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2011夏休み特別企画/特集「大人の学究へ向けて」 
夏の短夜に観る「ヒーマニストムービー!」大全 文=ターHELL穴トミヤ
今年の夏の特別企画はWEBスナイパーの豪華著者陣による、大人の研鑽に必要な名作・傑作のプレゼン祭り! 夏休みのまとまった時間に改めて、あるいはもう一度触れておきたい作品群をジャンル不問で紹介していただきます。第五弾は鋭い映画レビューでおなじみのターHELL穴トミヤさんによる特選「ヒーマニストムービー!」。そもそもヒーマニストっていったい……という私やあなたへ、真夏の短夜によりぬきの六作品をどうぞ。
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毎日ぶらぶらしているとんでもない馬鹿野郎、それがヒーマニストです。そんなヒーマニストが出てくる映画を観て楽しんじゃおう!というのが、この企画。映画に出てくるヒーマニストは眺めているだけで楽しい、幸せな気分になる。それはなぜかといえば、そりゃ変な奴がいればいるほど、社会の面積が広がるからじゃないでしょうか。
ヒーマニストは存在自体が反社会的。でも世の中が社会だけだったら狭すぎる! そんな中、体を張って社会の許容度の限界に挑戦し続けている人間、それがヒーマニストなのです。せっかくの夏休み、天体観測をして「うわー、宇宙って広いんだ…」と感動した後は、ヒーマニストを鑑賞して「うわー、この世も広いんだ」って思えたら、なんて素晴らしいことでしょうか。
夏の夜は短い。けどここに紹介した映画も全部短い(90分くらい)!というわけでこの夏休みに観るのにピッタリ、ヒーマニスト達のヒーマニティー溢れる名作をいくつか紹介したいと思います。


『オレンジ・カウンティ』

『オレンジ・カウンティ』

監督:ジェイク・カスダン
発売:2007年9月21日
販売元:パラマウント ジャパン


ヒーマニストを演じさせたら右に出る物はいない! 最初に出て来るのはなんといってもジャック・ブラック。ヒーマニストの反社会性を「常に眼が爛々」「独自の価値体系(主にヘビメタ)を常に100%確信」というカルト的勢いでもって、180度転換。もしかしてこいつがこそが正しいのかもしれない?と世界中のボンクラにヒーマニティーを着々と布教しているマスター・オブ・ヒーマニストです。
『オレンジ・カウンティ』では、そんな彼がヤク中の兄貴を好演! 主人公はどんな奴だったか思い出せませんが、この映画でジャック・ブラックに見せられた不要なアクションの数々は頭から離れません。主人公が頑張れば頑張る程、もちろん兄貴もバリバリ手助け! 当然結果は大迷惑!という展開で、その度にジャック・ブラックのちょっとした無駄なアクションが炸裂します。
ただのヤク中である彼が憎めないのは、やはり何だかんだで親切だというところにつきるでしょう。ヒーマニストは時間が有り余っているため、付き合いが良いのです。弟に助けが必要なら、すぐに行動開始! 1日でも2日でも流れに身を任せてつき合ってくれます(結果建物が燃えたりしますが)。「明日は仕事だから、じゃあ週末にでも…」なんてことは言わない、それがヒーマニティなのです。


『スクール・オブ・ロック』



毛布にくるまり登場、一緒に住む友達の彼女に「あいつ追い出してよ!」と言われている冒頭からまさに、ヒーマニティー溢れるこの映画。ロック教のカルト信者、ジャック・ブラックがニセ教師として名門私立学校に赴任するというストーリーはそこまで意外じゃないし、「ロックをまるで歴史のように教えちゃおう!」という企画はまあ、いかにも昔ロック好きだったおっさんの考えそうなことです。しかし、この映画が中途半端じゃないのはそこに本当にロックの神髄が映ってるからなんだよ! ジャック・ブラックが次々と小学生に「腹が立っていることはないか?」と聞いていくシーン、そして腹が立つことを次々とその場で歌詞にして歌っていくシーン! それを繋げていくだけで、そこに本物のロックが立ち上がってくる! そして全員で「あっち行け! あっち行け!」と連呼する内に沸き上がってくるなぞの興奮! オーマイゴッシュ! イッツこれこそロックンロールじゃねえか!と全くロックンロールに興味がなくても熱くならずにはいられない、素晴らしい映画なのです。


『END OF THE CENTURY』

『END OF THE CENTURY<初回限定版>』

監督:マイケル・グラマグリア,ジム・フィールズ
発売:2005年6月20日

販売元:キングレコード


ヒーマニストムービーはフィクションだけじゃない! ラモーンズの『エンド・オブ・ザ・センチュリー』を観ていて驚いたのは、超イケてて、クールな伝説のバンド3人組、そんな彼らもまたヒーマニストだった!という衝撃の過去がそこで明かされていたからです。
彼らの青春時代をいろどるズッコケ3人組なんか目じゃないエピソードの数々には、思わず涙がこぼれ落ちます。強迫神経症のジョーイは、医者に「一生社会の役には立たない」と言われ、大学に進学したジョニーは、さよならパーティーで送り出された1週間後に退学して帰ってくる。証言者として出てくる「ジョニーの昔の友達」も、見たこともない程のヒーマニティーに溢れていて、クイーンズ地区自体がヒーマニティー溢れた場所なのでしょうか。ハイライトは高校卒業アルバムに載っているジョニーの顔、これぞヒーマニストのリアルフェイスです!
そんな彼らはRAMONESになり、超ハードワーカーになって世界中を巡った訳ですが、その歌詞はと言えばまさにヒーマニティ溢れるものばかり。RAMONESはヒーマニストだった頃の「街をブラブラ感」を真空パック、全世界に広めたヒーマニズム宣教師だったのです。


『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』

『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』

監督:ニルス・ミュラー
発売:2006年1月27日
販売元:アートポート


自らの人生をかけて社会の限界を試すヒーマニスト、その結末はハッピー・エンドだけじゃない。この映画のショーン・ペンは「常に眼がオドオド」そして「価値体系は周りからの押しつけ」、そんな彼が次々と自分の居場所を失っていき、ヒーマニストになったあと「独自の価値を発見」する本作の結末は最悪です。
ジャック・ブラックは楽器が弾ける! しかし何もできないショーン・ペンに残された最後の表現は犯罪でした。ヒーマニストは楽しいだけじゃない。ヒマの暗黒面に堕ちてしまった、ショーン・ペンの恐ろしくも悲しい映画を観て「ヒーマニズム」とは何か、沈思黙考してみるのも良いかもしれません。


『俺たちステップ・ブラザーズ -義兄弟-』



無職アラフォーのパラサイト同士が、その親同士の再婚によってなんと義兄弟になってしまう。幼稚にデフォルメされた2人のおっさんは、観ていてもはや半分ホラーなのですが、しかしこの映画は何よりエンディングが良い! ただ、やはりヒーマニストとしては積極的に外に出て欲しかったし、ヒーマニズムをもっと他人の為に積極的にふりまいて欲しかった(たとえ相手にとって迷惑になろうとも)。しかしエンディングが良いからゆるす! 義兄弟が歌う曲が良すぎて、聴いている人間が皆自分の一番大事なことを思い出してしまうフラッシュバックシーン。それを観ながら、きっとあなたの頬にも熱い涙が輝いているはずです。


『SLACKER』

『Slacker』

監督:リチャード・リンクレイター
発売:2004年9月14日
発売元:Cinema Club


『スクール・オブ・ロック』の監督であり、『ビフォア・サンセット』『スキャナー・ダークリー』なども撮っているリチャード・リンクレイター。彼のデビュー作はヒーマニスト達がわんさか出てくる群像劇でした。しかしこの映画、日本では未公開。DVD化もビデオ化もされておらず、英後版で観るしかありません。Youtubeにどこかの映画会社によって全編アップロードされているので、英語が分かる人はそこで観ても良いでしょう!(僕は分からないので英語字幕版DVDを買って観ました!)。
映画はテキサス州オースチンで撮影され、出て来るのは、ほんとにいつも地元でブラブラしている奴も含めたヒーマニストばかり。彼らが独自の人生哲学を語り続け、カメラの前には次々と新しい登場人物が現われる。いわば実写版『ウェイキング・ライフ』みたいな映画なのですが、あちらはアニメだったのもあり画面がソフィスティケートされていたのに対し、実写でそのまま出てくる本作はとにかく小汚い! リアルヒーマニストは小汚い!
この映画をきっかけに「やっぱり、ヒーマニストにはあまり近づかないようにしよう」と思いを新たにするか、それとも「やっぱりヒーマニスト最高!」となるのか。自分を見極め、夏休み後の日常を占うための、ヒーマニスト映画の総仕上げにいいかもしれません。

それでは、皆さんよい夏休みを!


文=ターHELL穴トミヤ

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ターHELL 穴トミヤ  ライター。マイノリティー・リポーター。ヒーマニスト。PARTYでPARTY中に新聞を出してしまう「フロアー新聞」編集部を主催(1人)。他にミニコミ「気刊 ソーサー」を制作しつつヒーマニティー溢れる毎日を送っている。 http://sites.google.com/site/tahellanatomiya/
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