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第八章 脅迫者たち 【1】


著者=
小林電人

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第1部の登場人物とあらすじはこちら>>

第八章 脅迫者たち

\x87T 忍 18


車は高速道路を東に向かっていた。風はやや冷たかったが天気はよく、雲一つない青空が広がっている。

藤井と忍にとって、初めてのデートらしいデートだった。いつも地元から離れた町のホテルで、人目を気にするようにして、こそこそと密会していた二人だが、今日はドライブに行くこととなった。

従順な忍にしては珍しく、たまには恋人らしいデートがしたいと駄々をこねたのだ。藤井はふざけて、自分の教えてる化学のテストで満点を取ったら温泉に連れて行ってあげると言ったのだが、忍は見事にそれに応えてしまった。忍は選抜クラスであるS組の生徒なので、当然もともと成績は優秀なのだが、それにしても藤井のテストで満点を取ったのは初めてだった。

こいつ、よっぽど頑張ったんだな......そう思うと、忍がいじらしくてたまらない。藤井は次の週末に忍を温泉に連れて行くことを約束した。宿泊は危険が多すぎるので、日帰りではあるが、忍は飛び上がらんばかりに喜んだ。

藤井はレンタカーを借り、10年ぶりに車を運転した。離婚した妻と、恋人時代はよくドライブをしたっけな、そんなことがチラリと頭をよぎる。

忍に取っては、恋人と遠出をするというのは初めての体験だった。朝からずっと幸せいっぱいの笑顔だ。

「私、温泉とか行くのって、ほとんど初めてなんですよ。うちの親が和風の旅館が好きじゃないみたいで、旅行行く時はいつもホテルだったし。すごく小さい時に、親戚と一緒にF温泉にいったことがあるらしいんですけど、全然覚えていなくて」
「そうか。おれも温泉は久しぶりなんだ。これから行くところも、ずいぶん前に友達と行ったんだけど、まだ昔のままかなぁ。すごく大きな露天風呂があってね。ちょっと変わったところなんだ」

ハンドルを握りながら藤井は答える。大学時代の悪友に誘われて、そのT温泉に行った時の事を思い出す。たまたま大雪に見舞われて、極寒の中で露天風呂につかったのだ。そして何時間もお湯に浸かり続けたっけ。獲物を待つために......。

車は山の中を走り、やがて目指すT温泉へとたどり着いた。山奥の古びた木造の旅館。若い女の子なら敬遠するだろうが、レトロ趣味の忍は目を輝かせて「わぁ、いい感じですね」と嬉しそうだ。

「ここは温泉マニアの友達に教えてもらってね。知る人ぞ知る名湯なんだ。露天風呂が川沿いあるから、景色が素晴らしくてね」
「へぇ......。でも、せっかくの温泉も男湯と女湯で分かれちゃうから、ちょっと寂しいですね」
「ん、そうか?」

藤井は意味ありげに笑いながら、車を降りた。



「女性の脱衣所はそっちだよ」
「はい、それじゃあ。私、長風呂しちゃうかもしれないですから、先に上がっててくださいね」

正に山の中といった屋外のほったて小屋のような女性脱衣所の中に忍は入っていった。藤井は男性脱衣所で、服を脱ぎ、タオルで前を隠しながら露天風呂へと向かう。初冬の風が冷たい。慌ててお湯に入った。

快晴の休日ということもあって、既に入浴客が数人いた。禿げ上がった中年男の二人連れや、職人風の若い男などが、それぞれお湯につかってくつろいだ表情を見せている。しかし、彼らの視線は一方向に向いていた。

「脱衣所に一人いるようですな」
「ふふふ、若い子だといいですね」

中年男たちがヒソヒソと囁いていた。

しばらくして脱衣所の扉が開いた。湯に浸かっている男たちが、一斉に息を飲んだ。脱衣所から出てきたのはタオルで必死に前を隠そうと苦労している忍だった。左手で胸を、右手で股間を押さえているが、お尻は丸出しだ。体を縮めて、泣きそうな顔でキョロキョロと辺りを見回した。湯の中に数人の男性がいて、自分の方を見ているのに気づき、さらに体を縮める。そしてその中にニヤニヤ笑いを浮かべる藤井を見つけると、早足で近づいてくる。

「先せ......、藤井さん。ひどい、混浴だなんて、知りませんでした」

念のために今日は人前では「先生」と呼ばずに名前で呼ぶようにと忍にはいいつけてあったのだ。

「あれ、そうだったかな?」

藤井はすっとぼける。風呂の中の男たちは、不躾な視線を忍の裸身に浴びせている。

「ほら、お湯に入る前に、ちゃんとかかり湯を浴びないと」

藤井は、洗い場にある湯おけを指し示す。

「は、はい......」

忍は洗い場の方へ歩いていくが、後ろを向いてしまうと、お湯につかっている男たちにお尻が丸見えになってしまう。左手で前のタオルを押さえ、右手でお尻を隠そうとする。もちろん隠しきれずに可愛らしいお尻がチラチラと見えてしまっている。

洗い場の前にしゃがみ込み、素早くお湯を体にかける。背中に男たちの熱い視線を感じて、忍の体の奥が妖しく疼いてくる。藤井以外の男性に肌を見せるのは、初めてなのだ。

そして、忍はいそいそと藤井の近くのお湯へ入ろうと湯船に近づく。とりあえず、お湯の中に入れば、男たちの視線から逃れられると思ったのだ。

タオルで前を隠したまま、お湯に入ろうとすると藤井が注意した。

「だめだよ。タオルをお湯の中に入れるのは、マナー違反だぞ」
「そ、そんな......」

忍は絶望的な表情になる。しかし、そこで立っているのは男たちの視線の格好の獲物でしかない。忍は意を決して、タオルをはらりと横に落とすと両手で乳房と股間を器用に隠しながら、お湯に入った。藤井の方に近づき、泣きべそをかきながら抗議する。

「藤井さん、こんなの、ひどいです。みんなに見られちゃう......」

藤井は忍の頭を撫でて、なだめる。

「悪い、悪い。どうせ温泉に入るなら、男女ばらばらよりいいかなぁと思ってさ。それに......」

声を潜めて、耳打ちする。

「おれの可愛い忍を、ちょっと自慢したかったんだ」

そう言われて、忍は顔を赤らめる。

「でも、でも、恥ずかしいです」

すると藤井はにやりと笑う。忍は自分が男たちに肌を視姦されて、妖しい疼きを感じていることを見抜かれたような気がした。

「さぁ、こんな端っこにいたんじゃ、せっかく絶景の露天風呂がもったいない。もっと奥に行こう」

藤井は湯の中でしゃがんだまま、忍の手を取って、川が見える方へと移動する。

「あっ」

仕方なく忍も一緒に動くが、片手を藤井に握られているので、もう片方の手でなんとか胸と隠す。無色透明なので、お湯の中にいても男たちの視線から肌を隠すことは出来ない。

「な、ほら、すごくいい景色だろ?」

確かに渓流が眼下に広がる素晴らしい景色だったが、忍はそれどころではない。お湯の中で体を縮めて、必死に露出する面積を少なくしようとしている。

そんな忍の恥じらいの姿を男たちはお湯に浸かりながらニヤニヤと見ている。気がつけば、さっきよりも入浴客の人数が増えている。

「こんな若い娘さんが来るなんて、こりゃ幸運だな」
「ずいぶん若いみたいじゃないか。もしかしたら女子高生かもな」
「見ろよ、あの肌のピチピチしたこと! さっきチラリと見えた乳首もキレイなピンク色だったぞ」

「ひひひ、正に目の保養だな」

中年男たちがヒソヒソと話しているのが忍の耳にも聞こえる。恥ずかしさに顔がカッと熱くなる。

二人の会話から、藤井が意図的に忍を辱めているのだということが、男たちにもわかっていた。なので、男たちは遠慮することなく、じりじりと忍の方へと近づいてくる。奥の方にいる男などは、立ち上がって、忍を見ようとしていた。

「あ、ああ......」

十人近くの男が自分の肌を見ている。お湯の中であり、肝心の部分はなんとか手で隠せているとはいえ、その恥ずかしさは想像を絶するものがあった。そして、それと同時に、その恥ずかしさに興奮してしまっているという自分が、なおさら恥ずかしかった。

「今日はいい天気ですねぇ」

すぐ近くにいた初老の男が声をかけてくる。藤井に話しかけているのだが、目はさりげなく湯の中に揺れる忍の裸身に向いている。

「ええ、そうですね。でも風は少し冷たいみたいだから、湯から出ると寒いですね」

藤井は平然と答える。

「ところで、お連れのお嬢さんは混浴は初めてなのかな? ずいぶん緊張しているようですが、温泉はもっとリラックスして楽しまないともったいないですよ」
「いやぁ、混浴に興味があるって言ってたくせに、いざ来ると恥ずかしくなってしまったみたいでね。こういうところは、みんな温泉を楽しみに来てるんだから、別にいやらしい目で見る人はいないんだぞ」
「そうですよ、そうですよ、ふふふ」

あからさまに好色な表情を浮かべながら、初老の男は白々しくそう言う。

「それにしてもお嬢さんはお綺麗ですねぇ。いやいや、若いということはいいですな」
「ほら、褒められてるぞ。お礼をいわないと」

藤井は忍を肘で軽くこづく。

「あ、は、はい。あの、ありがとうございます」
「いやいや、こちらこそけっこうなものを拝見させていただきまして。寿命が延びますよ」

言われて、忍はさらに体を縮める。すると藤井が耳元で囁いた。

「あんなに喜んでいるんだ。そんなケチケチ隠すんじゃない」
「で、でも......」
「隠すな」

藤井がぴしゃりと言うと、もう忍は逆らうことは出来ない。しばらく固まったように動かなかったが、やがてゆっくりと両手を胸と股間から外して体の横につけた。

声にならないどよめきがお湯につかった男たちの間に広がる。透明なお湯の中で忍の白い裸身が露わになったのだ。

形良く盛り上がった乳房とうっすらと淡い桃色の乳首、未成熟でありながら十分に女としての艶めかしさを感じさせる体のライン、そして若々しい弾力のある太腿の間で揺らめく可憐な黒い茂み。

「おお......、素晴らしい」
「なんて可愛らしいヘアなんだ」
「た、たまらないな」

男たちは口々に呟く。

「いや......、見ないで......」

忍は目を伏せるが、手で隠すことは出来ない。藤井の命令は絶対なのだ。

お湯越しに無数の欲望の視線が突き刺さってくる。それは正に視線による輪姦だった。忍はそのあまりの恥ずかしさに気が遠くなる。そして体の奥が燃え上がり、とめどなく蜜があふれていく。痺れるような興奮と快感。

「みんなが忍の裸を見ているぞ。きっとお湯の中でみんな勃起してるんじゃないか。お前の体を弄ぶことを想像してるぞ」

藤井に耳元で、そう囁かれると、忍の興奮はさらに高まっていく。顔が赤くなり、息が荒くなっていくのは、お湯にのぼせているわけではないことは、視姦者たちにもわかっていた。

(続く)

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著者=小林電人 長年夢見ていた自分の「理想のSMビデオ」を自主制作したことがきっかけで、AV&SM業界のはじっこに首をつっこむことになった都内在住の40代自営業。ひたすら羞恥責め、アナル責めを好み、70年代永井豪エッチ漫画の世界を愛する。これまでの監督作品として「1年S組 高橋真弓のおしおき」「同2」「穴牝奴〜町内会人妻肛虐倶楽部 」がある。以前、永井漫画をモチーフにした小説をネットに発表したことはあるが、オリジナルは本作が初めて。
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08.02.11更新 | 小説  >  羞恥の教室