2013.02.03.Sun.at Tokyo Big Sight.
有明・東京ビッグサイト東5・6ホール
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プロ・アマを問わないマンガ作家・イラストレーターたちが、自主出版した本・作品を発表・販売する展示即売会=コミティア。そこは作家たちが自分の個性を自由に発揮できる場であり、訪問者にとっては未知の表現に出会えるかも知れない宝の島――。 去る2月3日に開催された「COMITIA103」の収穫物を、コミティアファンの伊丹直行さん、「兄萌えオタク」のなほるるさん、コミティア初体験の明美ゴモラさん、「ねとぽよ」に参加されている高橋さんの4人に紹介してもらいます。後編です!!
□書名=ボディー・ランゲージ・ソング in インド
□作者=藤本正二
□サークル名=歴史資料館
[才能の有効活用][ポロリはないよ]前作「ボディー・ランゲージ・ソング」が抜群に良く新作を楽しみにしていた。今作はバラナシ(インド)とバンコク(タイ)の二本立て。旅行記色を強めたというバラナシ編は、これまでのボディー・ランゲージが披露されない。なぜなら、インドの観光地は日本語が溢れていて必要ないから。かわりに旅先で出会った日本人女性と、現地の風景が登場する。この女の子がとても可愛くて高ポイント。鳥嶋和彦が鳥山明にしたように「少女を主人公にやってみよう」と言いたくなってしまう。多分、本当に成功します。閑話休題。そして、女の子と一緒にバラナシの火葬場を訪れるのだけど、ここが本作の圧巻。"焼かれる遺体のボディー・ランゲージ"に触れるシーンは素晴らしかった。続くバンコク編は、今までのコメディタッチに戻り、いささかオーバーアクション気味で小気味好い。続編がとても楽しみなシリーズ。(高橋史彦)
□書名=パンツ本
□作者=はちみつ,琴葉とこ,desu,ハヅキ,だだやま,えんちゃん,ごま,白四,めぐり
□サークル名=おぱんつおいしい
パンツをテーマにしたイラスト本。斬新! 今までありそうでなかった。様々な人たちがパンツについてのイラストが載っていたり、漫画が載っている。dasuのとってもシュールな漫画から始まり、「メンヘラちゃん」の作者である琴葉とこの漫画も載っている。その人それぞれのパンツについてのこだわりがひしひしと読んでていて伝わる。中でもお気にいりのイラストはめぐりさんのイラスト。上はしっかり防寒してるのに、下はカボチャパンツなのね......好きだ!!!! しまぱん、ひもぱん、なんでもござれ。
読んでいると、パンツには秘められた力があるように思えてくる。
テーマが「パンツ」なのでどのページもパンツが見れて素晴らしい。
いやあ、エロカワイイってこういうことを言うんですね!(なほるる)
□書名=SCOPE
□作者=まおいつか
□サークル名=CLUB NAKAYOSHI
冴えない見た目のゆかりさん、実は小さい頃からこっそりと地球の平和を守っているのですが、その事実をとっても可愛らしいアカリハカセに見付かってしまって......というお話。出会って8年、友達になって8年。お互い自分にないものに憧れ、拙いながらも大切に思い合う姿がとても可愛い。絵柄のキュートさもさることながら、2人の素直な優しい気持ちに胸キュンにさせられます。
「ふくらまないチューインガムみたいな毎日」がお互いの存在で輝きだす、ガールミーツガールの素敵な物語。(伊丹直行)
□書名=3組学級名ぼ
□作者=みなすきぽぷり
□サークル名=てっちゃんハト
こちらの本は、成年向け商業コミックでも活躍されているみなすきぽぷりさんの本。と言っても、みなすきぽぷりさんだと気づいて手に取ったわけではなく、やはりこの表紙です。見開きで掲載させていただいたのですが、この本が、表表紙を向けたタワーと裏表紙を向けたタワーの二列で展開されていて思わず手に取らざるを得ませんでした。花嫁衣裳(?)のツリ目幼女、かわいやらしいですね~。内容はタイトル通り、「3組」に所属する女の子たちのエッチなセリフ付きイラスト集。色とりどりの女の子たちの私服のイラスト、簡単なプロフィールと一緒に女の子たちの痴態がフルカラーで展開されていて、とても見応えのある一冊になっています! かわいらしい私服のイラストが一緒に載っているところがイチオシポイントですね。(明美ゴモラ)
□書名=途中下車
□作者=くろ谷はるむ
□サークル名=くろ谷はるむ
ある日、駅で電車に乗ろうと急いでいた女子高生とおばあちゃんがぶつかり、二人は一緒に電車を待つ時間に話をしているうち、お互いの趣味や気が合うことが発覚し、女子高生は学校をサボり、おばあちゃんとカラオケに行ったり二人でショッピングに行ったりする。年の差がある二人が仲睦まじくしてるところを見ると、とてもハートフルな気持ちになる。やがて二人はお互いの心に秘めている思いを話し始める。自分なりに一生懸命真面目に生きていきたつもりで満足なはずなのに、何かとても大切なものをわすれてきてしまったのかもしれないと話すおばあちゃん。女子高生は、「私は、おばあちゃんみたいな素敵な大人になりたい」と告げる。自分の決めた人生に後悔なんてないはずなのに、なぜか悩んでしまう。だけどその人生をみて誰かが「いいなぁ」と一言でも言ってくれるならそれだけでもう、十分な気持ちになる。そんなことを感じた。少しSFちっくな、心温かくなるお話。
とても前向きになれる本だと思います。(なほるる)
□書名=サクセスストーリー
□作者=今井栄一
□サークル名=いまい漫画会社
いまい漫画株式会社の新作、今回もかっ飛ばしていて最高。
既刊では、野犬漫画家、トマンスランド、コンセプトカー、等の一目で分かる強烈なキャラクターが続いていましたが、今回は「ラーメンチェーンの社長」。いまいち押しが弱そうな......という不安をなぎ倒す予測不能な展開。だっていきなり「以前はプロ野球選手」ですよ。色々あって、確かにそれは「サクセスストーリー」かも知れないけれど......と、納得していいのか悪いのか、悩みつつも笑ってしまう。いつものドライでブラックな嗤いに満ちていて最高です。(伊丹直行)
□書名=富士山のぼりました。
□作者=新盤
□サークル名=もにもに団。
[プロの犯行][お前は富士山だ]99.9%実話という登山エピソード。Twitterやpixivで公開していたものを1冊にまとめている。作者は10年前に富士登頂を一度経験しており、そこでの残念エピソードの数々がまず面白い。コンロはあるのにヤカンがなく、防寒を疎かにしたせいで死にかけたことなど、のっけから大笑いしてしまった。続くリベンジ戦では、登れそう/登れなさそうな友人2人と挑むのだが、「のぼれないさん」がこれまた良いキャラ。トンでる存在が1人いると物語はぐっと締まるもので、登頂後の感想「ただただつらかった」「達成感とか感動とか全てより疲労感が超越している...」は本当に台無しでステキだった。全体的にテンポが良く、主人公の百面相も可愛い。タイミング的に「ヤマノススメ」と比べたくなってしまうが、確実に同等以上の面白さを備えている。(高橋史彦)
□書名=DEPARTURE
□作者=詠伊ユータ
□サークル名=PARTYGRAPH
イラスト集。「この本は私の2012 年のまとめとなると同時に、作家活動の出発地点になります。今までの絵において固執していた考えから逸脱し、新しい事に挑戦していきたい。なのでそういった意味を込めて、DEPARTURE とつけました」と最初のほうに説明書きとして書いてあり、感動した。
普通イラスト集というのはドーン!とイラストの次にイラスト、となにも説明のないものと思っていたが、作者の心情が書いてあるのはいいものだなと思った。
一番後ろのページにも一枚一枚のイラストの説明が丁寧にされている。
そして肝心のイラストはとてもいい。どういいかというと、ガーリーかつストリート色の強いイラストが何枚か載っているが、詠伊ユータの描く女の子の「可愛さ」には不思議さが綺麗に隠れている。
「可愛いのだけど怖い」とか「可愛いんだけどよくわからない」とかそういうものが描かれているのに何故かその「不思議さ」を感じさせない。不穏さがない。私が特に気に入ったイラストは「トーキョー革命エクリプス」です。おかっぱの和装の女の子ふたりがトーキョータワーの両横にいて二人共トーキョータワーのてっぺんを指差しているという絵。不思議な絵だけどタイトルの「トーキョー革命エクリプス」という題を見るとしっくりくる。東京タワーと和装な女の子が並ぶだけでこんなに「東京」っぽいなんて......と感動してしまった。(なほるる)
□書名=花氷の終わり
□作者=小野佐知子
□サークル名=すみっこのねこ
[描いてみた][今の僕には理解できない]丁寧に描かれた創作本。台詞の文字も手描きで、ペン1本で作り上げていることが伺える。内容は3回精読したが、何が起こっているのか理解できなかった。ジョジョでいうポルナレフ体験である。「あ...ありのまま 今 起こった事を話すぜ!」――筋の通った解釈ができず、断片的に確認することが精一杯なことを指す。小学生の頃、ディズニー映画『ふしぎの国のアリス』を観た時もそうだった。メルヘンチックな物語は現在でもやや苦手である。しかし、1つだけハッキリと感じたのは、作者の並々ならぬ創作意欲だ。作品を通じて情熱だけは確実に伝わってきた。そして、改めて「他者の見ている光景は自分と違う」ことを確認でき、想像力を鍛える良いトレーニングになった。(高橋史彦)
□書名=妄画集ぞろり
□作者=堀骨砕三
□サークル名=日本宇宙旅行協会
見かけた時にギョッとしたのですが、こちらのサークル「日本宇宙旅行協会」さん、知っている人間からすれば見間違えようのない、知る人ぞ知るエロ漫画家・堀骨砕三さんのサークルなんです。恥ずかしながら商業誌での活躍しか知らなかったのでまさかこんなところでお目にかかれるとは思っていませんでした。堀骨砕三さんは、グロテスクな作風と言ってしまうと非常に誤解を招くのですが......けれどもグロテスクとしか表現しようのない世界観でとてもかわいらしい女の子たちのセックスを、なぜだかほんわかとした読後感で表現される、まさしく他に類のない作家さんなんです。
こちらの「妄画集ぞろり」はそんな堀骨先生のラフ画集となっています。堀骨先生の漫画で活躍していたキャラクターや未登場のキャラクターの設定画や、オクラ入りになった漫画のネーム、さらには怪獣のイラストや、アニメの二次創作イラストなどなど......ファンとしてはぜひとも持っておきたい一冊になっています。
堀骨先生の商業単行本はなかなか入手が難しくなっておりますので、ご存知のかたも未体験の方も、ぜひとも一冊お手にとって見てはいかがでしょうか。本当にオススメの作家さんですよ。(明美ゴモラ)
□書名=シュレディンガーの猫と金魚
□作者=藤村隆之
□サークル名=マレーバクとコアリクイ
[ぬこぬこ漫画][スルメ漫画]哲学の要素が散りばめられた佳作。有名な思考実験を引用したタイトルから明らかなように、本作は猫と金魚の物語だ。偶然出会った2匹が、後ろ向きに歩く犬(dogは逆から読むとgod)に願いを叶えてもらい人間になり、一緒に街を散歩してたい焼きを食べ、海へ行こうとする。それは猫が望んだことかと思いきや、実は金魚の願いだったことが明らかになると、ストーリーはダイナミックに動き出す。ラスト10ページには、彼方の時間を圧縮させることに成功している。モチーフとして登場するカプレカ数「6174」も、本編を一読した者にある解釈を想起させる。計算を続けると最後は「無為な死」にたどり着くが、ゾロメは「6174」を回避できる。名前のない猫に、金魚がゾロメと名付けるシーンは感動的だった。(高橋史彦)
□書名=インタールード!
□作者=ふかやいづみ
□サークル名=teitaraku
今回の新刊ではなく、コミティア100合わせの本ですが、素晴らしいので紹介させて下さい。
東京でようやくメジャーデビューが決まりそうになった和音、しかし求められていたのは「音楽ではなくルックス」......割り切れない気持ちのまま、お盆に帰省すると、かつての同級生達が「町おこしのためのジャ『グ』バンド」を結成していて......。というあらすじ。
音楽でやっていこうとして悩む和音と、音楽をただ楽しんでやっている関根バンド、青春ぽい熱さのある素敵なお話。画面の書き込み具合が、個人的にツボです。
当日無料配布されていた「鉛筆と消しゴムの話.」も大変よかったので、機会があれば是非御覧下さい。(伊丹直行)
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