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『美味しんぼ (1)』

作=雁屋哲
画=花咲アキラ
発売=1984年11月30日
出版社=小学館
special issue for the summer vacation 2011
2011夏休み特別企画/特集「大人の学究へ向けて」 
エコな夏はやっぱりマンガ! 『美味しんぼ』の究極のたしなみ方
文=遠藤遊佐
 
今年の夏の特別企画はWEBスナイパーの豪華著者陣による、大人の研鑽に必要な名作・傑作のプレゼン祭り! 夏休みのまとまった時間に改めて、あるいはもう一度触れておきたい作品群をジャンル不問で紹介していただきます。第二弾はオナニー・マエストロ遠藤遊佐さんによる『美味しんぼ』の読み方レクチャー。100巻以上に及ぶ長い作品のポイントと魅力を、情熱の限り分かりやすく解説していきます!!
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いやあ、暑い。今年もまたバカみたいな猛暑ですねえ。
できることならグアムかハワイにでも行って派手な色のカクテルでも飲みたいけど余裕ないし、市民プールに行こうにも駅まで汗だくで歩く気力がない。花火大会も一人じゃなあ......。
そんなあなたに是非おすすめしたい夏休みのレジャーが『美味しんぼ』です。
1983年に『ビッグコミックスピリッツ』で連載開始。グルメブームに山岡士郎と海原雄山というワケあり親子の葛藤をからめたこの作品は、たぶん私がこれまでの人生で一番読み返したマンガ。
爆笑するような面白さではないけれどなぜかクセになり、トイレにでも置いといた日にゃ何回でも繰り返し読んでしまう種類の名作なのです(さらに言うなら、和服姿がまぶしい海原雄山は、高校時代からの私の定番オナペットでもあります)。
お金と時間があるなら、是非大人買いして全106巻一気読みをキメてほしいところ。とはいえ、「夏休み? そんなもんねえ! こちとら土日休むのが精一杯だよ!」って人もいるでしょう。
そんな方のために、今回は私の独断と偏見で「これだけは読んでおけ!」という『美味しんぼ』のおすすめ巻・おすすめエピソードをご紹介したいと思います。この機に『美味しんぼ』をたしなみたいという方は是非ご参考に......。


【『美味しんぼ』のすすめ その1】本当に美味しいのは15巻まで

思えば、私が『美味しんぼ』に出会ったのは花も恥じらう高校生の頃。近所の本屋で森山塔のエロマンガを買う際に、それだけをレジに持っていくのははばかられたのでダミーとして適当に買ったのが最初でした。確か、当時出たばかりの9巻。


『美味しんぼ (9)』

作=雁屋哲
画=花咲アキラ
発売=1987年3月30日
出版社=小学館
↑サブタイトルである「再会の丼」は、才能に溺れて身を持ち崩した若手落語家が、士郎の助けを借りて安くてうまい牛スジ肉の牛丼を作り、師匠からの信用を回復するというストーリー。美味しんぼ得意の、下町情緒溢れる人情話である。


これを読んでハマッて以来、四半世紀を『美味しんぼ』と共にしているわけですが、全部が面白いわけじゃない。
さっき「全107巻(以下続巻)を一気読みしてほしい」なんて適当なことを言いましたが、基本的に『美味しんぼ』の本当に美味しいところは15巻くらいまで。それ以降は徐々に説教くさくなり、実を言うと100巻以降は私もコミックスを買ったり買わなかったりになっています。
『美味しんぼ』を熟読しているとわかるのは、だいたい3つの時期に分かれているということ。
まず身近な食を通して人間模様を描いていた15巻までが第一期。
究極のメニュー対至高のメニューの対決が中心となる70巻あたりまでが第2期(途中47巻で山岡が栗田ゆう子と結婚するというビッグイベントがあるけれど、一期に比べるとウンチクが増え、数話もしくは一巻全体で一つの物語という形式が増えてくる)。
そして70巻あたりで東西新聞文化部に「日本全県味めぐり」という企画が持ち上がってからは、完全に情報うんちくマンガと化しています。セリフも各地の食文化の説明が多く、それこそ新聞の文化欄でも読んでいるような雰囲気......。
Wikipedeiaによると原作者の雁屋哲氏は1988年からオーストラリアに移住したらしいので、そのせいもあるのかも。
とにかく、まずは15巻までを読んでいただきたい。そして余裕があるなら47巻の結婚式まで読んで、それで終了でOK。あとはオマケといっても過言ではありません。

ちなみに私が個人的に好きなエピソードは、京極さん初登場の「平凡の非凡」(1巻)、ホームレスの辰さんがケチな石油会社社長をデパートの試食でもてなす「接待の妙」(3巻)、高い材料を使えば美味くなるわけじゃないというB級グルメの真髄を突いた「ハンバーガーの要素」(9巻)、アメリカ帰りの中年男が戦後に食べたトンカツの味を探す「トンカツ慕情」(11巻)あたりでしょうか。「いいかい学生さん、トンカツをいつでも食べられるくらいになりなよ。それが偉すぎもしない貧乏すぎもしない、ちょうどいいってことなんだ」というオヤジさんのセリフは、今も私の座右の銘。
かつお節を作る過程を観るためになぜか超能力者とタイムスリップする「日本のコンソメ」(6巻)なんかも、トンデモ話で面白いのでオススメ。


【『美味しんぼ』のすすめ その2】カラー表紙本は必ず読破すべし(できれば1巻から順番に)

↑我が家の本棚の一角を占める『美味しんぼ』。背表紙を眺めているだけで心がおちつきます。もはや精神安定剤。


上の写真を見てもらえるとわかるように、『美味しんぼ』のコミックスは金色の表紙なのに1巻〜4巻までだけが別の色。どうしてこうなっているのか知らないけれど、15巻まで読む時間さえないという人は、とりあえずこの4冊を。
初期の『美味しんぼ』は1話完結でどこを切っても面白いんですが、よりスムーズに美味しんぼワールドに入っていくには、山岡と栗田の出会いや主要な登場人物を把握しておいたほうがベター。
特に1巻の最初のほうはまだ絵柄やキャラが固まっておらず、山岡もゆう子も雄山もまるで別人なので要チェックです。


『美味しんぼ (1)』 作=雁屋哲 画=花咲アキラ (小学館、1984)7 頁より引用
↑動きがギャグマンガの栗田ゆう子。今とはえらい違いですな。


【『美味しんぼ』のすすめ その3】ときには社会問題も押さえておこう

個人的にはなんといっても人情話が好きなのだけれど、時事ネタなんかもしっかり織り込まれているのが美味しんぼ。
"美味しんぼ社会派シリーズ"を押さえておくと、新聞を滅多に読まない私でもなんとなくわかったような口がきけるから大変便利であります。
おすすめは、捕鯨問題にスポットをあてた「激闘鯨合戦」(13巻)、ドライビール黎明期に知ってるようで知らない疑問に答えた「ドライビールの秘密」(18巻)、米不足のときにタイ米の美味しい食べ方について描いた「タイ米の味」(49巻)など。
まあ他にもいろいろあるんですが(というか、後半はほぼこのパターン)、度が過ぎて説教になる場合も多いのが玉にきずだったりします。雁屋先生すみません。


【『美味しんぼ』のすすめ その4】究極の勝ち組女・栗田ゆう子に学ぶべし

↑栗田ゆう子がさまざまなファッションに身を包んだ誰得表紙の数々。くーっ!


『美味しんぼ』を読み進めていく中で忘れることのできないのが、山岡士郎と栗田ゆう子の恋のゆくえです。
なんといっても注目してほしいのは主人公である山岡ではなく、栗田ゆう子の一部の隙もないキャラ。
女子大を出て大手新聞社に就職。新進気鋭のカメラマンや会社社長に言い寄られるもののなぜか山岡一筋で、独身主義者だった山岡を「気がつけばそこにいる攻撃」で口説き落とし47巻でめでたく結婚。 
特技は妊娠。双子を出産して何年も経たないうちにもう一人身ごもるという早ワザをくりだし、激務の新聞社で働きながら易々3人のママになるというスーパーレディーっぷりを見せつけます。乳飲み子2人も抱えていったいいつ子作りしたのか気になるのは、私だけではないでしょう。
しかも誰もが恐れる海原雄山も、栗田にだけはなぜか優しいんですよ。キー!
一見癒し系のお嬢様、でも芯は強くていざとなると芋虫なんかのゲテモノも平気で食べちゃったりする、男の理想を絵に描いたようなタイプ。一生勝てねえよ......(ああ、マンガ相手に何を言っているんだ私は......)。
でも、男って結局こういう女が好きなんだよなあ。婚活中の女子は、栗田さんのファッションや言動を参考にしてみてはいかがでしょうか。


【『美味しんぼ』のすすめ その5】海原雄山の成熟した男の魅力に萌えるべし

『美味しんぼ (26)』

作=雁屋哲
画=花咲アキラ
発売=1990年7月30日
出版社=小学館
↑私が選ぶマイベスト雄山。


そして『美味しんぼ』最大の魅力といえば、やはりこの男。海原雄山!
希代の芸術家で一本筋の通った男。しかも初老で和服ときたらたまりません。これが萌えずにいられようか。いや無理、絶対無理!!
高校生の頃から私のオナペットの名をほしいままにしてきた彼ですが、最近(孫ができてから)は妙に丸くなってしまい、ちょっと残念だったりするわけです。
海原雄山の男臭さを味わうのであれば、やはりおすすめは前半。鴨の名店ドゥール・ダルジャンにいきなり「こっちのほうが旨い」とワサビ醤油を持ち込む「料理のルール」(3巻)の傍若無人っぷりや、「もてなしの心」(5巻)で山岡をぎゃふんと言わせてニヤつく顔の憎たらしさは、ジュンとくることうけあいです。ああ、抱かれたい......もっと威張って......。
雄山と今は亡き妻との芸術家夫婦ならではの愛を描いた「焙じ茶の心」(18巻)も、雄山フリークとしては見逃せないところです。


【『美味しんぼ』のすすめ その6】上級者にはドラマ版もおすすめ

まさかそんな人はいないでしょうが、もし106巻まで全部読破して「まだまだ読み足りない!」というのなら、ドラマ&映画版『美味しんぼ』を観賞するのもよいでしょう。

個人的におすすめなのは、1995年に放映された最初のドラマ版。山岡役の唐沢俊明の笑っていない目、栗田役・石田ゆり子のソツないお嬢様っぷりなど、キャスティングが絶妙。


『美味しんぼ』(VHS)

ASIN=B00005FSON
発売=1995年12月16日
販売元=フジテレビ
↑ちなみに我らが海原雄山役は先日亡くなった名優・原田芳雄。歴代の雄山の中でも私のイメージに最も近い荒々しいフェロモンを発しています。レンタルビデオ屋でVHSを見つけた人はラッキー。


映画版(1996年)のほうは、佐藤浩市&三國連太郎という実生活でも確執のあった親子が山岡・雄山を演じているものの、北王路魯山人を手本に雄山のキャラを作ってしまったとかで、原作とはちょっと違ったイメージになっています。

長々と書いてしまったけれど、とにかく本屋に行き『美味しんぼ』の1巻を手に取ってほしい。ブックオフなら100円です!
そしてとりあえず15巻まで読んだら、もうあなたは美味しんぼフリーク。
"黒い枝豆"をつまみに"ドライビール"を飲みながら、さあ、美味しんぼについて熱く語りましょう!!


文=遠藤遊佐

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遠藤遊佐(C)花津ハナヨ
(C)花津ハナヨ
遠藤遊佐 AVとオナニーをこよなく愛する三十路独身女子。一昨年までは職業欄に「ニート」と記入しておりましたが、政府が定めた規定値(16歳から34歳までの無職者)から外れてしまったため、しぶしぶフリーターとなる。AV好きが昂じて最近はAV誌でレビューなどもさせていただいております。好きなものはビールと甘いものと脂身。性感帯はデカ乳首。将来の夢は長生き。
遠藤遊佐ブログ=「エヴィサン。」
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