Special issue for Golden Week in 2010.
2010ゴールデンウィーク特別企画/WEBスナイパー総力特集!
黄金の鉄の塊にして謙虚なナイト 「東方陰陽鉄」ブロントさんの基礎知識!!
「東方Project」は知っていてもブロントさんは知らない、そんな貴方を強制的にブロンティストと成らしめる、「東方陰陽鉄」の基本設定紹介&ブロントさんにまつわる基礎知識。不特定多数によって断片的な事象が縫いあげられ、やがて誕生した謙虚なナイトって何なのか。今明かされる、英雄の真実!!
「東方Project」は同人サークル「上海アリス幻樂団」様の作品です。
東方特集だというのに謙虚なナイトが紹介されないことに俺の怒りが有頂天になった。「はやくきて〜はやくきて〜」と泣き叫んでいる紳士たちのために俺はとんずらを使って普通ならまだ書きあがらない時間できゅうきょ入稿すると「もう書いたのか!」「はやい!」「きた!原稿きた!」「メイン原稿きた!」「これで勝つる!」と大歓迎状態だったがテキストのブロント語が鬼なっていたのでリアルモンクタイプの編集者が「これはあもりにもひどすぐるでしょう? 裏世界でひっそりと幕を閉じたくなかったらはやくあやまっテ!!」と言うので俺は深い悲しみに包まれたがどこもおかしくはないな。
■優雅に咲かせ、鋼鉄の騎士
ニコニコ動画を中心に展開される「東方Project」の二次創作に「東方陰陽鉄」という名作があることを知らないのかよ? もちろん「東方Project」の二次創作なのだがことは少々入り組んでいるため「東方陰陽鉄」を語る前にまず「ブロントさん」について説明するべきそうするべき。
ブロントさんとは、かつて2ちゃんねるの「ネトゲ実況板」に書き込みをしていた人物とされているが、その真偽は不明だ。しかしまずは、なにはともあれブロントさんの名言をかみ締めるのが大人の醍醐味。
「ナイトが強いのは当然に決まっている。黄金の鉄の塊で出来ているナイトが皮装備のジョブに遅れをとるはずは無い」
「一般人どもが一級廃人のおれに対してナメタ言葉を使うことでおれの怒りが有頂天になった」
「卑怯者はマジでかなぐり捨てンぞ?」
「ほう、経験が生きたな」
「どちかというと大反対」
「このままでは俺の寿命がストレスでマッハなんだが・・」
「お前らにブロントの悲しみの何がわかるってんだよ」
「一般人どもが一級廃人のおれに対してナメタ言葉を使うことでおれの怒りが有頂天になった」
「卑怯者はマジでかなぐり捨てンぞ?」
「ほう、経験が生きたな」
「どちかというと大反対」
「このままでは俺の寿命がストレスでマッハなんだが・・」
「お前らにブロントの悲しみの何がわかるってんだよ」
「ネトゲ実況板」とはもともとオンラインゲーム「ファイナルファンタジー11」のために作られた匿名掲示板なので、ブロントさんの名言とされるものはすべて推測であり、本当に同一人物のものであるかどうかわからない。名言集のトップにもこのように記載されている。
Q.ブロントさん名言集なのに、明らかなブロンティストの発言が掲載されているぞ?
A.お前は馬鹿すぐるブロントさんという単語はもはや一個人をさすのではない
ブロントさんが言った言葉がブロント語ではなくブロント語を話したものがブロントさんという逆説的真理を知らないのかよ
A.お前は馬鹿すぐるブロントさんという単語はもはや一個人をさすのではない
ブロントさんが言った言葉がブロント語ではなくブロント語を話したものがブロントさんという逆説的真理を知らないのかよ
「ブロンティスト」とはブロントさんを信奉し、ブロント語を巧みに操る闇の一団を指す。
つまり「ブロントさん」とは「ブロントさん的なるもの」を目指して創作された発言が、ブロンティストらによって価値判断をされながら作り上げられた黄金の鉄の塊と解釈して相違ない。重要なのはブロントさんが実在するかどうかではなく「ブロントさん」という固有名詞があること、その世界観があまりにも頼もしくユーモアに溢れていたことだ。
不特定多数によって断片的な事象が縫いあげられ、キャラクターを、世界を創作していく行為は二次創作のそれに等しい。「東方Project」のチルノが「\x87H←馬鹿」「あたいったら最強ね」などの名セリフから現在の地位を確立した諸状況と類似しているのは確定的に明らか。それが「成りすまし」を狙った行為であれ、作品への深化であれ、表象はすべて創作になる。「ブロントさん」というキャラクターは二次創作文化の外で、まるで二次創作のようにして完成されたのだ。見ろ、見事なカウンターで返した。
■ブロントさんの為のファンタジー
そろそろ具体的な「ブロントさん」の造詣に触れる。「ネトゲ実況板」とはもともとオンラインゲーム「ファイナルファンタジー11」のために作られた掲示板なので、当然ながらブロントさんはファイナルファンタジーのプレイヤーとして、自身のジョブ「ナイト」の姿で現われる。黄金の鉄の塊で出来たナイトは最強の廃人(己の持てるすべてを掛けてネットゲームに打ち込む自宅警備員)装備に身を包み、卑怯な忍者を退けキングベヒんもスを打ち倒す幻想世界の英雄として、盾なき世界に降り立つのだ。
そしてブロントさんの持つ強固な世界から様々なキャラクターが立ち上がる。ブロントさんが「忍者」を嫌ってやまないことから卑怯で嫉妬深い「汚い忍者」が誕生し、ブロントさんの前に立ちはだかる。ジョブに「竜騎士」を選択したプレイヤーの悲喜こもごもから立ち上がった苦労人の竜騎士「リューサン」は今日も孤高にインザスカーイ。他にも「ダメなプレイをするナイト」を擬人化した愛すべき馬鹿「内藤」など、彼らは「ネ実キャラ」と呼ばれ、増殖し、様々な世界と交錯し続けている(※1)。
↑コメントは消すな。絶対に消すな。ブロンティスト達の見事なアッピルだと関心はするがどこもおかしくはない。
■光と闇と幻想がそなわり最強に見える「東方陰陽鉄」
薄々感づいているひとも多いと思うが「東方陰陽鉄」、正式名称を「東方陰陽鉄 ~ブロントさんが幻想郷入り~」は「東方Project」の世界にブロントさん御一行が紛れ込んでしまったクロスオーバーな二次創作作品だ。「うp主」こと「hiro」氏によって制作され、ニコニコ動画にて2010年5月現在も継続している。現在は46作目まで発表されている。この配布形式にもまた一癖ある。「東方陰陽鉄」はエンターブレインの開発したRPG制作ソフト「RPGツクール」で制作されている。そしてニコニコ動画にて「プレイ動画」として発表されているのだ(※2)。
↑「東方陰陽鉄」の幕開けである。かっこいいなーあこがれちゃうなー!
物語は「ファイナルファンタジー11」の舞台であるヴァナディールから始まる。今日もブロントさんはヴァナディールの弱き人々を守る黄金の鉄の塊で出来た盾としてヴァナディールを駆け回っていた。神の生み出した大地の悪魔キングベヒんもスに襲われ「はやくきて~はやくきて~」と泣き叫ぶ弱き冒険者たちを、自慢のグラットンソードでカカッと救い出すブロントさん。
「もうついたのか!」
「はやい!」
「きた!盾きた!」
「メイン盾きた!」
「これで勝つる!」
しかし今日のキングベヒんもスは格が違った。フルボッコしたはずのキングベヒんもスが立ち上がり、ブロントさんを謎の爆発が襲う。爆発の中で死亡フラグを覚悟するブロントさん。リアル世界より充実したヴァナ生活もここでおしまいか……お前これネットゲームだろとかプレイヤーなのかキャラクターなのかとかそんな馬鹿すぐる浅はかさは愚かしい。ブロントさんの人生がシャッタアウトされそうになっているんだぞお前らに命ロストの悲しみがわかるかよ?
とかなんとか言ってたら、ブロントさんの体は頭から博麗神社のお賽銭箱に突き刺さっていたのであった。想像を絶する悲しみが襲ったのはブロントさんではなく霊夢だったな。見ろ、見事なカウンターで返したが夢想封印おそろしいです許してくだしあ;;
■物語は儚きキャラクターの為に
前述したように「東方陰陽鉄」はRPGの形式で物語が進められる。この形式の選択もまた、物語に対する効果的な作用を生みだしている。
ご存知だと思うが「東方Project」はSTGだ。STGは基本的に自機を操るプレイヤーがステージに挑む形式をとる。残酷きわまる弾幕をかいくぐりステージの奥へ、奥へと突き進み、プレイヤーの肉体に経験が蓄積される。しかし自機そのものの成長はリセットされがちなジャンル、それがSTGである。
対してRPGは、パーティを組みレベルを上げ、キャラクターを成長させる。よってプレイヤー自身の肉体的な蓄積は乏しいが、キャラクターの冒険の痕跡はアイテムなどの形でゲーム内に蓄積され、レベルの上昇と共に獲得される新たなる魔法や技、ステータスに刻まれる数字が成長を如実に表現する。成長し、協力せよ。それがRPGの要請するルールだ。
作中で何度も言及されることだがブロントさんの混入により本来は単独で個々に弾幕ゲームを競い合っていた「東方Project」のキャラクターたちがパーティを組み、成長し、協力して敵に挑む物語が「東方陰陽鉄」には生まれている。「東方Project」をSTGという形式から解き放ち、RPGという形式へ落とし込んだ時、RPGのルールに従って彼女らが遊ぶのであれば、それは必然的に生まれる物語なのだ。
そして協力の物語にカタルシスを生み出すため必要とされる絶妙なゲームバランスが「東方陰陽鉄」にはある。のみならず「プレイ動画」という配布形式で感動はさらに加速した。生半可なプレイヤーでは何度もゲームオーバーを経験すれば必要以上にレベルを上げてボスキャラを赤子の手をひねるように叩きのめす脳筋プレイ(※3)で臨みたくなるものだが、「東方陰陽鉄」のプレイヤーは一瞬の油断が命取りな中でのスレスレのプレイを魅せてくれる。すごいなーあこがれちゃうなー。
■「東方陰陽鉄」で生きる経験
「ブロントさん」と「東方Project」のクロスオーバー作品は総じて「東方有頂天」と呼ばれる傾向がある。ニコニコ大百科の東方有頂天タグに詳しいがナイトは世界を選ばない。
↑見た目はクロノトリガーのままだが問題にい絶対にない。ナイトは見た目を選ばない。
ブロンドさんをゲームマスターとして「東方Project」のキャラクターと共にソードワールドのTRPGを楽しむという何週まわったかわからないn次創作「東方鉄賽剣」や、クロノトリガーの世界に迷い込んだ「ブロントリガー」などどれも非常にクオリティが高く、東方陰陽鉄Wikiの充実っぷりときたらなんというか、その、大変なことですよこれは。
さらにブロントさんはニコニコ動画を飛び出して、Pixivや同人誌にまで羽ばたいている。「東方陰陽鉄」の二次創作と謳っていなくとも「東方Project」の同人誌を読んでいればブロント語を見かける機会は稀によくある。「霊ブロ」という境界の果てに見出されたカップリングすら現われているのだ。ブロント語は爆発的な感染拡大を続けており、このままのスピードでブロンティストが増えていけば2040年に地球は滅亡する。
だからと言ってブロントさんを避けて通るのはどちかと言うと大反対ブロンティックなユーモアの破壊力は計り知れない破壊力バラバラに引き裂かれてさらにダメージが加速してしまう一般人には諸刃の剣いまのうちブロンティングしておかないと頭がおかしくなって死ぬ「やっと許しがでたか!」と大喜びでブロント語を使いこなさないとリアルだったらお前はもう死んでるぞここまで読んでブロントさんの偉大さを理解しないやつに口で説明するくらいならおれは牙をむくだろうなおれニコニコ動画で三徹とか普通にするし別にブロントさんをmうりありアッピルなどしてはいない今ブロンティストになりたいと感じてしまってるやつは本能的に長寿タイプジュースをおごってやってもいい。
■とにかく、そのブロントって人の動画を観ればいいのね?
「さん」をつけろよデコ助野郎!!!!
■……。
じゃ、アニメ実況系の仕事があるのでこれで。
文=四日市
【注釈】
※1 一般に「ネ実キャラ」といわれるキャラはブロントさんのように実在するようで実在しない、少し実在するかもしれない人物であったり、ジョブの最大公約数を擬人化したものであったり、ジョブへの所感の擬人化であったりするが、まれに本当に実在する上に特定可能な個人をネタにしたものがある。さらにそのプレイヤーが現役であったりすると過度にいじくるのはファイナル迷惑になるためおもしろいからといって内藤のように草を生やしすぎずにナイトのように謙虚であるべきそうあるべき(やくそく)。
※2 残念なことにゲーム本体が配布される予定はない。
※3 脳みそに筋肉しか詰まっていない力任せのゴリ押しプレイ。英語で言うとダンターグ。筆者も割とそのクチである。
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四日市 エヴァンゲリオン研究家。三度の飯よりエヴァが好き。クラブイベントにウエダハジメ、有馬啓太郎、鶴巻和哉らを呼んでトークショーを開いたり、雑誌に文章を載せてもらったり。プロフィール画像は昔描いた三十路魔法少女漫画。