↑COMITIA89カタログ『ティアズマガジン』
コミティアは東京で年4回、大阪・名古屋・新潟でも年2回行われている同人誌即売会で、今回の参加サークル数は委託含めて2128。有名なコミックマーケットと大きく違う点は「二次創作不可」なこと。つまりオリジナルのマンガのみを発表する場である。会場には有名漫画編集部の出張持ち込みスペースが併設され、プロデビューを目指す人々で賑わっているが、かといって参加者全員がプロを目指しているわけではなく、創作それ自体を楽しんでいる人が多い。「同人誌って有名なアニメキャラを勝手に使ったエロパロでしょ」と考えている人には、ぜひコミティアでカルチャーショックを受けていただきたい。なお入場には『ティアズマガジン』というカタログが必要になる(完売時は入場フリー)。
コミティアという名前の「コミ」はもちろん漫画のことだけども、徐々に漫画以外、イラストでも小説でもCDでもゲームでも、場が許容する「創作」の範囲は広がってきている。産業だの経済規模だので語られる機会が増えてきた漫画の世界だが、今一度「創作」という原点を見つめ直すにはいいイベントだと思う。今回は半分仕事で足を運んだのだが、仕事用ではなく単に個人的趣味で購入したものの中からいくつかピックアップして紹介する。なお次回、11月のコミティア90は「pixivマーケット」との同時開催が決定している。
良識派『淫乱』
作る同人誌は特に良識のある内容ではない気がする創作サークル・良識派の新刊。1ページずつのショート・ショート集で、安定して面白い。彼らの線の質感に新しさを感じるのはなぜだろう。
ブラックエンド『松原赤字動物園』
犬と猫くらいしかいない赤字続きの動物園での、園長と動物たちの日常を描いた作品。淡々とした日常の中で起こる小さな出来事の描写が丁寧で面白い。普段は赤色バニラという名前で東方同人なども出しているサークル。
デスクトップラヴァーズ製作委員会『デスクトップ・ラヴァーズ』
パソコンで描かれた絵をデジ絵と呼び、そのデジ絵を描くための環境をどう整えるかをやさしく解説したもの。何から始めればいいのかわからない人にピッタリのチュートリアル。A〜Dまでランク別に価格設定あり。
suzuko『nems vol.00』
表紙の女の子が主人公のサイレント短編2本。かわいらしいがちょっとびっくりする話のオチがアクセントになっている。今回ベストかも。
MARU PRODUCTION『みせらに01』
最近はマンガ誌『fellows!』(エンターブレイン)でも活躍中の丸山薫の短編。コミケの新刊だがコミティアでも販売していた。夢の中から雲を持ち帰るお話で、夢の中のものだけカラー印刷になっており、物語にも関係してくる。
HTC communications『zatsu(((onn!!!』
女子高生×軽音楽部といえば『けいおん!』を連想するが、こちらはタイトルが示すとおり爆音ノイズを出す女子高生が活躍するお話で、音楽の原始的な楽しさを思いださせる物語展開。
GraphersRock『PowerBook』
こちらはデザインチームGraphersRockの作品集(コピー誌)。デジタル感とストリート感が両立するグラフィックの作り方が(いい)。Helvetica多め。
あとづけ『たまごかけごはん』
1個1000円の高級卵を買ってきた兄と、油断ならない妹の心理戦。卵かけご飯愛好家として衝動買いした作品で、内容も楽しめました。
さわだ『素晴らしいぜ世界』
何も言わず遊びにくる女の子と、何かに感動することなく過ごしている男の子が、雨の日を通じて関係が進展するまでを描いた短編小説。表紙イラストは今回のティアズマガジン表紙も担当しているあらゐけいいち。
たまむし『Tシャツとブレザー』
Tシャツに相手の名前を書いちゃう女の子、シャツの下にTシャツ着てる女の子の百合カップルを描いた短編2作収録。派手な展開は一切ないが何気ない描写に萌え。
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The text for reappraising a certain editor.
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コミティアは東京で年4回、大阪・名古屋・新潟でも年2回行われている同人誌即売会で、今回の参加サークル数は委託含めて2128。有名なコミックマーケットと大きく違う点は「二次創作不可」なこと。つまりオリジナルのマンガのみを発表する場である。会場には有名漫画編集部の出張持ち込みスペースが併設され、プロデビューを目指す人々で賑わっているが、かといって参加者全員がプロを目指しているわけではなく、創作それ自体を楽しんでいる人が多い。「同人誌って有名なアニメキャラを勝手に使ったエロパロでしょ」と考えている人には、ぜひコミティアでカルチャーショックを受けていただきたい。なお入場には『ティアズマガジン』というカタログが必要になる(完売時は入場フリー)。
コミティアという名前の「コミ」はもちろん漫画のことだけども、徐々に漫画以外、イラストでも小説でもCDでもゲームでも、場が許容する「創作」の範囲は広がってきている。産業だの経済規模だので語られる機会が増えてきた漫画の世界だが、今一度「創作」という原点を見つめ直すにはいいイベントだと思う。今回は半分仕事で足を運んだのだが、仕事用ではなく単に個人的趣味で購入したものの中からいくつかピックアップして紹介する。なお次回、11月のコミティア90は「pixivマーケット」との同時開催が決定している。
『淫乱』 (サークル名「良識派」) |
作る同人誌は特に良識のある内容ではない気がする創作サークル・良識派の新刊。1ページずつのショート・ショート集で、安定して面白い。彼らの線の質感に新しさを感じるのはなぜだろう。
『松原赤字動物園』 (サークル名「ブラックエンド」) |
犬と猫くらいしかいない赤字続きの動物園での、園長と動物たちの日常を描いた作品。淡々とした日常の中で起こる小さな出来事の描写が丁寧で面白い。普段は赤色バニラという名前で東方同人なども出しているサークル。
『デスクトップ・ラヴァーズ』 (サークル名「デスクトップラヴァーズ製作委員会」) |
パソコンで描かれた絵をデジ絵と呼び、そのデジ絵を描くための環境をどう整えるかをやさしく解説したもの。何から始めればいいのかわからない人にピッタリのチュートリアル。A〜Dまでランク別に価格設定あり。
『nems vol.00』 (サークル名「suzuko」) |
表紙の女の子が主人公のサイレント短編2本。かわいらしいがちょっとびっくりする話のオチがアクセントになっている。今回ベストかも。
『みせらに01』 (サークル名「MARU PRODUCTION」) |
最近はマンガ誌『fellows!』(エンターブレイン)でも活躍中の丸山薫の短編。コミケの新刊だがコミティアでも販売していた。夢の中から雲を持ち帰るお話で、夢の中のものだけカラー印刷になっており、物語にも関係してくる。
『zatsu(((onn!!!』 (サークル名「HTC communications」) |
女子高生×軽音楽部といえば『けいおん!』を連想するが、こちらはタイトルが示すとおり爆音ノイズを出す女子高生が活躍するお話で、音楽の原始的な楽しさを思いださせる物語展開。
『PowerBook』 (サークル名「GraphersRock」) |
こちらはデザインチームGraphersRockの作品集(コピー誌)。デジタル感とストリート感が両立するグラフィックの作り方が(いい)。Helvetica多め。
『たまごかけごはん』 (サークル名「あとづけ」) |
1個1000円の高級卵を買ってきた兄と、油断ならない妹の心理戦。卵かけご飯愛好家として衝動買いした作品で、内容も楽しめました。
『素晴らしいぜ世界』 (サークル名「さわだ」) |
何も言わず遊びにくる女の子と、何かに感動することなく過ごしている男の子が、雨の日を通じて関係が進展するまでを描いた短編小説。表紙イラストは今回のティアズマガジン表紙も担当しているあらゐけいいち。
『Tシャツとブレザー』 (サークル名「たまむし」) |
Tシャツに相手の名前を書いちゃう女の子、シャツの下にTシャツ着てる女の子の百合カップルを描いた短編2作収録。派手な展開は一切ないが何気ない描写に萌え。
文=ばるぼら
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ばるぼら ネッ
トワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのイ
ンターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミ
ニコミを制作中。
「www.jarchive.org」 http://www.jarchive.org/ |