に観に行こう」「『じゃあ』って......。私に言われたから誘うんじゃなくて、自発的に誘って欲しいの」と。これは分かる。
タ 「『スパイダーマン3』が観たい」というのが主旨じゃない?
真 夫から「一緒に映画観ない?」と言って欲しいんですね。
タ やっぱあのシチュエーションだと僕も、『スパイダーマン3』観たかったから怒ってるんだなと思う。で、じゃあまた一緒に観るか、あなただけで観てくればって提案したくなる。
真 そこが、意味を取り違えてる男の人のありがちな反応で、「じゃあ」と言ってしまう。
タ その接頭語がなければ。
真 うん。
タ 「『スパイダーマン3』来週観に行こうよ」ならOKなんですか。
真 「『スパイダーマン3』を~」じゃなくて、「来週何か観たいものある?」とか、映画じゃなくてライブでもいいから、「一緒に行かない?」という聞き方をされたいわけ。
タ ......なるほど(笑)。
真 自分の意思で誘って欲しい。言われたからじゃなく。
タ 結婚する前のセス・ローゲンも、結婚してるポール・ラッドも、相手の話のベクトルがつかめないのは同じで、そこで喧嘩になるんですね。妹と姉のキレ方は違うんですか。
真 似てるけど......。
タ 僕は一緒くたにこれぞ女の人の怒り方だなと思ったんですが。実は差異があるとか?
真 『スパイダーマン3』のところではちゃんと論理的に言っている。
タ 自発的に誘うことが大事なんだぞと。
真 車の中で「私の言うことに全部イエスって言えばいいのよ」というのは単にブチ切れてる状態。
タ (笑)。
真 何の理性も働いてない。
タ さらにそのあと、車から降ろされて彼女一人だけで産婦人科行って、セス・ローゲンは降ろされたところから産婦人科まで5キロ歩いて、また喧嘩になるんですよね。
真 産婦人科の体重計るところでね。その間、看護婦さんがスッといなくなって(笑)。
タ 終わってからサッと帰ってくる。「よくあることですから」って、手慣れてる感じ(笑)。降ろされて5キロ歩いてる時点で僕だったら怒りに全身乗っ取られそうなんだけど、セス・ローゲンはそこで「僕はいま君じゃなくて、君のホルモンに怒ってるんだ」みたいな、ギリギリの言い回しをしてて偉いな、大人だと思った。
真 上手い回避。
タ 回避できているのか分かりませんが(笑)。
真 でも正しいですよ。彼女に怒ってるんじゃなく、彼女を緊張させたり昂らせたりしているホルモンが憎いから、ホルモンが嫌いだと言っているのは正しい。
タ でも相当ひどいこと言ってましたよね、セス・ローゲン。
真 女性自身もホルモンのせいで情緒不安定になるから、あれは正しい言われ方。
タ あれは終わったら水に流せるものなのかな。
真 男の人が、「あれは私の正体じゃなくてホルモンが支配してた姿なの」と理解してくれたらOK。
タ やはり保健体育は大事ですね。
真 (笑)。ホルモンに怒るのは、逆に詳しいくらいで、正しい。
タ セス・ローゲンの出身はカナダなんですよね。アメリカに不法滞在しているっていう設定で。
真 だから「税金払ってなくて便利なんだ」とか言って(笑)。
タ あんなボンクラっぽい奴でも、カナダでちゃんとホルモンについて習ってたんですね。
編 いかがですか、ターHELLさんから見て、男性的感性のある映画でしたか?
タ そうですね。セス・ローゲンと姉の夫のポール・ラッドが友達になったのは、ポール・ラッドがダメ夫だからっていうのがいい。ポール・ラッドがパーフェクトな夫だったら、セス・ローゲンも仲良くなれないし、ある意味、結婚しても変わらない男だったからこそ友達になれたという。そんなところで味わい深かったですね。
編 合格ですか。
タ もうぜんぜん。
真 良かった!
タ あと5人がオッパイサイトを作ろうとしたら、ダラダラしすぎて先越されて、他人が作ったオッパイサイトが出来ちゃうんですよ。もっと新しいこと考えなきゃって、結局何を考えたのかは出てこないけど、それが気になりました。彼らが何を考えたのか。
真 同じようなサイトがあったほうがお互い有名になって、相乗効果で人気が出るからやめる必要はないぞってなるんですよ。
タ あそうか、続けるんだ。「似た者どうしが相乗効果で盛り上がる。『アルマゲドン』と『ディープ・インパクト』だって、どっちも当たっただろ!」とか言って、そういう自分の趣味の延長で世界を判断していくのもボンクラっぽくていいですね。
(続く)
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17.05.20更新 |
WEBスナイパー
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