『別冊宝島345 雑誌狂時代!』
1997年11月15日発行/宝島社
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「弟子作ればいいじゃないっすか?」
──その後、永山さんと青山さんの名前が並ぶのは、『別冊宝島345 雑誌狂時代!』(1997年11月)が久しぶりですが、原稿依頼という形では他にも色々と続いてるんですよね。
永山:白夜時代の後も、『なおこちゃん』(1985年6月。ホープ出版のロリコン誌)、『フィリアック』、『サバト』、それで『危ない1号』と、断続的に続いてるのかな。あと彼がデータハウスの社員だった時に仕事をふられたことがあって、それは一カ月でやれとか言われてね。うちは事務所的には一人でやってたから「俺一人じゃ大変だよ」って言ったら、「弟子作ればいいじゃないっすか?」みたいに言われてさ。ひどいよね(笑)。
──たしかに弟子だと給料払わなくていいのかもしれないですけど(笑)。
永山:あいつは不良ですよ。ワルです。あんなのを手本にしちゃいけない(笑)。いい人とかそういうことじゃなくてね、人間として面白いし、才能もある人だし、付き合ってて楽しい。だけども、編集者、人間として手本にしていいかというとそれは別の話。
自殺したと聞いた時は……
──青山さんが自殺したと聞いた時は、率直にどう思いましたか。
永山:「嘘でしょ」と思った。というのは、昔から「死ぬのは怖い」って言ってたから。誰でもそうだと思うけど、死ぬ事を考えてると、どんどん恐くなったりするでしょ。僕らみたいなカルチャーで生きてると、あの世や来世があるなんて実感できないし、死んだらパーで全部なくなっちゃう。なくなっちゃうってことを突き詰めると、どんどん精神が怖いほうへいっちゃうじゃないですか。青山くんもそういうところがあって、少しでも長生きしたい人だったと思う。最後に会った時も「永山さん、これ飲むと長生きできますよ」「僕ガンガン飲んでますよ」って、セロトニンか何かが流行った頃に言われて。体内時計を速くしないと年取っていくからみたいな話をしたりね。彼は健康食品やサプリが大好きだしね。死ぬのが怖いってタイプだったから、自殺したって聞いた時は何かの間違いだろって思ったよね。根本的に少しでも生き残りたいって意識が強かったから。神秘学のほうに行ったりだとか。
──神秘学への傾倒は晩年強まっていたそうですが。
永山:僕と話していた時期は、深入りはしていなかったと思う。アイツの思想の根本にニーチェ的なとこがあるでしょ。そこに神秘思想が加わって。ニーチェとコリン・ウィルソン。オナニーもクスリも、あいつからすると一種のワーク(宗教的・信条的修行のこと)なんですよね。傍から見てるとバカに見えることもあるけども。「永山さん聞いてくださいよ、寒い時にズボンの前からオチンチンを出してコート着て外歩くと、ワーッとなるんですよ」とか(笑)。一般人から見ると変態のキチガイなんだけど(笑)、そういうのもどっかつながってましたね。だってさ、『エロ本のほん』のトークイベント(1997年12月)の時もアイツはオナニー話をしてたんだけど、睡眠剤いれて、オナニーして、イク瞬間にラッシュをいれると、一瞬心臓が止まりますよ!って嬉しそうに言うんだよ。ヤバイよ(笑)。
──それって人に薦めてるんじゃなくて、単に自分が本当に気持ちよかったから言ってるんですよね(笑)。
永山:そう。でも本当、クスリはやらないほうがいいよ。本当だったらワークを積み重ねて上のステージに行こうというのを、ショートカットしようとした、ってことなんでしょうね、薬物に頼るっていうのは。瞬間的に日常から違う場所へ行こうとする。最終的に自分がその境地に到達できることを諦めているからこそ、できるんじゃないかなあと。そういう意味では絶望的だよね。もう一つ、青山くんで面白いなと思ったのは、人間性(ヒューマニティ)とは何かをアイツなりに考えた結果、自然界の動物と比べた場合、人間らしさって裏切りとか打算とか、そういうことですよね、って。そういうのが人間性であって、ヒューマニティって美しいものじゃないですよね、みたいなことを言ってた。
──そういう姿勢は『危ない1号』からも滲み出ています。
永山:青山って、無意識っていったら違うかもしれないけど、露悪してても無意識だった。「謎本なんて一週間あれば作れますよ」って一週間で本当に作ったり。「マンガはいいですよ、刷れば一万売れますから」なんて素直に言うんだよね。
『別冊宝島345 雑誌狂時代!』 P189「アンダーグラウンドでいこう!」
1997年11月15日発行/宝島社
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【プロローグ】 【1】 【2】 【3】 【4】 【5】 【6】 【7】 【8】 【本文註釈・参考文献】
1997年11月15日発行/宝島社
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「弟子作ればいいじゃないっすか?」
──その後、永山さんと青山さんの名前が並ぶのは、『別冊宝島345 雑誌狂時代!』(1997年11月)が久しぶりですが、原稿依頼という形では他にも色々と続いてるんですよね。
永山:白夜時代の後も、『なおこちゃん』(1985年6月。ホープ出版のロリコン誌)、『フィリアック』、『サバト』、それで『危ない1号』と、断続的に続いてるのかな。あと彼がデータハウスの社員だった時に仕事をふられたことがあって、それは一カ月でやれとか言われてね。うちは事務所的には一人でやってたから「俺一人じゃ大変だよ」って言ったら、「弟子作ればいいじゃないっすか?」みたいに言われてさ。ひどいよね(笑)。
──たしかに弟子だと給料払わなくていいのかもしれないですけど(笑)。
永山:あいつは不良ですよ。ワルです。あんなのを手本にしちゃいけない(笑)。いい人とかそういうことじゃなくてね、人間として面白いし、才能もある人だし、付き合ってて楽しい。だけども、編集者、人間として手本にしていいかというとそれは別の話。
自殺したと聞いた時は……
──青山さんが自殺したと聞いた時は、率直にどう思いましたか。
永山:「嘘でしょ」と思った。というのは、昔から「死ぬのは怖い」って言ってたから。誰でもそうだと思うけど、死ぬ事を考えてると、どんどん恐くなったりするでしょ。僕らみたいなカルチャーで生きてると、あの世や来世があるなんて実感できないし、死んだらパーで全部なくなっちゃう。なくなっちゃうってことを突き詰めると、どんどん精神が怖いほうへいっちゃうじゃないですか。青山くんもそういうところがあって、少しでも長生きしたい人だったと思う。最後に会った時も「永山さん、これ飲むと長生きできますよ」「僕ガンガン飲んでますよ」って、セロトニンか何かが流行った頃に言われて。体内時計を速くしないと年取っていくからみたいな話をしたりね。彼は健康食品やサプリが大好きだしね。死ぬのが怖いってタイプだったから、自殺したって聞いた時は何かの間違いだろって思ったよね。根本的に少しでも生き残りたいって意識が強かったから。神秘学のほうに行ったりだとか。
──神秘学への傾倒は晩年強まっていたそうですが。
永山:僕と話していた時期は、深入りはしていなかったと思う。アイツの思想の根本にニーチェ的なとこがあるでしょ。そこに神秘思想が加わって。ニーチェとコリン・ウィルソン。オナニーもクスリも、あいつからすると一種のワーク(宗教的・信条的修行のこと)なんですよね。傍から見てるとバカに見えることもあるけども。「永山さん聞いてくださいよ、寒い時にズボンの前からオチンチンを出してコート着て外歩くと、ワーッとなるんですよ」とか(笑)。一般人から見ると変態のキチガイなんだけど(笑)、そういうのもどっかつながってましたね。だってさ、『エロ本のほん』のトークイベント(1997年12月)の時もアイツはオナニー話をしてたんだけど、睡眠剤いれて、オナニーして、イク瞬間にラッシュをいれると、一瞬心臓が止まりますよ!って嬉しそうに言うんだよ。ヤバイよ(笑)。
──それって人に薦めてるんじゃなくて、単に自分が本当に気持ちよかったから言ってるんですよね(笑)。
永山:そう。でも本当、クスリはやらないほうがいいよ。本当だったらワークを積み重ねて上のステージに行こうというのを、ショートカットしようとした、ってことなんでしょうね、薬物に頼るっていうのは。瞬間的に日常から違う場所へ行こうとする。最終的に自分がその境地に到達できることを諦めているからこそ、できるんじゃないかなあと。そういう意味では絶望的だよね。もう一つ、青山くんで面白いなと思ったのは、人間性(ヒューマニティ)とは何かをアイツなりに考えた結果、自然界の動物と比べた場合、人間らしさって裏切りとか打算とか、そういうことですよね、って。そういうのが人間性であって、ヒューマニティって美しいものじゃないですよね、みたいなことを言ってた。
──そういう姿勢は『危ない1号』からも滲み出ています。
永山:青山って、無意識っていったら違うかもしれないけど、露悪してても無意識だった。「謎本なんて一週間あれば作れますよ」って一週間で本当に作ったり。「マンガはいいですよ、刷れば一万売れますから」なんて素直に言うんだよね。
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1997年11月15日発行/宝島社
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ばるぼら ネットワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミニコミを制作中。
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08.10.05更新 |
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