photo:Patrick Siboni
2011.9.23〜9.26 at Rondon
The London Festival of the Art of Japanese Bondage
2009年からロンドンで開催されている大規模な緊縛イベント「ロンドン緊縛美の祭典」に一鬼のこ氏率いる一縄会の面々が参加! 共にショーを行なった海外のロープアーティストたち、またワークショップに訪れた現地の緊縛愛好家たちが考える、日本発祥のロープワーク「kinbaku」とは……。ドイツ、オーストラリア、そしてロンドンと海外での経験を多く積む一鬼のこ氏に現場の様子を伺いつつ、興味深いショーの模様を豊富な写真で紹介して参ります。今回が後編です。
photo:Patrick Siboni
海外で進化する日本の緊縛技法の秘密
――普段の一さんは、一縄会というご自分のサークルがあって、常に講習会もしてらっしゃいますが、その雰囲気ともやっぱり違うと。
一鬼のこ:そうですね。何でも楽しんでますよね。自分自身をエンターテインメントするのが上手いんじゃないですかね。縛り方教えてたりすると、日本の人たちは勉強しようって感じじゃないですか。彼らはそうではなくて、純粋に楽しんでますよね。それともう一つ強く思ったのは、彼らがコミュニケーションと、そしてもう一つ、コネクションを大切にしているということ。
――コネクションとは?
一鬼のこ:コミュニケーションという過程を経て、2人の世界を具体的に作り上げるということかな。
photo:Izaskun gonzalez
――日本のSMでは余り使われない言葉ですね。
一鬼のこ:そうでもない。海外の縛り師さんたちが教わってる人で一番名前を聞くのは長田スティーブなんです。スティーブの名前を冠した縛りの道場もあるくらい。海外の人たちがコネクションを凄く大事にしてるというのは、スティーブは雪村先生のところで習っていて、雪村先生が縛り方を気にする方ではなく、コネクションというか、そのノリを大事にしてる方だからなんですよ。
――縛られる女性との関係性が全てというような。
一鬼のこ:そうですそうです。そういうところがあって。雪村先生に習ってるから、その影響で今、彼らがコネクションを大切にしてるんだなって。縛って女の人を深く入れていくことを大切にやっているなって感じた。
――海外で一さんが改めて気づかされたことが、実は日本から出て行って逆輸入で帰ってきたことという。
一鬼のこ:だから僕も教えられることが増えて、逆にワークショップがやりやすくなりました。コネクションの部分、世界の入れ方っていう授業があって、僕なりのやり方、こういうことを思って縛ってるんだよとか教えた。凄いスピリチュアルな話をしました。縛るときに他に誰かいても、2人だけの世界だよとか、縛ってるときに、思ってる以上に相手のことを大切に思ってるということを最大限に出すとか。そういった感情の部分が縄を伝わって、向こうに入り込んでいくんだよって。
↑ワークショップの参加者たちがそれぞれに見せる、コミュニケーションとコネクション。
――なるほど。
一鬼のこ:普通の外人さんと喋るのと、縄が好きな外人さんと喋るのとでは、やっぱり言葉の伝わり方も違う。縄に興味がある人は、僕のことを縄のスペシャリストだと思ってるわけじゃないですか。だから話すと聞く耳を立てて、僕のことを本当にわかろうとしてくれる。話すときも、伝えるために難しい言葉を使わずに喋ってきたり。本当に伝えたいこと、本当に聞きたいことっていうのは伝わるなって。
――本当に感銘を受けられたんだなってことが伝わってきます。
一鬼のこ:好きだったんだなって思いましたね。僕もやっぱり、辛かったこととか、こうやって続けてるといろいろあったんですが、ああ続けててよかったなと思いましたね。海外の人も考えてることは一緒というか、共通する部分も違う部分もあるけど、共通する部分ではみんな縄が好きなんだなって思いましたね。
Wykd Dave(UK)
photo:Patrick Siboni
■僕と一緒にワークショップやっていた彼は前回のロンドンで僕が教えた生徒でもあって、教えたことをちゃんと守って縛ってたのが嬉しかったな。前回の時、教えたその日の夜に別のフェティッシュイベントがあって、その日のうちに吊り所で教えた縛り方を一生懸命やってました。僕がその場にいることを知っててやってたわけじゃなく、勝手にやってたから余計に嬉しかったですね。
王子
photo:Patrick Siboni
■竹を使って縛ってました。太い竹の上下で展開するという感じ。縛り方が緻密です。モデルのカオちゃんが凄くいいんですよ。若いのに色気があって。艶やかなんですよね。
獅子若
photo:Patrick Siboni
■ワイルドな縛りをしますよね。後ろから髪の毛引っ張ったり。彼は一縄でも一番古い講師なんで、この日のトリにしてもらったんです。誰が一縄で凄いんだって聞かれて、若さんって答えたんです。お客さんも凄い反応がよかったですね。
風見蘭鬼
photo:Patrick Siboni
■風見さんは現地の女の子をモデルに使ったんです。それって相当なハンデですよね。縛られる側からすれば、言葉も考え方も違う人に全部預けるわけで。だから縛る前に風見さんと彼女の間でいろいろな闘いがあったと思う。そして波長を合わせてお互いに歩み寄ったわけです。風見さんのショーっていつもはイカせまくったりと凄いんだけど、今回は海外の女性の気持ちをちゃんと汲み取って、自分を押し売りすることなくやったのは凄いです。尊敬しましたね。
Bruce ArguetZb (UK)
photo:Patrick Siboni
photo:Caritia Abell
■Bruceはボンデージ自体をおしゃれにとらえてる。新しいものを作り出そうっていう発想がありますね。たとえば水中でウェットスーツを着てボンベをつけた女性を縛ったり。こないだのショーでは海外のスクールものをやってました。ツインテールの女の子を男子教師が縛るっていう。留めのやり方とか、テクニカルなところにこだわってますね。自分のやりたいことを押し売りするタイプではなく、観てる人たちをきちんと意識した上でのエンターテイナーです。
photo:Izaskun gonzalez
彼は主催者の一人なんですけど、イベントオーガナイザーという立場では人に何かを伝えていこうという気持ちが大事です。彼にはそれがありますね。そこにいるすべての人たちが、やっぱり縄を愛している人たちで、ゆえに集まっている人たちのことも愛していてっていう。だから集まった人たちが縄をもっと楽しいなって思う。実際、縄好きの人が集まる大きいホームパーティみたいな感じでした。
日本のイベントは、お客さんが楽しめることって、見て感じるくらいじゃないですか。そうではなくて、お客さんたちがいっぱい縛ってましたからね、終わった後の会場で。あくまで主役は参加する個人個人ということを大切にしてるんですよ。お客さんがいろんなことを体験するじゃないですか。ワークショップがあったり、絵を描いたり、ショーを観る、あとは酒を飲んで喋る、終わった後には自分たちが縛る。大まかに分けたらそういう感じですが、参加した人たちが共有できるものをたくさん盛り込んでるんです。それがその後の、縄コミュニケーションって彼らは言ってるけど、たとえばフェイスブックみたいなコミュニケーションに繋がってるんじゃないかと。
彼らはあまり国を意識している感じがないんです。ドイツの、イギリスの、アメリカの縄とか、そうじゃなくて地球人って感じ。ひとりひとりの個性というか、○○人じゃなくて、地球人であり、宇宙人でありみたいな、とても大きい枠で、一人の人間として、一人のオリジナリティとして、とらえてくれるところがある。僕もいろんな人を紹介したり、日本だけじゃなくて、縄をいろんな形でいろんな人が伝えていけるように、これからもアシストしていきたいですね。
(コメント:一鬼のこ氏)
photo:Caritia Abell
photo:Caritia Abell
構成=編集部
関連サイト
渋谷ハプニングバー『眠れる森の美女』
SM緊縛師『一鬼のこ』縄ブログ〜不思議なキノコの世界〜
フォトグラファーPatrick Siboni氏公式サイト
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