『世紀末倶楽部』2号/特集・地下渋谷系──恐怖!怪奇!猟奇!残酷!ショック大百科
世紀末倶楽部編集部編
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『危ない1号』2巻(1996年4月25日)の特集は「キ印良品」。「き〜ん」と読む。「“キ”もちよくって“印”象的なモノ/コトという意味です。キジルシなんかと勘違いしないで下さいね」としらじらしい前書きがある。1巻のドラッグ特集は青山のパブリック・イメージをうまく使ったものだと言えなくもないが、この「キ印良品」は、殺人/死体、変態、ボディアート、フリークス、コミックス、読書、デジタル・ネットワーク、盗聴など、多様なジャンルにおける危ないコンテンツを紹介する、初心者向けの鬼畜ガイドといえる内容だった。当時の悪趣味/鬼畜ブームの集大成的内容だった『世紀末倶楽部』2号(1996年9月20日/コアマガジン)に、青山正明のインタビューが掲載されているので、若干長めに引用しよう。
「せっかく面白いテーマを扱ってるのに、ペヨトル工房の本や『スタジオボイス』とか『スイッチ』って、言葉でも記述でもスカシちゃって、気取っちゃって、インテリっぽく書いちゃってるから読んでも面白くない。結局、読者に伝わって来ないから、おもしろそうだなって買った人でも全部は読まない。それじゃ意味がない。カルトムービーにしてもフリークスやゲイを扱った海外小説の紹介にしても、気取って紹介してたら面白さは伝わりにくい。面白い物を面白いよって伝えるためには、わかりやすい言葉で語らないといけないなっていうのは感じてましたね」
「今、こういう本が売れてるからとか、こんなテーマがウケる時代だからこれを出そうって言う作り方をしてませんからね。それをやっちゃうと、結局は作り手が分かってないから、あとから、本当に分かっている人が出てきたら勝てないし、大手が飛び付きそうなテーマを扱っても、最終的には大手の資本の前には勝てない。結局、ミニコミを作ってる感覚ですよね。自分が本当に面白いって思うテーマを、どこがおもしろいのか素直に伝える」
まさに青山が言うように、本号は興味深いテーマを扱いつつ、読者を置いていく独りよがりな文章は一つもない。自分達が面白いと思うものの面白さを、妄想交じりに平易な言葉で解説する、“知のダークサイド”への入門書として、おそらく『危ない1号』をこれから読む人にとっては、この2巻が一番判りやすいだろう。もちろん本書を受け入れる土壌として90年代の悪趣味/鬼畜ブームがあったのは間違いないが、そうした当時の時代背景を知らなくても、(出てくる固有名詞は若干懐かしいにせよ)楽しめるものであると思う。
青山は2巻を出した後、『AERA』の「東大卒になぜか多い「微変態」クン」記事(1996年7月8日号)や、『SPA!』の「[鬼畜]たちの倫理観」(1996年12月11日)などに登場したが、この1996年をピークに、目立った活動が急速に減っていく。
『BURST』2000年1月号
1999年12月6日発売/コアマガジン
特集・90年代式幽霊列車の葬送
不良雑誌『BURST』が「世紀末トラッシュ・カルチャー10年間の総括」として90年代をまとめた本号では、「悪趣味雑誌/ゴミ、クズ、カスのお宝雑誌」と題した土屋静光(『世紀末倶楽部』『トラッシュメン』編集人)によるコラムが掲載されている。『危ない1号』への言及は少ないが、小林小太郎による『Billy』『ORGANIZER』『TOO NEGATIVE』、比嘉健二による『ティーンズロード』『GON!』、のちの『映画秘宝』につながる『悪趣味洋画劇場』『悪趣味邦画劇場』などの紹介や、『世紀末倶楽部』を編集する上で影響を受けたという海外ミニコミ『FUCK!』『BOILD ANGEL』の解説など、90年代に登場した悪趣味/鬼畜雑誌を理解する上での助けとなるはずだ。
『インターネットマニア』1997年2月号
1996年12月24日発売/白夜書房
特集・驚愕!!世紀末インターネット倶楽部
〜あなたの知らない悪趣味の世界!全部見せます〜
現在ある『ハッカージャパン』の前身にあたるインターネット雑誌で、この時点での総まとめ的な特集が組まれた。悪趣味サイトの紹介の他、“悪い見本”として村崎百郎、『世紀末倶楽部』の土屋静光、『死体の文化史』などで知られる下川耿史へのインタビューや、「今さら悪趣味本ガイド」と題した悪趣味と称された本/雑誌を15冊紹介。そこにある『危ない1号』の紹介曰く「この手の本のパイオニア。全てはここから始まった。編集長の青山正明氏が発行していた同人誌『突然変異』のタイトルまんまの状況を、出版界に巻き起こした。/1号の特集は「ドラッグ」、2号は「キ印良品」って、みんなもう読んでるよ!! ちなみに第3号は、97年4月頃に出るらしい」。
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【プロローグ】 【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】 【8】 【本文註釈・参考文献】
世紀末倶楽部編集部編
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『危ない1号』2巻(1996年4月25日)の特集は「キ印良品」。「き〜ん」と読む。「“キ”もちよくって“印”象的なモノ/コトという意味です。キジルシなんかと勘違いしないで下さいね」としらじらしい前書きがある。1巻のドラッグ特集は青山のパブリック・イメージをうまく使ったものだと言えなくもないが、この「キ印良品」は、殺人/死体、変態、ボディアート、フリークス、コミックス、読書、デジタル・ネットワーク、盗聴など、多様なジャンルにおける危ないコンテンツを紹介する、初心者向けの鬼畜ガイドといえる内容だった。当時の悪趣味/鬼畜ブームの集大成的内容だった『世紀末倶楽部』2号(1996年9月20日/コアマガジン)に、青山正明のインタビューが掲載されているので、若干長めに引用しよう。
「せっかく面白いテーマを扱ってるのに、ペヨトル工房の本や『スタジオボイス』とか『スイッチ』って、言葉でも記述でもスカシちゃって、気取っちゃって、インテリっぽく書いちゃってるから読んでも面白くない。結局、読者に伝わって来ないから、おもしろそうだなって買った人でも全部は読まない。それじゃ意味がない。カルトムービーにしてもフリークスやゲイを扱った海外小説の紹介にしても、気取って紹介してたら面白さは伝わりにくい。面白い物を面白いよって伝えるためには、わかりやすい言葉で語らないといけないなっていうのは感じてましたね」
「今、こういう本が売れてるからとか、こんなテーマがウケる時代だからこれを出そうって言う作り方をしてませんからね。それをやっちゃうと、結局は作り手が分かってないから、あとから、本当に分かっている人が出てきたら勝てないし、大手が飛び付きそうなテーマを扱っても、最終的には大手の資本の前には勝てない。結局、ミニコミを作ってる感覚ですよね。自分が本当に面白いって思うテーマを、どこがおもしろいのか素直に伝える」
まさに青山が言うように、本号は興味深いテーマを扱いつつ、読者を置いていく独りよがりな文章は一つもない。自分達が面白いと思うものの面白さを、妄想交じりに平易な言葉で解説する、“知のダークサイド”への入門書として、おそらく『危ない1号』をこれから読む人にとっては、この2巻が一番判りやすいだろう。もちろん本書を受け入れる土壌として90年代の悪趣味/鬼畜ブームがあったのは間違いないが、そうした当時の時代背景を知らなくても、(出てくる固有名詞は若干懐かしいにせよ)楽しめるものであると思う。
青山は2巻を出した後、『AERA』の「東大卒になぜか多い「微変態」クン」記事(1996年7月8日号)や、『SPA!』の「[鬼畜]たちの倫理観」(1996年12月11日)などに登場したが、この1996年をピークに、目立った活動が急速に減っていく。
『BURST』2000年1月号
1999年12月6日発売/コアマガジン
特集・90年代式幽霊列車の葬送
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ばるぼら ネットワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミニコミを制作中。
「www.jarchive.org」 http://www.jarchive.org/ |
08.08.03更新 |
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