2014.9.13 Sat at SHINJUKU FACE
2013年9月13日(土)東京「新宿FACE」にて開催
長らく闇に封印されていた「見てはいけない物」のオンパレード。魑魅魍魎たちが一夜の邂逅を求めて、皆様を禁断の世界に誘います――。あらゆる身体パフォーマンスが集うと言われる禁断の情念の祭典。都会の変態夢遊病者が集う大人のパーティーの模様を、今年も早川舞さんにレポートして頂きます!!SCとは何かご存じない方のために軽く説明しておきましょう。「大人のトラウマ」をテーマに一晩のうちに入れ替わり立ち代わり演者たちが出演し、めくるめくショーを見せてくれる、それがSCです。
ショーといってもただのショーではありません。フェティッシュやアンダーグラウンド色の強いものを中心に構成され、エロありグロあり耽美あり......といった感じ。とはいえ、既存の枠にはめようとしても「ちょっと違うような気がする」というパフォーマンスも多く、「何が何だかわからないけどスゴイ」と圧倒され、自分の中でそれまで築いてきた価値観を揺さぶられるのもSCの特長といえます。まさにサーカスです。
開場は例年と同じく新宿・FACE。ここは本来プロレスの舞台なので、360度すべてが正面になります。
今回は1日目であるAプログラムのほうにお邪魔しました。
毎年目立つフェティッシュ・ゴシック色強めのファッションの人々は、今回は少なかったように感じました。Aプログラムが22時30分終了なのに対し、翌日のBプログラムはがっつり朝までなので、皆さん力を蓄えているのかもしれません。ああいう格好するのって意外と体力使いますからね......。
Aプログラムの出演者はこちら。
■戸川純
■バーバラ村田
■山田広野(MC)
■くるくるシルク
■BBG48
■ペインソリューション
■フープ東京 AYUMI
■ラッキーヘル
■奈加あきら
......の予定だったのですが、ラッキーヘルが体調不良のため在住国・フィンランドからの出国禁止を言い渡されたらしく、急遽、翌日出演予定だったスカオフが代わりを勤めることに。肉を食べて当たったらしいです。あるんですね、そういうこと。
■戸川純
客席に座って開演を待っていると、何の前触れもなく戸川純さんのライブが始まりました。バンドメンバーが次々ステージに立ち、最後に真ん中に用意された椅子に80年代のアイドルみたいな格好――水色のフリフリのワンピースに花のついた麦わら帽子――をした戸川純さんが座ります。
私は戸川純さんについては特にファン!ということもなく、一般の方と同様、どころかおそらくそれ以下の知識しか持っていませんでした。そういうわけでライブを拝見したのも初めてだったのですが、パワーと表現力に圧倒されました。
まず1曲目、「バーバラセクサロイド」。ハスキーとも違う、少年みたいな声の彼女の歌は、ところどころ音程をはずしています。ただ音程をはずすというよりは、踏み外す、逸脱していると感じるはずし方です。その逸脱にとてつもない生命力がみなぎっています。
と思いきや、曲が変わるたびに野太く、切なく、柔らかくと次々と多彩な表現が顔を出し......いやしかし、そこには単なる表現以上のものがありました。曲が変わるたびにこれもまた戸川純という人そのものなんだと訴えかけられるような、切羽詰まった力強さ。
一発目からいきなり魂を持っていかれました。今度ライブ行こう。
■バーバラ村田
次に登場したのはパントマイムのバーバラ村田。
まずは舞台ではなく客席にスポットが当たります。そこにいたのはうさぎの頭をかぶった獣頭人身のナニカ。このうさぎがまた妙にリアル。一歩間違えれば「怖い」にもなりそうで、妖しさを一層引き立てています。
うさぎがそのかぶりものを取るとかわいらしい少女の姿に。客席を回る途中でコートをつけた仮面を受け取り、ソレと一緒に舞台に上がります。バーバラさんは舞台の上で、ソレのコートの片腕に自らの腕を通すことで、まるで男女2人でダンスをしているようなパントマイムを披露。下半身は1人なのに上半身は2人に見えるところも妖艶です。
ミュゼット風のレトロな雰囲気のBGMが多く、舞台は誰かが昔見た夢の中を覗いているかのよう。パントマイムの最後には夢の終わりを告げるかのような鳩時計の音が響き、仮面がなくなってコートだけになった「相手」とくるくると激しく踊ります。
気がつくと少女はコートを持って1人で舞台に立っていました。今までのことは全部夢(?)と思っていると、肩に小鳥が。その小鳥が彼女の手の中で何枚ものハンカチに変わり、最後の1枚には観客に向けた「thank you」の字が。
少女は再びうさぎの頭をかぶって退場。またどこかに夢を見に、あるいは見せに行くのでしょう。
■くるくるシルク
SCではすっかりおなじみになった、3人の漢(おとこ)による大道芸集団。2002年の第1回から登場している常連です。
今回は台所用品を駆使して音響効果を工夫した中国雑技団風味。タライを棒の上で回す、真鍮のコップでジャグリング、そのコップの上で不安定な体勢をとりながらさらにジャグリング、おたまでやっぱりジャグリングなどなど。鎧のように体にボールやらお盆やらを装着しているのは、芸の最中で道具をそれに当てて音を出すためでした。お鍋でつくった小さな銅鑼もじゃんじゃん打ち鳴らします。
やっぱり音が鳴るとテンションが上がりますね。スカっとするような小気味よさを終始覚えながら鑑賞しました。楽しかった!
■BBG48
「うんこ、うんこ、うんこがしたい! うんこ、うんこ、うんこがしたい!」
そんな歌詞を叫びながら舞台に飛び出してきたのはBBG48の面々。白いブラウスにネクタイ、タータンチェックのプリーツミニスカートという記号化されたアイドルの格好なのに、見てはいけないものを見てしまった感はこれまでの中でいきなりMAXです。歌の途中で口からうんこが出てくるし。
一曲目「うんこがしたい」の後のMCによると、BBGとは分倍河原(ぶばいがわ)のことで、ゴキブリコンビナート発の美少女ユニットとのこと。「きつい」「きたない」「危険」の3Kで客席を恐怖に叩き落とす演劇集団・ゴキブリコンビナート発の上、曲名が「食べ頃よ」「クリックしてね」「ゴミ漁りの歌」「野方」などとなれば、その凄まじさはご想像いただけるのではないかと思います。が、たぶん想像より数倍凄まじいです。
ラストの1曲、舞台いっぱいにまき散らかされたゴミの中で「とにかくでっかいちんぽくれ!」とシャウトしていた彼女たちの姿を私はずっと忘れな......というか、しばらく口ずさんでしまって困りました。
■ペインソリューション
さて、次はこちらもSCではすっかりおなじみとなった感のあるペインソリューション。北欧はノルウェーからやってきた「痛み」を見世物にする集団で、これまでも体じゅうを刺したり切ったり、電球食べたり針山の上に横たわったり、その針山の針をじわじわと一本ずつ抜いていったり、客席を「いやぁぁぁ、ちょ、やめ! 痛いから! いたたたたたた!!」の渦に巻き込んできました。今の世の中、これだけ客席からの共感を得られるパフォーマンスってそうそうないんじゃないでしょうか。
今回は翌日も出演するせいか時間は短め。が、内容はがっつりサスペンション。サスペンションというのは皮膚に直接フックを刺して、その針で体を持ち上げるパフォーマンスのことです。
ヘッドマスター(白いスーツの人)がプリンセス・オブ・スカー(女子)の肩甲骨下から始めてお尻の下、脛とフックを刺していき、それをロープにくくりつけます。マニアック(女装男子)がロープを引くとふわりと浮くプリンセス。
さらにヒドイのは、これだけでも痛い(多分)のに、ロープを一本一本切っていくところ。つまりそれだけ一箇所にかかる荷重が増えるわけで、最後には肩甲骨下の一本になっていました。皮膚が......伸びちゃよぅ......!
最後はいつものように「痛いの、楽しかった!」とでもいわんばかりの笑顔でにっこり笑って舞台を後にしたプリンセスたちでした。
■フープ東京 AYUMI
この方もSCには何度か登場しています。ただのフープではなく電飾のフープを回すところが、暗い舞台に映え、またAYUMIさんの肉体を妖しく照らし上げて美しいのですが、これまではクライマックス近くになって登場させていたこの電飾フープを今回は最初から披露。
前半はフープを体で回すだけでなく、手先だけで回す技も見せてくれました。だんだん本数が増えていくフープは最終的には球体のような形になり、彼女の手の上でくるくると回ります。フープを肩から腕に乗せて、翼のように見せるパフォーマンスも見事でした。
が、本領はやはり後半。巨大な電飾フープを乳首のピアスに羽根飾りを通しながら回し、仮面をかぶりながら回し......と、きれいなのに奇妙な悪夢のような風景が最終的にはできあがりました。
■スカオフ
本来出演する予定だったラッキーヘルの代打として登場したスカオフ。SCへの登場は初めてなので、よくよくプログラムを読んでみましたが、「人類固有の肉欲・哲学・神話などの定義を再構築して可視化するほか、(略)無機物との融合を企み、......」うん、とりあえず見よう。
赤いバラを手にして客席から登場した全頭マスクの男が、同じく客席にいた白いワンピースの女性を手招きして2人で舞台に上がります。食卓に向かい合った2人は、各々食べるのではなく、口移ししあう形で食事を始めます。ひゃあああフェティッシュだ......。やがて男性はプレゼントらしいネックレスを取り出すのですが、女性の首に掛けてあげるのではなく、両肩に針を刺し、そこに鎖を掛けます。ひゃあああフェティッシュだ......。
2人はしばらくイチャイチャしていているのですが、やがて男性が女性を殴り始め、針を刺し、咀嚼したバラを吐きかけ、女性の体に隠していた生肉をむしゃむしゃ食べ始め(たぶんこれ、内臓ということでしょう)、最後は動かなくなった女性を大きなビニール袋に詰めてしまいます。
男は登場したときのように、皮手袋をはめてバラを持って退場。生や生産ではなく、死や破滅や無意味に向かうエロス。この舞台ではそれが表現されていました。
■奈加あきら
Aプログラムのトリを飾ったのは縄師の奈加あきらさん。以前奈加さんには別件のインタビューで、「自分のショーは、緊縛をショーとして見せるのではなく、自身とモデルとの素のやりとりを鑑賞者に眺めてもらうつもりでやっている」と伺ったことがありますが、そのスタイルは変わっていないようです。
舞台には仰々しい仕掛けはなく、竹が一本天井から吊られているだけ。奈加さんはその下で、襦袢姿の女性にゆっくりと縄を掛けていきます。その手つきは決して早くも力んでもいません。それでいながら空気が緊張しているのが客席にも伝わってきます。縄がきしむ音やモデルさんの息遣いが、こちらにまで届いてきそうです。
私は奈加さんのショーを拝見するときにいつも、「あぁ、わかるなぁ」と共感してしまう彼のポーズ、勝手に「奈加ポーズ」と呼んでいるポーズがあるのですが、奈加さんはキリのいいところまで縛ると一旦離れて、座って、まじまじとモデルさんを覗きこむんですね。自分が納得のいく形で絡め取ったものを満足げに眺めている、そんな感じです。緊縛好きには同時に写真好きも多いのですが、これはたぶん同じ心情から来ているのではないかと思います。捕えたら、眺めたいですよ、それは。第三者的な視線を持つことで一層、「自分が捕えたのだ」と実感できますから。
やがて女性は吊り上げられ、鞭で打たれました。鞭の間にすすり泣きの声が混じります。下ろされ、縄をほどかれていくと、その声はさらに大きくなりました。解放感と同時に、今まで身も心もすべて預けていた奈加さんから放たれてしまった寂しさが、彼女の声の中にはありました。最後に2人が抱き合うと、会場は大きな拍手で包まれました。
こうして終わったSC2014のAプログラム。これまでのオールナイトと比べるとあっさりした感はありましたが、翌日につなげていくことを考えればちょうどいい濃さだったと思います。
来年も2回になるのか、これまでのようにオールナイトにすべてを突っ込むのか。個人的にはさんざん騒ぎ倒して一晩ですべてが終わる空しさや切なさが好きなので、1回こっきりのオールナイト希望ですが......。
まだまだわかりませんが、告知を楽しみに待つことにします。
文=早川舞
関連サイト
「SADISTIC CIRCUS」公式サイト
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