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Scene03. 8月3日 監禁


【1】

宮内渚は、竜二・竜也邸と同じ町内にあるアパートで暮らす20歳の専門学校生である。
1週間のうち月水金曜は自宅近所の居酒屋でアルバイトをしている。
被害に遭った日は午前0時までアルバイト先で過ごし、その後、フィアンセの部屋に立ち寄ったために家路につくのが普段よりも遅くなった。

もし、アルバイト先からまっすぐに帰宅していれば、その頃にはまだちらほらといた通行人が犯行を食い止めていた可能性もある。
だが結納を三日後に控えて浮かれていた渚には、深夜に帰宅する危険性など意識の埒外にあったようだ。

そして午前3時50分、本人にその瞬間の記憶はないが、自宅近くの路上にて、歯科医などが麻酔で使用する笑気ガスを嗅がされて気絶、略取誘拐の被害に遭った。

帰宅の途中で記憶が途切れ、目覚めた場所がベッドの上であったことから、本人は当初、そこが病院に類する何らかの施設ではないかと思ったという。
しかし、部屋の片面が鉄格子で塞がれており、打ちっぱなしのコンクリート壁に吊るされているのは鞭や縄といった、およそ医療とは縁のない品々である。

「どういうことなの……これ……」

パニックに陥りかけて叫び声を上げそうになった瞬間、渚は自分の衣服が乱れていることに気がついたという。





服装そのものは、記憶が途切れる前と同じワンピースであった。
しかしパンストの股間部分に引き裂かれたような穴が開いていた。
パンティは穿いていたが、不自然によれており、秘唇の一部が露出していた。
また、ワンピース自体に乱れは見られないものの、その下に着けていたブラジャーがずり上がって乳首が直接ワンピースに触れていた。

自分に何が起きたのか、若い女であれば誰もが想像することを、渚もまた考えた。

下半身にレイプを思わせる違和感はなかった。
しかし手で太腿に触れると、脚の付け根にナメクジの這ったような、薄い粘液の跡がある。
唾液かも知れないと渚は思った。

何者かが、自分を路上で気絶させた後、この場所に運び込んでパンストを破り、乳房をこね、太腿や秘唇を舐め回した。
そう考えるのが自然だった。
そしてその犯人はまだ、この建物の中にいるに違いないと渚は思った。
少なくとも、この場所へもう一度戻ってくることは間違いない。
そのための牢であり、さまざまな道具であるに違いないからだ、と。

渚は立ちあがってベッドを下り、牢の扉に手をかけた。
しかし、押しても引いても鉄格子はびくともしなかった。
大声を出して助けを呼びたかったが、犯人に声を聞かれるのが怖くてできなかった。

絶望感から足が萎えそうになる。

犯人は、何者なのか。
そして最終的な目的は何なのか。
震えながら、ゆっくりと振り返り、渚は改めて牢の中を見渡した。

壁際に、椅子を改造して作ったと思われる拘束装置が置かれていた。
その背もたれに、長い髪の毛の束がべったりと付着していた。
どのようにして抜け落ちたのかは分からない。
それよりも問題なのは、自分より以前にもこの場所に閉じ込められた者がいるという事実だった。
閉じ込められていたのは女性だったに違いないと渚は思った。
では、その女性は今、どこでどうしているのか。
脱出したのであれば警察に駆け込むはずである。

そんなニュースを見たことがあっただろうか。
いや、自分がここにこうしている以上、犯人はまだ捕まっていないということになる。
ならば閉じ込められていた女性はどうなったのか。
同じ想念がグルグルと頭の中を駆け回り、渚の尻がストンと床に落ちた。

たちまち、床に薄黄色の池ができていく。

その温かい液体に、力なくうなだれた渚の黒髪が触れた瞬間である。
いきなり、薄闇の地下室に甲高い声が響き渡った。

「あぁーっ、オシッコしてるの? ちょっと待って、今、瓶持ってくるから!」

盆に湯気の立つ器を載せた竜二が鉄格子の向こうで叫んでいた。


【2】

竜二が渚の食事を持って地下室に下りた時、弟の竜也は自室で膝を抱えたまま目を閉じていた。
眠っていたわけではない。
何度も、何度も、同じ場面を繰り返し思い出していたのである。

それは夜道を歩く渚の後ろ姿であり、笑気ガスのスプレーを浴びて崩れ落ちる姿だった。
そしてぐったりと倒れ込んだ渚を抱え起こした時の、ずっしりと重たい、しかし柔らかで甘美な感触だった。

竜也は、渚の存在を犯行以前から知っていた。
竜也自身の感覚では、彼は渚に惚れていたのである。

犯行までの一年間、竜也は渚の顔を見るために、彼女の勤める居酒屋にたびたび顔を出していた。そしてそのたびに「初めてですか?」と聞かれていた。
そういう扱いを受けることに竜也は慣れていた。
子供の頃から「存在感」がないと言われ続け、自分でも時々「俺は透明人間ではないか」と本気で思うことがあった。
だから傷つきはしない。
その代わり、いつまでも相手を好きでいることができた。
竜也にとって、「好き」「惚れる」とは、通常人とは異質の意味合いをもっていた。









竜也が自分の秘めた切実な欲望に気がついたのは、小学生の頃、竜二に命じられてある少女の下着を盗んだ時からである。
プールの更衣室に忍び込んで白い綿のパンティを握りしめた瞬間、竜也は激しく射精した。
そしてその少女に「惚れた」。
別の少女のタンポンを盗んだ時も、女教師の排泄姿を盗撮した時も、竜也はその瞬間、脳が痺れるような快感を覚え、相手を「愛して」いた。

その感覚が痴漢のものであることに気がついたのは、中学校に上がってからのことだった。
雑誌でたまたま見た痴漢シーンの写真を見て、背筋に電流が走ったような衝撃を覚えた。
そして同時に、自分は痴漢なのだという確信を得た時、竜也はむしろ、自分の存在意義を感じて喜んだ。
自分は兄の言いなりになるばかりの操り人形ではない、好きなことを、自分の意志でしているのだ、そう思えるようになったことで、竜也は初めて自分なりの「生」を感じることができたのである。

渚と出逢ったのは偶然だった。
竜也が27歳の頃、当時10歳だった渚が道端にしゃがみ込み、ほどけた靴紐を直していた。
その時に渚のスカートの中を見たことが「惚れる」きっかけになった。
椿の白いパンティが、小学生時代に初めて女子更衣室から盗み出した「初恋」のパンティを竜也に思い出させた。

以来ずっと、竜也は意識と目の端に渚を捉えて生きてきた。
そしてその間にも竜二の命令に従って働いては、竜二の目を盗みながら自身の欲望も満たしてきた。

つまるところは、やはり竜也は、竜二の木偶でしかないに違いない。
竜也自身もそう思うことがあった。

しかし、一人だけ、渚だけは自分の獲物だ……そんな感慨があったのも事実だった。

気絶した渚を地下室に運び込んだ後、ベッドの上で渚を抱きしめた。
キスをし、ワンピースの前を開いて乳房を露出させ、その先端に舌を這わせた。
人形のように横たわる渚は美しかった。
長い脚を撫でまわし、爪先をストッキングごと口に含み、音を立てて吸った。
視線を上に向けると、スカートの奥にパンティが見えた。
ストッキングに包まれたそのゆるやかな丘は、渚がまだ少女だった頃に見せてくれたパンティと二重写しになり、竜也をますます深い陶酔に導いた。
舌を爪先からくるぶし、膝、太腿と移動させ、指でストッキングの股間部分を引き裂いた。
そのままの勢いでパンティに吸いつき、唾液を染み込ませてはまた吸い込んだ。
そして太腿に頬を押しつけ、舐め回し、パンティのわきから舌をこじ入れて秘唇をねぶった。

気がつくと下着の中で射精していた。
竜也は布地にこびりついたその精液を手に取り、渚の太腿に塗りたくった。
後に、目覚めた渚が唾液の跡だと思ったのは竜也の精液だったわけである。

その後竜也は、帰宅したばかりであることを装うために、外で着ていた雨合羽をもう一度濡らして着込み、竜二に会って首尾を報告した。
そして自室に閉じこもり、何度も、何度も繰り返し、拉致から悪戯までの場面を思い出しては甘美な陶酔を味わっていた。

やがて朝がきて、竜二の起きだす気配があった。
「あぁーっ、オシッコ!」という叫び声が聞こえたのはそれから20分後のことである。


(続く)

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『生贄おさな妻〜収集家の奴隷〜』

本日発売
出演:渚
収録時間:120分
品番:KNSD-03
メーカー:大洋図書
ジャンル:SM・緊縛・凌辱
レーベル:キネマ浪漫
定価:5,040円

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junichirou.jpg 芽撫純一郎 1960年和歌山県生まれ。プロポーラーとして活躍後、セミリタイアして現在は飲食店経営。趣味として、凌辱系エンターテインメントAVの鑑賞と批評、文章作品の創作を行なう。尊敬する人は一休宗純。
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08.09.26更新 | WEBスナイパー  >  官能小説