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Scene06. 混乱


【1】

「ああ……かわいそうに……」

ベッドの上で大の字に寝かされ、木枠に両手両足を固縛された渚がいた。
まだ眠っている。

渚の衣服はすべて脱がされ、形のよい白い乳房も、淡い茂みの奥の合わせ目も、ぼんやりとした灯りの下にむごたらしく晒されている。

「ごめん、ごめんよ、渚ちゃん……」

竜二に吹きかけられた笑気ガスを吸い込んで床に倒れていた渚を抱き起し、服を脱がせてベッドに縛りつけたのは竜也である。
その間、何度も渚の柔肌を撫でまわし、肌にキスをし、舐め回した。








こんなふうに、意識を失った女を手や舌で汚した経験は初めてではない。
これまでに攫ってきたほぼ全ての女を、竜也は竜二に隠れて「味見」してきていた。
ただし、セックスまではしたことがない。
ただ、触り、ただ舐め、ただ覗き込む。
それだけで陶酔にも似た快楽に惑溺できるのが竜也だった。

渚の衣服を脱がす時、一枚一枚の素材を、手と頬と舌で味わった。
ワンピースの裏地の滑らかな感触に酔い痴れ、その段階で一度、ズボンの中で射精した。
それでも、下着に手をかける瞬間には、尚も痛いほどに勃起していた。

かつてこんなにも自分を酔わせた女がいただろうかと、竜也は思った。
ただ触れただけで射精した経験は何度もある。
が、彼女たちは竜也にとって、過去においても未来においても、現在においても赤の他人でしかなかった。
渚はそうではない。
竜二より以前に自分と深い関わりを持った、特別で唯一の存在だった。

「渚ちゃん……渚ちゃん……」

唱えるように言いながら身を屈め、秘唇に舌先を突っ込んだ。
かすかな滑りを感じた瞬間、また、射精してしまう。

陶酔状態のまま、柔らかな肉を両手でこじ開け、さらに舌を伸ばして渚の菊門をねぶった。
皺の一本一本を数えるように丁寧にねぶり、かすかな苦味にすら昂揚した。

興奮と衝動が止まらなかった。
三度目の絶頂が近づいてきた時、竜也はかつてしたことのない行動をとった。
一旦、身体を起して渚の顔にまたがり、軽く開いたままの渚の口にペニスをねじ込むと、覆いかぶさるようにシックスナインの体勢になった。
通常、シックスナインは互いの意思の疎通があって初めて成立するものである。
竜也はそうしたやり取りをこれまでに一度もしたことがなかった。
その体勢をとることすら初めてだった。

ぎこちなく腰を振りながら、クリトリスを吸い立て、鼻を秘裂に押し込んで目を閉じた。

「あぁ……あぁぁぁぁ……」

背筋に痺れるような快感が走る。
渚の口の中にドクドクと大量の白濁液が放出され、竜也の背中が震えて丸くなった。

ベッドに手をつき、ゆっくりと身体を起こす。
口からペニスを抜き取ると、白濁液が糸を引いて渚の頬を汚した。

「うぅぅ……ごめん、ごめんよ」

もう一度繰り返して言い、渚の顔を横に倒して精子が喉に流れ込まないようにする。

「ねぇ、兄さんには内緒だよ。もしもバレたら、俺も君も、殺されてしまうからね。今、綺麗にしてあげるから……ごめんよ、ごめんよ……」

震える指で渚の口の中の精子を指で掻き出し、唇と頬の粘液を丁寧にぬぐった。
そして竜二に命じられた通り猿轡を噛ませようとした時、ふいに渚が目を開いた。

【2】

「あ……渚ちゃん……」

竜也がバネ仕掛けの人形のような動作でベッドから飛び降り、後ずさった。

「お、起きてたのかい?」

声がかすれ、喉に痰がからまった。
まだ濡れたままのペニスが見る見るしぼんでいく。
自分をまっすぐに見つめてくる渚の瞳が恐ろしかった。

「あなたが……私を攫ったのね?」

渚が言う。
ゆっくりとした、落ち着いた声が竜也の自我を揺さぶる。

頭が真っ白になっていた。
適切な言葉が何一つ出てこない。
いや、この場において適切な言葉などというものは、そもそもないのだろう。
ただただ逃げ出したいという衝動だけが確かで、しかし渚のなげかける言葉の網に足を絡め捕られ、目を伏せることしかできなかった。

そうなんでしょう?――と渚が続ける。







「お願い、教えて。私をどうするつもりなの? 殺されるってどういうこと? あなたが今、私にしたことをあいつに言うと、私もあなたも殺されるの?」

「お、俺は……俺は……」

いつもそうだ――と竜也は自分の足元を見つめてかろうじて思う。
正しいのはいつも自分以外の誰がで、まっすぐにものを言われるとそれだけで身動きがとれなくなってしまう。
竜二に逆らうことができないのもそのためだ。
なぜ……なぜ、自分以外の人々には迷いというものがないのだろう。
なぜ自分だけが木偶人形に……。

「答えて!」

「あ……あ……」

渚に、すべてを見抜かれたと思った。
明確な意志も主張もない、核のない、弱い自分のすべてを。

自我が崩壊しそうになる。
どうすれば逃げられるのだろう。
どうすれば存在を許され、人に愛されることができるのだろう。

竜也の顔が苦しげに歪む。

「た……たすける……から……。俺が……たすける……から……」

「だったら今すぐ助けてよ! 縄を解いてここから出してよ!」

渚の怒号にハッと顔を上げた竜也が、狼狽した挙動で入り口を振り返り、「しっ、兄さんに聞こえる!」と、素早くベッドに歩み寄って手で渚の口をふさいだ。

「お願い助けて! 今すぐ……」

身体が勝手に動いた。
もがく渚の顔に体重をかけて強引に黙らせ、丸めた布を口に押し込んだ。
その上から豆絞りで猿轡を噛ませる。

「うぅっ……ううぅっ……」

「待ってくれ……そのうちきっとチャンスを見つけるから……それまで大人しく耐えていてくれ!」

混乱していた。
自分はなぜ、「助ける」などと言ってしまったのか。
それは本心なのか……本当にそんなことができるのか……。

目を見開いて自分を睨む渚に背を向け、竜也はおぼつかない足取りでフラフラと牢を出た。
渚の発する恨みがましい唸り声が全身にからみついて、どこまでもついてくるようだった。


(続く)

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『生贄おさな妻〜収集家の奴隷〜』

発売中
出演:渚
収録時間:120分
品番:KNSD-03
メーカー:大洋図書
ジャンル:SM・緊縛・凌辱
レーベル:キネマ浪漫
定価:5,040円

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junichirou.jpg 芽撫純一郎 1960年和歌山県生まれ。プロポーラーとして活躍後、セミリタイアして現在は飲食店経営。趣味として、凌辱系エンターテインメントAVの鑑賞と批評、文章作品の創作を行なう。尊敬する人は一休宗純。
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08.10.17更新 | WEBスナイパー  >  官能小説