『BUBKA』1998年1月号/コアマガジン
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『危ない1号』3巻の発売後の青山の目立った活動といえば、江古田フライング・ティーポットでのイベント「フラミンゴ・フォーエバー」(1997年10月19日)への出演、『別冊宝島345 雑誌狂時代!』(1997年11月15日/宝島社)でこれまでの危ない雑誌の歴史を語る永山薫との対談「アンダーグラウンドでいこう!」、『エロ本のほん』(1997年12月20日/ワニマガジン社)へ自分のエロ歴史を書き下ろした「エロ雑誌とオナニーと私」などだろう。
ロフトプラスワンで行なわれた『エロ本のほん』のイベントには出演もしており(1997年12月27日「緊急決定!エロ本サミット開催」)、これが表舞台で名前と姿を現わした最後ではないかと思う。雑誌メディア上でも『BUBKA』1998年1月号の山野一に関するミニコラム「“偉大なるゲスマンガの金字塔” 元「危ない1号」編集長・青山正明氏かく語りき」を最後に、しばらく姿を消す。この『BUBKA』から『危ない1号』4巻(1999年9月20日)までのあいだ、一体何をしていたのかは疑問に残るところだが、何人かに聞いても「連絡が取れなかった」「引きこもって何もしていなかったんじゃ」という答えばかりだった。もちろん4巻の編集はあっただろうが、企画が立てられてから8カ月何もせず、実質2カ月で作られたというから、空白期間は本当に寝てすごしていたのかもしれない。
その『危ない1号』4巻は「青山正明全仕事」と銘打ち、『Hey! Buddy』『Crash』『BACHELOR』誌でのライフ・ワーク的連載「フレッシュ・ペーパー」をまとめた、青山の人生を総括する分厚い一冊だ。もちろん80年代から書き散らした原稿の量は膨大であり、エッセンスを抽出した内容であるが、過去からこの時点までの一貫した態度が見て取れる。プロフィール兼編集後記には「94年11月に日本全国で症例50名前後という眼病疾患、奇病MPPEを患い、失明の恐怖を背負いこんで加速度的に“悟り”の境地へ。本書を最後に“路線変更”を決意……と、まあ、そんなこたぁ、どうでもいいか……」とあり、眼の病気を患ったことへの不安が読み取れる。実際、2000年春に創刊した雑誌『Title』(後期のオシャレ路線を知っている人には判りづらいが、リニューアル前は『サイゾー』に似た妙な雑誌だった)で仕事をする予定があったものの、それを理由に降りてしまったという。
その後も表舞台への登場は断片的だった。清野栄一『地の果てのダンス』(1999年10月15日/メディアワークス)へのレイヴに関するアンケート回答、『創』1999年12月号での軽いインタビュー(パン工場で働いている、との話が出てくる)などだろうか。どちらも明るい未来への希望という印象はなく、何かから逃避しているような、そんな姿勢が透けていた。
『パンゲア』 山野一
1993年12月10日初版/青林堂
『BUBKA』1998年1月号によれば、青山が山野一の作品に最初に触れたのは80年代半ば、山野の最初の単行本『夢の島で逢いましょう』(青林堂)だという。「僕は山野一なる漫画家の才能に完全に惚れてしまった。僕の頭の中では、山野一氏と根本敬氏は、ゲス漫画家の双璧である」。それ以来、大正屋出版時代に編集していたマンガ誌、『エキセントリック』最終号、『危ない1号』でのインタビューなど、何かにつけて仕事をしている。特に『パンゲア』に収録された作品「Closed Magic Circle」(初出はビデオ出版『月刊HEN』1991年11月号)には、そのものズバリ「青山」という名のキャラクターが登場。フリークスと気持ち良さそうにセックスしている。
『地の果てのダンス』 清野栄一
1999年10月15日初版/メディアワークス
1995年に『デッドエンド・スカイ』で第81回文學界新人賞を受賞した作家による、レイヴ・カルチャーを取り上げた体験的小説(本作以前にも共著で『RAVE TRAVELLER〜踊る旅人』(太田出版)がある)。木村重樹との往復書簡も興味深いが、巻末のアンケートは更に興味深く、アンダーグラウンドなDJ達や近田春夫など著名人に混じって青山正明も回答。曰く「繰り返せば飽きがくるのはパーティーもテクノも同じで、はじめのうちは楽しいことばっかりだったのですが、もうそういうのも飽きてきたというのが現状です。今は、パーティーをオーガナイズしたり音を作ったりするほうに関心は向かってます」。実現していたら、一体どんな音になったのだろうか。
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【プロローグ】 【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】 【8】 【本文註釈・参考文献】
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『危ない1号』3巻の発売後の青山の目立った活動といえば、江古田フライング・ティーポットでのイベント「フラミンゴ・フォーエバー」(1997年10月19日)への出演、『別冊宝島345 雑誌狂時代!』(1997年11月15日/宝島社)でこれまでの危ない雑誌の歴史を語る永山薫との対談「アンダーグラウンドでいこう!」、『エロ本のほん』(1997年12月20日/ワニマガジン社)へ自分のエロ歴史を書き下ろした「エロ雑誌とオナニーと私」などだろう。
ロフトプラスワンで行なわれた『エロ本のほん』のイベントには出演もしており(1997年12月27日「緊急決定!エロ本サミット開催」)、これが表舞台で名前と姿を現わした最後ではないかと思う。雑誌メディア上でも『BUBKA』1998年1月号の山野一に関するミニコラム「“偉大なるゲスマンガの金字塔” 元「危ない1号」編集長・青山正明氏かく語りき」を最後に、しばらく姿を消す。この『BUBKA』から『危ない1号』4巻(1999年9月20日)までのあいだ、一体何をしていたのかは疑問に残るところだが、何人かに聞いても「連絡が取れなかった」「引きこもって何もしていなかったんじゃ」という答えばかりだった。もちろん4巻の編集はあっただろうが、企画が立てられてから8カ月何もせず、実質2カ月で作られたというから、空白期間は本当に寝てすごしていたのかもしれない。
その『危ない1号』4巻は「青山正明全仕事」と銘打ち、『Hey! Buddy』『Crash』『BACHELOR』誌でのライフ・ワーク的連載「フレッシュ・ペーパー」をまとめた、青山の人生を総括する分厚い一冊だ。もちろん80年代から書き散らした原稿の量は膨大であり、エッセンスを抽出した内容であるが、過去からこの時点までの一貫した態度が見て取れる。プロフィール兼編集後記には「94年11月に日本全国で症例50名前後という眼病疾患、奇病MPPEを患い、失明の恐怖を背負いこんで加速度的に“悟り”の境地へ。本書を最後に“路線変更”を決意……と、まあ、そんなこたぁ、どうでもいいか……」とあり、眼の病気を患ったことへの不安が読み取れる。実際、2000年春に創刊した雑誌『Title』(後期のオシャレ路線を知っている人には判りづらいが、リニューアル前は『サイゾー』に似た妙な雑誌だった)で仕事をする予定があったものの、それを理由に降りてしまったという。
その後も表舞台への登場は断片的だった。清野栄一『地の果てのダンス』(1999年10月15日/メディアワークス)へのレイヴに関するアンケート回答、『創』1999年12月号での軽いインタビュー(パン工場で働いている、との話が出てくる)などだろうか。どちらも明るい未来への希望という印象はなく、何かから逃避しているような、そんな姿勢が透けていた。
『パンゲア』 山野一
1993年12月10日初版/青林堂
『BUBKA』1998年1月号によれば、青山が山野一の作品に最初に触れたのは80年代半ば、山野の最初の単行本『夢の島で逢いましょう』(青林堂)だという。「僕は山野一なる漫画家の才能に完全に惚れてしまった。僕の頭の中では、山野一氏と根本敬氏は、ゲス漫画家の双璧である」。それ以来、大正屋出版時代に編集していたマンガ誌、『エキセントリック』最終号、『危ない1号』でのインタビューなど、何かにつけて仕事をしている。特に『パンゲア』に収録された作品「Closed Magic Circle」(初出はビデオ出版『月刊HEN』1991年11月号)には、そのものズバリ「青山」という名のキャラクターが登場。フリークスと気持ち良さそうにセックスしている。
『地の果てのダンス』 清野栄一
1999年10月15日初版/メディアワークス
1995年に『デッドエンド・スカイ』で第81回文學界新人賞を受賞した作家による、レイヴ・カルチャーを取り上げた体験的小説(本作以前にも共著で『RAVE TRAVELLER〜踊る旅人』(太田出版)がある)。木村重樹との往復書簡も興味深いが、巻末のアンケートは更に興味深く、アンダーグラウンドなDJ達や近田春夫など著名人に混じって青山正明も回答。曰く「繰り返せば飽きがくるのはパーティーもテクノも同じで、はじめのうちは楽しいことばっかりだったのですが、もうそういうのも飽きてきたというのが現状です。今は、パーティーをオーガナイズしたり音を作ったりするほうに関心は向かってます」。実現していたら、一体どんな音になったのだろうか。
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ばるぼら ネットワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミニコミを制作中。
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08.08.24更新 |
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