2013.02.03.Sun.at Tokyo Big Sight.
有明・東京ビッグサイト東5・6ホール
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プロ・アマを問わないマンガ作家・イラストレーターたちが、自主出版した本・作品を発表・販売する展示即売会=コミティア。そこは作家たちが自分の個性を自由に発揮できる場であり、訪問者にとっては未知の表現に出会えるかも知れない宝の島――。 去る2月3日に開催された「COMITIA103」の収穫物を、コミティアファンの伊丹直行さん、「兄萌えオタク」のなほるるさん、コミティア初体験の明美ゴモラさん、「ねとぽよ」に参加されている高橋さんの4人に紹介してもらいます。今回は前後編の前編です!!
□書名=葵神社の神様
□作者=上野キミコ
□サークル名=サブマリンサイドイッチ
前作、「白山羊と花の手紙」も好評だった(とても良かった)サブマリンサンドイッチ。
今回の新刊は「豊作祈願」が御利益の、地味な神社の神様のところに、女の子が「お母さんを生き返らせてください」とお願いをしにやってきて......というお話。
淡くて丸い印象を持つ絵柄と神様のふんわり加減がこれ以上なくマッチして、重いところがある話なのに、読後感は爽やかです。とても可愛い。 以前の漫画「アオイ神社花祭り」と、同じ神社がモチーフでの別のお話、とのことですので、気になった方はそちらも併せてお読みになるとさらにグッときます。お薦めです。
「アオイ神社花祭り」はwebで読む事が出来ます(伊丹直行) →http://www.h2.dion.ne.jp/~sms/comic17.html
□書名=たたかえ!地球防衛部 完全版
□作者=MADASS
□サークル名=ぐんにょり亭 □書名=ぐんにょり亭 同人誌制作顛末記
□作者=MADASS
□サークル名=ぐんにょり亭
[深刻な素材過多][まさかのフル]漫画作成ソフト「コミPo!」によるフルカラー同人誌。美少女JKと動物たちが、宇宙人からの"侵略"を防ぐ地球防衛部として活躍する。6話収録で約100ページの力作だ。まず、目を引くのはコミPo!が誇るキャラの可愛さ。画力はプロ並みが保証されているため、この点では安心して読むことができる。残るシナリオや構成力も、個々の能力は低くない。特に、誌面の半分近くを占める「完結編」では、伏線をきっちり回収しオチもつけている。ただし、センスが圧倒的に90年代以前で、コミPo!の絵柄と組み合わせた時、中途半端な印象を受けてしまう。諸々可愛いのは間違いないが、突き抜けていない。むしろ、同人誌製作からコミティア発表までを記した製作顛末記は、題材と登場キャラを絞っていたため、驚くほど読みやすくシンプルに面白かった。実話に基づいたエピソードのほうが漫画の力を発揮する予感。旅日記が刊行されているので、次はそちらを読んでみたい。(高橋史彦)
□書名=THE PERFECT SUNDAY
□作者=panpanya
□サークル名=panpanya
この本を手にとった時の表紙の印象から「暗い話なのかな」と思ったが、そんなことはなく、ゆったり物語は進む。ある日、主人公が「未だかつて体験したことのない完璧な日曜日」を味わうために、「笑点つけ機」(笑点の時間になるとTVが勝手に笑点を流す)や、「自動トースト焼き機」(起きて5分きっかりでパンが焼ける設計になっている)などを発明したり、日曜のために散歩のコースを下見したりするというゆるいお話。主人公の飼っている犬が母のように口うるさく、面倒見がいいので二人の関係は見ていてなんだかとても微笑ましい。
panpanya の背景への書き込みとゆるい線で描くゆるい人物たちのギャップに驚いた。
読んでいると何だか不思議な世界観に癒され、時にはくすりと笑ってしまう。人が死んだり、そういう大きな事件がおきる訳でもないがたまに考えさせられるような描写があったと思えば、腹を抱えて笑えるようなギャグが入ってくる。寝る前のちょっとした時間に読みたくなるような本だと思う。(なほるる)
□作品名=Comic じょ〜ん # 3,# 4
□著者名=さかぐちつばさ、スケラッコ
□サークル名=スケラッコ
個性的な絵柄と漫画の2人誌。
どちらも、エッセイのような軽やかな手触りの漫画なのですが、心地よい引っ掛り具合があって素敵です。センスのいい装丁とスッと読ませる異質な漫画。4号まで出ていますが、テイストは上昇しつつも安定していて、地力の強さを感じます。
また、全部読み終わった後に、巻末の「さいはつぼうししんぶん」を読むと、かゆいところに手の届くかわいさがあります。主にビールくん。いいですね、ビールくん。(伊丹直行)
□書名=ASSORTMENT OF MONSTERS
□作者=田口綺麗、匿名亜之人、茶渋
□サークル名=WORK7
こちらの作品は、表紙を見かけた時は「イラスト集かな?」と思ったのですが、中を開いてみれば商業誌では絶対に拝めないフェティッシュなテイストの成年向け同人誌でした。田口綺麗さん、匿名亜之人さん、茶渋さんの三者によるケモナーと言いますか、つまるところ動物を擬人化した女性らのエッチなオムニバスとなっております。登場するのは大蛇で怠惰な巨乳女性と子狐のロリッ娘ちゃん、そしてなんとタコ! どちらの作品も擬人化の元になった動物の特性を活かした異形のエロティシズムを醸し出しています。わたくしとしてはやはり冒頭の作品、田口綺麗氏によります巨乳の大蛇ちゃんに非常にそそられました。こういった極めてマニアックなフェチズムを楽しめるのはやはり同人誌ならではの良さですね。(明美ゴモラ)
□書名=よるはゆめのなか
□作者=カナ尾
[世界観良ゲームリンク][出鬱]複雑な家庭環境に育つ兄妹の物語。冒頭の1Pから独特の世界観が漂ってくる。先制パンチを喰らうと、あとはもう一直線。終わりまですぐに読んでしまった。父親のDVにより母親が精神にダメージを負ってしまい、親戚に預けられた兄妹はそこの家庭先で疎まれてしまう。「この子達と一緒にいると気分が滅入るのよ...」――事実、主人公(兄)と妹はリア充とは対極的な立ち位置で、端的に暗い。DVにより健全な成長が阻まれた未成年が殺人事件を犯すことが、刑事事件としては珍しくないように「これはダメなパターンだ」と直感的に察知できる。この構成力は見事。絵柄もストーリーと合致して、陰鬱な雰囲気を上手く表現している。ラストで気持ち一ミリ分だけ救われるのだが、心に残るのはダメージのほうが大きい。気分が弱ってる人には勧められず、元気ハツラツな人にオススメ。(高橋史彦)
□書名=ジオラマ 第四号
□作者=真造圭伍,西村ツチカ,ゴトウユキコ,ぱうひろ,error403,STAG,金子朝一,佐々木充彦,サヌキナオヤ,座二郎,笠辺哲,黒田硫黄,高野文子,スカート×見富拓哉,オノマトペ大
□サークル名=ジオラマブックス
どんどん豪華になっていくジオラマ!
存在は知っていたけど今までなぜ目をつけていなかったのか、自分でも仕方がないくらい豪華な執筆陣にびっくり
した。
真造圭伍の「ネコを飼い始めた」という日記漫画から始まり、次の佐々木充彦「ポニーテールララバイ」にてド肝
を抜かれる。買ってよかった~!と2 タイトル目にして思った。
中でも気になる内容だったのは、STAG の「デス山ヘル子」、サヌキナオヤ「明日、居なくなる」、スカート×見
富拓哉の「アポロ」の三つ。
「デス山ヘル子」は、「今日死ぬこと」を決断した女の子がダムに飛び下りにいく話。最後のダブルパンチなオチに
は笑った。
サヌキナオヤ「明日、居なくなる」は次の日引っ越してしまう主人公の元にその土地の友人と最後の夜ご飯を食べ
る話。「ああ、こんな感じだよなぁ」ってリアルな感覚だった。今までの思い出を友人と語り明かしたり、そんなことは一切なく主人公が明日にはいなくなってしまう切なさが胸を打つ。
スカート×見富拓哉「アポロ」はスカートのアポロという曲がDL でき、見富拓哉のイラストに歌詞がついている。
イラストと歌詞だけ見て想像を膨らませるのもよし、曲をDL して聴きながらイラストを見て、感慨にふけるのもまたよしと、豪華なものとなっている。(なほるる)
□書名=ねことおに
□作者=ハッピーエンドマニア
□サークル名=ひらさわ
すっかり失念していましたが、今回のコミティアは節分の日開催でしたね。 それにかけてか、ひらさわさんのこんな素敵な漫画がありました。寒い冬の夜、「上等の酒を買うと、鬼が出る道」を酒屋帰りにうっかり通ってしまった猫のポプラは......というあらすじ。登場人物(?)が愛らしく、まるで寒い夜に飲むナイトキャップのような、あたたかな読後感の短編です。
余談ではありますが、ひらさわさんの書き文字は、絵とも物語ともぴったり合っていて、たまらなく好きです。(伊丹直行)
□書名=みかにハラスメント みかにみかハラ・リメイク2013~みかにえっちじゃないセカイ~
□作者=水兵きき
□サークル名=ふなのりハウス
こちらのサークル「ふなのりはうす」さんは商業誌で少年向けコミックも連載していらっしゃる水兵ききさんのサークルです。そしてこの「みかにハラスメント」はなんとガンガンパワードで連載されていた作品の、本人によるエロ同人誌! 原作のある作品ですが、作者ご本人が書いているので二次創作ではない、ということでコミティアで頒布することができるのですね~。
さて内容のほうはと言いますと、ひょんなことから世界の常識が「服を着ているほうがエッチ」という普通とは正反対の価値観になってしまった世界で、みかちゃんだけが常識を持ったまま投げ込まれ「そんなはしたない格好は止めなさい!」とみんなから裸になることを強制されてしまうというスラプスティック・エロコメディです。そんな本編の恥ずかしがるみかちゃんもかわいいのですが、私が見て欲しいのは後半のおまけマンガ! いわゆる「if」ものなのですが、女の子が裸でいることが当たり前の世界だったら......というストーリーで展開されるのですが、やや家畜人ヤプーめいたシチュエーションがとってもエッチです。(明美ゴモラ)
□書名=ハンブレチヤ
□作者=高野雀
□サークル名=chapter22
[謎のクオリティ][ポエム会話]不思議な作品。近未来SF、廃墟モノ、日常系、セカイ系、BL......カテゴライズに迷うほど要素が多く、縦にめくって読むスタイルなのも珍しい。華麗な絵柄で読みやすいが、ストーリーは謎に満ちていて、何だかよく分からない。中央から僻地に配属された2人の青年。コートとカバンは同じで支給物があるようだ。任務先でトラブルに巻き込まれ、中央には見捨てられた。1人は状況を変えるべく遠くの管制塔に向かうことに。2人の会話のみで進行していき、生死に関わる事態なのにどこか淡々としている。もし映像化しても、無音シーンが多くなりそうだ。ちなみに巻末の作業用BGMと思われるリストに、きゃりーぱみゅぱみゅ・平沢進などがあってニヤッとした。「閉塞した世界」なのに息苦しさは感じないのは、根底に絶望がないからだろう。ズーンと落ちることなく、心地好いダウナー感を味わえた。(高橋史彦)
□書名=恐怖のまんが道(完全版)
□作者=コブ
□サークル名=樂がきち
漫画を描く・それを人に見てもらう、ということの葛藤、サークル参加の方には必ずあるであろうその苦悩を、痛さ辛さと笑いも込めて、これでもかとテンポ良く叩きつけてくる漫画。大変な労作です。
しかし驚くべきは、この78Pの本が「無料配布」。こんなに分厚く面白いのに、無料......この力作を無料で頂いて帰る訳にはいくまい、と思い、御本人が不在なのをいいことに、そっと500円玉を置いて立ち去りました。ささやかではありますが、是非次回も出て頂きたい、そっとそう願っております。女の子の絵が可愛くて好きです。(伊丹直行)
□書名=迂遠な方法
□作者=くまみね
□サークル名=くまみね牧場
フラフラとコミティア会場をさまよっていて、なんだか表紙に惹かれ立ち読みしたら私の面白いセンサーが反応したので購入。
ある日主人公の夢に妖狐が出てきて、「夢を叶えてやる」と言ってくる。主人公は「願いを増やしてくれ」と最初に願い、次の日から願いが大雑把に叶うようになる。妖狐の大雑把な願いの叶え方が大雑把すぎて、主人公が自分の状況に気づかずポストの前で「あ~誰か説明してくれよ」と願った瞬間、ポストがしゃべりはじめたり、「仕事したくねぇ~」と願った瞬間、仕事場が半壊したりと本当に大雑把な願いを叶える妖狐。果たして狙いはなんなのかと読み進めていくうちに最後にホロリとさせられるオチが待っている。シュールなギャグが面白くてすんなり読める。
普通の同人誌のサイズよりだいぶ小さいので、カバンに忍ばせられるのがまたいい! 電車の中や、仕事の休憩時間にサクっと読めていい気持ちになるぞ~!(なほるる)
□書名=ポストモダンのポリアネス vol.2 「ゆゆ式MANIAC(偏執狂)」
□作者=S治、鏡塵=狂塵、すぱんくtheハニー
□サークル名=ポストモダンのポリアネス
[作者は物狂いシリーズ][熱狂的なファン]芳文社より2008年から出版され、今春にアニメ放送が始まる人気四コマ漫画『ゆゆ式』(作:三上小又)。本著は、タイトル通り『ゆゆ式』について偏執狂的にこだわった評論本だ。はじめに作品説明があるとはいえ、いきなりキャラの登場コマ数が掲載される。『ゆゆ式』には3人のメインキャラがいるのだが、それ以外のサブ・モブキャラの話数ごとによる登場コマ数がまとめられているのだ。さらに、メインキャラのツッコミ回数から話の勢いを計測する「TP(ツッコミポイント)率」なる指数も登場する。謎のデータから、物語要素、演出論、寄稿文に至るまでどれも無駄に凝っている。アニメが開始されると、原作知名度が飛躍的に高まるとは、筆者も確信しているが、その時にこうした熱狂的ファンブックの存在が察知されるのかどうか。興味深く見守りたい。(高橋史彦)
(続く)
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