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青山正明の世界 第26回


永山薫インタビュー part3
取材・構成・文=ばるぼら


21世紀を迎えてはや幾年、はたして僕たちは旧世紀よりも未来への準備が整っているだろうか。乱脈と積み上げられる情報の波を乗り切るために、かつてないほどの敬愛をもって著者が書き下ろす21世紀の青山正明アーカイヴス、永山薫氏のインタビュー第3弾です。
『Crash』1985年10月号/創刊号
10月1日発行/白夜書房
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サブカル要素もオタク要素も両方持ってた

──『Hey!Buddy』と『Billy』(最後の9カ月の誌名は『Billyボーイ』)が廃刊になった後、新しく出た雑誌『Crash』(1985年10月創刊号/白夜書房)に、青山さんと永山さんは対談「変態雑誌 現在・過去・未来」で登場しています。これはどういう流れで企画されたんですか?

永山:『Hey!Buddy』と『Billy』のライターが話してるってことだと思いますよ。でも20年前のことだからね……。「妻に隠れてやるオナニー最高っすね!」とか言ってたのは覚えてるんだけど(笑)。わざわざダブルベッドの中で奥さんが寝てからやるとかさ、陰毛が落ちてるのを奥さんに発見されて追及されたとか、それを嬉しそうに言うんだ(笑)。くだらないことばっかり話してたね。青山はね、バカ話をする友達、っていう感じ。まあ仕事通じての友達なんで、企画とかでは会う。80年代のその頃で覚えてるのはね、とある一般誌で「マイナー雑誌座談会」っていうのをやったことがあるの。それは青山くんも出た。それはもうヤバイ話が多すぎて、いま出せないかもしれない。青山が嬉しそうに話すんだけど、編集者がドン引きしてて、できた雑誌を見たら「●くん」「○くん」になってて、僕らの名前は一切出てこない(笑)。

──それは気になりますね(笑)。青山さんとは世代が違うけど気があった、ということですかね。

永山:僕は世代的にいうと、全共闘の直後。 彼は世代的にいうとオタク新人類の世代なんですよね。わりとなんていうかな、へんなサブカル? 当時はそういう言い方はしてなかったけど、サブカル要素もオタク要素も両方持ってたんですよね。竹熊(健太郎。1960年生)さんなんかも近いと思うけど、彼もミニコミ誌『摩天楼』を作ってて、マンガ家の藤原カムイとかと自販機本やったりしてたよね。

『フィリアック』『サバト』の頃

──『Crash』の対談には、『Billy』を受け継ぐ変態雑誌が創刊する、という流れで青山さん編集の『フィリアック』の名前が出てくるんですが、てっきり『Billy』の路線を『フィリアック』が引き継ぐかと思いきや、そうでもなかったですね。永山さんは一度『フィリアック』について取り上げていますよね(『熱烈投稿』1997年7月号)。「当時としても装幀はダサイし、いかにも突貫作業」と書かれてました。

永山:『フィリアック』はね、あんま面白くないもん。面白くないし、自慢がさ、ケツの穴を表紙に載せたって、「それだけかよ」みたいなさ(笑)。

──(笑)たしかに中身は中途半端というか。『フィリアック』自体よりも、『Crash』対談に出てくる青山さんのエピソード「忍び込んだ高校の更衣室にあったテニスルックを着て、最後にテーブルにウンコをして帰った」という話の方がヤバすぎて笑えます。『フィリアック』は、於岩稲荷にモデルの女の子を連れて行ってヌード撮影&放尿という、バチあたりな企画だけすごいですけど。

永山:有名な話だよね。その後、青山くんが地下鉄の柱にぶつかって目の上を三針縫ったりして。「やっぱお岩さんの祟りかねえ」とか嬉しそうに言うんだよ(笑)。次は将門の首塚で撮影をやる予定だったらしいんだけど、ロケハンに出かけたらどうしても辿り着けなかったらしい。「将門め、結界張りやがったな」みたいな。こんなこと言っちゃ悪いんだけど、青山くんって言ってる事は面白いんだけど、出てくるものはいまいちだったりするんだよね(笑)。その点、『危ない1号』はすごくいい仕事だよね。『サバト』なんかも非常に作りはいいと思うんだけども。栗本慎一郎とか出てるしね。

──『サバト』には永山さんも「わくわくSMランド」を寄稿してますね。この雑誌、今からするとすごくマニアックな人選で作られてますが、当時はそんな印象はなかったですか?

永山:当時は単にマイナー。それにしては表紙に名前がみんな大きく載ってる(笑)。狭い世間だったから。知り合いの知り合いに会えば趣味があった。

──『フィリアック』のあとの続編『ビッチ』は覚えてませんか?

永山:見た記憶はあるんだけど、家に残ってるかな。『フィリアック』っぽい感じだったと思う。

──ちなみに永山さんはこの時期はもうエロマンガレビューは始めてらしたんですか?

永山 『漫画ホットミルク(1986年創刊、98年廃刊。白夜書房発行)』で本格的にレビューを始めたのは1984年くらいだったと思います。その前に『Billy』でも書評やってたんで、その流れで。その頃からマンガ評論家っぽい感じになったのかな。一カ月に100冊読んでたら、他のことはそんなに出来ないですよ。当時の他の仕事は『ビデオ・ザ・ワールド』で月20本エロビデオ見て、『ボディ・プレス』で自販機本や裏本のレビュー。

──永山さんはもうそれから20年以上エロマンガレビューを続けてらっしゃる形ですか。

永山:でもエロマンガはね、即物性・実用性が重要というかな。僕みたいにこねくりまわすレビューは今、それほど求められてないのかもしれない。もともとヌケるヌケないの実用性が重要なのだから、もとからこちらの読み方が異端なのかもしれないけど。そもそもエロマンガ誌に読み物ページって、今ほとんどないでしょう。ものによると読者ページもない。いまレビューやってるのは『お尻倶楽部』くらいです。

──青山さんはエロマンガは読んでたんでしょうか?

永山:大正屋(『Hey!Buddy』を辞めた後に青山が勤めていたマンガ系の出版社)でマンガ雑誌作ってるでしょ? だから読んでたみたいですよ。でも話した記憶はあんまりないかな。

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左/ 『熱烈投稿』1997年7月号 7月1日発行/コアマガジン 右/同左 P156「極楽的図書館」
『熱烈投稿』1997年7月号
『熱烈投稿』1997年7月号 P156

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man.gif ばるぼら ネットワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミニコミを制作中。

「www.jarchive.org」 http://www.jarchive.org/

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08.09.28更新 | WEBスナイパー  >  天災編集者! 青山正明の世界