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TM NETWORK デビュー30周年記念映像作品 伝説のライブシーン満載!!
1984年のデビュー以来、TM NETWORKがミュージック・シーンに与えた衝撃は計り知れない。彼らが行なった数々のライブ、コンサートツアーは、日本音楽史上の伝説として、今も多くのファンに語り継がれている――。TM NETWORK30周年アニバーサリーを記念して、ソニー・ミュージックに残された1984年から94年にかけてのEpic Sony(現EPIC Records Japan)時代をはじめとする膨大なライブ映像を集めたオリジナルムービー『TM NETWORK THE MOVIE 1984~ 30th ANNIVERSARY』が公開に。熱いTMファンであるネットワーカー・ばるぼら氏と共に、その特別な映画とTM NETWORKの30年をダラダラと振り返ります。今回が後編です。
ばるぼら(以下「ば」)木根さんがパントマイムに挑戦したのがこの前後でしたっけ?
編集部(以下「編」)そうですね、この時はもうかなり。このライヴ映像で、木根さんが宙吊りになって出てくるんですよ。
ば そうそう!
編 あそこ笑っちゃいました(笑)。また衣装がテランテランで......。
ば あのSF感に時代を感じるというか、当時見た時から時代を感じた気がする(笑)。何時代かわからないけど(笑)。いまAKB48のステージ衣装やってるアトリエヒノデのデザイン。
編 この時TM NETWORKのみなさんはGaball screenというバンドのメンバーという設定。
ば 最近出た『CAROLの意味』の小説にもその名前が出てきました。
編 TM NETWORKの3人がGaball screenであれば、なんとサポートメンバーの人にも役があてがわれていて、それが悪役なんです。そして今回の「CAROL組曲」の中でギターの松本さんが悪役っぷりを晒すというシーンが入っています。
ば どんなシーンでしたっけ?
編 ギターを抱えて階段から下りてくるんです。そして「Final Fighting」という曲の最中にちょっと殺陣みたいなことをやってる貴重なカットが入ってますので、是非観ていただきたいです。
ば あのステージの怪物みたいなのもよく作ったな......という不思議な頑張りを感じました。
編 目玉大きいやつですよね(笑)。今見ると言っては悪いんですが、ちゃっちい感じ。
ば 今だったらもっと違うことができただろうと思うんですけど、ギーガーの二次創作というか、「ネクロマンサー」とかのファミコンっぽいですよね。そういう、当時の二次元創作物の影響もちょっとだけあるのかなと思います。
編 僕は導入シーンをはじめて見たんですけど、さっきのパニーラさん演じるキャロルミューダグラスちゃんのイギリスのアンティークな部屋にレーザーディスクだけちょこんとあるみたいな、そこに『CAROL』のLPサイズのジャケットを持って、『CAROL』を掛けると映像が浮かび、ザーッとそこから闇の世界に引きずり込まれるイントロでしたね。
ば あの古めかしい部屋に似つかわしくない......。
編 そうそう(笑)。という〈CAROL〉の一部始終が......。
ば 映画の中では妙に〈CAROL〉成分多かったですよね。
編 そしてこの「CAROL組曲」は「In The Forest」で終わるんですが、そこから「JUST ONE VICTORY」という曲に繋がります。なんですが、その前にちょこっとだけ「Self Control」が流れます。
ば さっき言ってたヤツですね。それってどういう意味があるんですか?
編 これは『CAROL』のコンサートツアーに起因してまして、このコンサートは3部仕立てになっているんです。
ば ふむふむ。
編 まず1部に普通のライヴが始まって、2部の真ん中から『CAROL』のシアトリカルな演出があり、そして3部はまたライヴを聞いてねって構成なんですが、1部が終わって2部の『CAROL』に入る時にですね、『CAROL』の物語では世界から音楽が奪われていくと。キャロルちゃんはそれを止めるために闇の世界に旅立つんです。そして「Self Control」を演奏している最中に曲が奪われて音が失われていくという演出が、1部であるわけなんですよ!
ば そうなんだ!
編 「Self Control」でフェードアウトしたので「Self Control」から音が戻ってきて「JUST ONE VICTORY」につながるという構成なんですね。そっちは映像で再現されていないので非常にわかりにくい。
ば なるほど。
編 当時のセットリストでも「Self Control」の後に『CAROL』の楽曲になっています。ちなみに先ほどちょっと触れましたが、実はCD版とLP版で『CAROL』は曲順が違うという事も一つの売りになってましたよね。
ば そうですね、CAROL関係の曲だけが集まっている一枚とそれ以外の一枚。
■小室哲哉とモーツァルト
編 「CAROL組曲」が終わると、その後はじけるように「BE TOGETHER」が始まります。
ば いやあ、安心しますよね......。
編 はい(笑)。これは『humansystem』というアルバムに収録されているんですが......。
ば そういえば最近、小室さんとピエール中野さんの対談記事がウェブに公開されていましたが(http://www.sigure.jp/special0114/bestoftornado/interview2/)、「BE TOGETHER」の頭の『B』はBOOWYの「B・BLUE」を意識したという話をしてました。
編 え!
ば TMは結構BOOWYを意識していたみたいで、こういうエイト・ビートな感じで、曲名も似せていくという、ライバル意識を感じます。
編 なるほど。
ば この曲は鈴木亜美がカヴァーしましたけども、やっぱり原曲には敵わなかったなと思ったかな。
編 ですね。
ば 『humansystem』のアルバム自体は結構好きです。木根さんも一番好きかもと言っていたアルバムですね。
編 僕はこのアルバムから、リリースとオンタイムで体験することになりました。
ば ワタシは『Gift for Fanks』だったな。といっても人から借りたんですけど。
編 『Gift for Fanks』がこの前にありますね。「GET WILD」が初めて収録された、ベスト的なアルバム。そしてこの映画では「BE TOGETHER」の後に『humansystem』の表題曲に入ります。
ば この「humansystem」はイントロに「トルコ行進曲」を引用していて......。そういう古典的なクラシックを引用する曲の作り方が、なんとなく山下達郎の「クリスマス・イブ」とかああいうのを意識したのかなと昔は思っていたんですが、よく考えたらプログレやヘヴィメタルだとよくある手法でしたね。
この後もTRFの「WORLD GROOVE」という曲でホルストの「木星」という有名なクラシックの曲を引用していていたりします。ちなみにその「木星」という曲はたまが「さよなら人類」でも引用しているんですよ。だからその「木星」という曲を元にたまは「さよなら人類」を作り、一方で小室哲哉が「WORLD GROOVE」を作るという。聴き比べるといいかもしれません(笑)。
編 おお、面白い話ですね~。「humansystem」のトルコ行進曲ですが、この4年後に小室哲哉は『マドモアゼル・モーツァルト』という舞台の劇伴を手がけて、モーツァルトを引用しまくりのアルバムを制作することになります。
ば あれは好きでした。シングル曲と「Mozart In The House」はよく聴いたな。
編 大変素晴らしいですよね。「永遠と名づけてデイドリーム」、名曲です。
■シンクラヴィア最高!
編 『CAROL』がオリジナルアルバムとして発売されたのが1988年12月です。そのあとに『DRESS』という海外の有名なプロデューサーを迎えてREMIXをお願いしたアルバムが1989年にあります。そして『RHYTHM RED』はさらにその1年先で、TM NETWORKからすると2年ぶりのアルバムということになります。
ば 『DRESS』の前後にユーロビートにいく道もあったと思うんですが、TM NETWORKではいかなかったんですよね。
編 イメージとしてダンス!ダンス!ってあるじゃないですか、TMって。
ば そうそう。だけどTM本体では意外とやってなくて、『DRESS』の中のリミックスにはあったかもしれないけど......というレベル。
編 そうですね(笑)。この『RHYTHM RED』が1990年の10月25日リリースでシンクラヴィアを利用しています。海外勢が手がけた『DRESS』のリリースが前年1989年の5月。その後小室哲哉自らのソロ・アルバム『Digitalian is eating breakfast』が1989年12月にリリースでこちらもシンクラヴィアを利用していますね。
ば 『DRESS』でリミックスを依頼した中にクリストファー・カレルがいるんですけど、この人はマイケル・ジャクソンの『BAD』の8割をシンクラヴィアで作った人なんです。だからそこは意識して、シンクラヴィアの現在形を知りたくて頼んだのかもしれない。
編 むしろその可能性があると。『DRESS』がシンクラヴィアと仮に出会ったアルバムだとしたら、小室哲哉のソロアルバム『Digitalian is eating breakfast』は完全にシンクラヴィアで作られたアルバムですね。
ば このシンクラヴィアの説明を簡単にすると、今のハードディスク・レコーディングと同じシステムで、そのサンプリングできる時間がめちゃくちゃ長い。サンプラーみたいなものですね。そこにシンセや音源もついてくる。
編 いわゆるデジタルオーディオワークステーション(DAW)......。
ば 90年代中盤から広まってきたDAWのスタイルが80年代にもうあるというのは結構革命的です。
編 ハードウェアとしてあるということですよね。しかも今で言うところのハイレゾレベル。『Digitalian is eating breakfast』は1989年ですが、シンクラヴィア自体はもっと前からありましたよね。
ば ポップスで大々的に導入したのは1987年の松任谷由実のアルバム『ダイアモンドダストが消えぬまに』辺りからじゃないですか。冨田勲さんは前から使ってましたけど。あと1991年に出た沢田進夫のアルバム『メタムジーク』のオビに「世界初登場!シンクラビアのアルバム」って書いてありましたけど、真意は謎(笑)。
編 会社的には1974年から試作機としてあるらしいんですが、実際に出てきたのはやっぱり80年代という事です。
ば あ、フランクザッパも使ってましたね。
編 フランクザッパ! Wikipediaのシンクラヴィアの項目には、シンクラヴィアを使用した著名人という項目があって、見るとそうそうたるメンツですね。
ば 日本に最初に入ってきた時は買った人が3人くらいしかいなかったという......。そしてその中の1人が加山雄三(笑)。新しいもの好き。
編 さすが若大将(笑)。
ば そんで『Digitalian~』共同プロデューサーの日向大介さんも1988年頃に購入と。
編 というわけで、小室哲哉がシンクラヴィアを手にして初めてのTM NETWORKのアルバムがこの『RHYTHM RED』ということになりますね。
ば あ、でもその前にシングルがありますよね。あれはもうシンクラヴィア使っているのかな?
編 ちょっと見てみましょうか。『RHYTHM RED』に収録されてる「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」が21枚目のシングル。その前に「DIVE INTO YOUR BODY」があります。あ、「DIVE~」ではじめて導入って書いてありますね。この曲が1989年の7月なので、これは『Digitalian~』より前ですね。
ば そうか、思い出しました。TM NETWORKで「DIVE INTO YOUR BODY」と「RUNNING TO HORIZON」のどっちを歌うかという選択があって、「DIVE INTO YOUR BODY」が選ばれてボツになった曲を小室哲哉が自分で歌ったんでした。
編 それが「RUNNING TO HORIZON」。
ば だからちょっと曲が似てるんですよね。
編 歌い出しのラ~ララ~とか、Aメロのコード展開がほぼ一緒。たまりませんね。これはこれでやっぱ『CITY HUNTER '91』なんですよね。
ば その印象強い。んで基本的にはオペレーターがシンクラヴィアを操作。
編 オペレーターは日向大介さんですか?
ば そうみたいです。レコーディングは1989年5月から。アナログテープを使わないで作ったことが売りでした。名盤!
編 これ名盤ですよね。僕も大好きです。
■TM NETWORK→TMN
編 さて話を戻しましょう。映画では「humansystem」が終わると、『RHYTHM RED』の楽曲、TMN時代というのがやってきます。率直にいってばるぼらさんの中でTMNというのはいかがですか?
ば ワタシは好きなんですよ。ワタシは最新になればなるほど好きだから。
編 なるほど。これは今でも覚えているんですけど、僕は当時、衝撃を受けましたね。
ば それはどっちの衝撃なんですか?(笑)。
編 「TMがロック、やるんだ!」みたいな。
ば 普通に考えればそうですよね(笑)。ここで離れた人も普通にいたんですよ、周りに。
編 そうですよね。これは離れてもおかしくない内容でした。
ば 「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」のシングルはまだ打ち込みなんですけど、後々アルバムに入ったら生ドラムに変わっちゃってるんですよね。
編 そうなんですよーーー。
ば それまでの「シンセ感」が好きだった人はちょっと「ウッ」ってなるくらい「生」な感じなんですよね。
編 そうそう。そしてここから坂元裕二さんがよく出てくるようになります。
ば 坂元裕二さんの詞、ワタシは好きなんですよ。本格的な作詞はTMが初めてらしいです。当時の『GB』での小室哲哉曰く「僕が書くと(略)どうしても男の立場がチラつくんだよ。でも、彼が書くものは全く女の子側の視点だったりするわけ」とのこと。
編 坂元裕二さんは脚本家としても有名な方ですね。『東京ラブストーリー』とか。
ば 『二十歳の約束』も好きです。
編 そこでも2人は一緒で、劇伴を小室さんが手がけます。そしてこの『RHYTHM RED』からロックっぽいナンバーの「69/99」という曲が映画には収録されています。
ば 好きな曲。
編 それから「TIME TO COUNT DOWN」、これは『RHYTHM RED』からの先行シングルでスラッシュ・メタルっぽい曲と言われながらも、曲全体を見るといろんな展開があるんですよね。
ば 1989年にデビューしたXの影響があるんじゃないかなあ。あのイントロ、当時は鍵盤で何回も練習しました(笑)。
編 (笑)。それは素晴らしい! そしてここで映画の『RHYTHM RED』編は終わりです。
ば あっという間に終わっちゃうんですね(笑)。映画で盛り上がってる感じは『RHYTHM RED』ツアーが1番出てたかもしれない。『RHYTHM RED』ツアーが一番ライヴ感があるからかな......。
編 僕は実際に足を運んだんですが、代々木体育館で彼らは豆粒のようでしたよ。
ば (笑)。
編 でもすごい盛り上がった記憶がありますね。
ば その時にはもう浅倉大介先生がシンセベースで入ってるんですよね。
編 浅倉大介先生の姿もこの映画では『RHYTHM RED』辺りから見ることができました。
ば ここで生ベースじゃなくてシンセベースを選んだっていう所にまだTMの良心が感じられます(笑)。
編 面白い(笑)。
ば 全部を生演奏にしてしまっていたらどうなっていたかな、と思います。「シンセで良かった...」みたいな感じ。
■TMNとハウスミュージック
編 そしてこの後に「LOVE TRAIN」なんですが......。TM NETWORKの歴史的にはこの後『EXPO』という「月とピアノ」をモチーフにしたといわれるアルバムがやってきます。「LOVE TRAIN」もその中に入っている収録曲ですね。
ば 収録曲ではあるんですが、映像はEXPOの時のツアーではなかったですね?
編 映像は違いました。ここで使われている映像は〈TOUR TMN EXPO〉のものではなく1994年のラスト・ライヴ『TMN final live LAST GROOVE 5.19』バージョン。
ば 〈EXPO〉ツアーの映像は何故使わないんでしょうね? そういえばあのツアーは『LAWSON Presents Tour TMN EXPO』って書いてあったから、権利関係をローソンが持ってて扱いが違うのかもしれませんなあ。
編 ちなみに今回我々が見させていただいた映画はSony Musicの制作によるフィルムビデオです。配給元はソニーPCLで、なので1984~94年までの映像であるのは必然ですね。
ば 〈EXPO〉ツアーの映像が入ったら「ああ、10年全部見たなあ」って感じがしたと思うんですけど。
編 そうですね。それが入ると気持ちよく繋がるんですが......。
ば まあいいか(笑)。『EXPO』は非常に好きなアルバムで名曲揃いだと思います。
編 前作はロックという音楽ジャンルが強く志向されていたんですが、『EXPO』はかなりなんでもアリなんですよね。
ば そうそう、「I Hate Folk」が異様な曲でしたけども、後は......。
編 「I Hate Folk」がメタルでしたが、その裏である「月の河」は逆にフォークですし......。
ば 完全に木根さんの趣味みたいな。
編 あと前半にある「Just Like Paradise」、「Jean Was Lonely」、「Crazy For You」この3つでハウスっぽい流れが続くんですよね。
ば というかハードロック・アルバムと思われてる『RHYTHM RED』の中でタイトル曲「RHYTHM RED BEAT BLACK」だけハウス調なので、あそこで予言されているんですよね。
編 なるほど! そこからここに繋がるんですね。それで、この「LOVE TRAIN」は先程もちょっと出たんですが、TM NETWORK史上最も売れた楽曲という事になっています。オリコン週間1位、年間17位。
ば やっぱりハードロック的なギターが低音で「ギィィィーン」と入るのと、しかしドラムは四つ打ちハウスみたいな、あの組み合わせは当時としてはなかなか珍しくていいですよね。
編 なるほど。これもTMファンの方はよくご存知なんですが、小室さんがカラオケをはじめて意識して作ったといわれてる曲ですね。
ば あとこのちょっと前にB'zがデビューして、ああいうハードロックと打ち込みの融合にちょっと焦ったっぽい雰囲気があります。
編 なるほど(笑)。
ば なので「LOVE TRAIN」はロック感と打ち込み感を組み合わせつつTMの王道っぽいメロディで作ったんじゃないかと思います。
編 「LOVE TRAIN」とシングルでカップリングされた「We love the EARTH」はどっちもCMソングで、作詞作曲編曲を小室さんが手がけている曲ですね。そして締めに繋がるんですが、ここで「THE POINT OF LOVER'S NIGHT」。これはやっぱりTM NETWORK的にはアンセムな感じなんですか?
ば 1994年の終了ライヴの前にやったラジオ番組の人気投票「10th Memorial Night」でも上位に来てた記憶があります。TM NETWORKとTMNの橋渡しをした曲ですし、英語を一切使わない歌詞もいいですし、メロディもいいですからね!
編 なるほど(笑)。これもラスト・ライヴの2日目の19日からの映像で、『TMN final live LAST GROOVE』というのは東京ドームで行われ、なんとツインドラム、ドラムセットが2台あるという......。
ば 2台あったんだ(笑)?忘れてた。
編 なので構成としては非常に『RHYTHM RED』の要素が強いライヴの構成になっていたような気がします。
■「ELECTRIC PROPHET」は最高です
編 この辺まで見てきて我々相当ぐったり来てたはずなんですが(笑)、そして最後に......。
ば まさか「ELECTRIC PROPHET」をああいう風に繋いでくるとは思いませんでしたね。
編 いやあ僕も。「繋いでくる」というのは何かというと、ここでラスト・ライヴまで時間軸をほぼリニアに追ってきたんですけど「ELECTRIC PROPHET」が始まると最初のパルコ時代に戻るんですよね。
ば そうそう。
編 「ああ、素敵な展開だなあ」と僕は見てて思いました。
ば それで終わるのかと思いきや重ねてこう別のライヴが入っていて......。
編 重ねて編集されていたんですよね。〈DRAGON THE FESTIVAL TOUR〉〈EXPO ARENA FINAL〉そしてTMNの最後のラストライヴと繋ぎに繋がれた「ELECTRIC PROPHET」でした。
ば なかなかね。やっぱり最初のバージョンは本当にシンプルですよね。
編 最初のバージョンがシンプルだったので最後まであのまま聴きたかった。なんですが、最後に「ELECTRIC PROPHET」をもってくるなかなかいい締めですよね。
ば いやほんと、そういう特別な「終わり感」のある曲ですね。これが「TIMEMACHINE」じゃなくて良かった。
編 本当にそう思います。これで無事フィルム終了となるのですが、後ろの席などを見るとちょっと涙ぐんでる人がいたりしましたよ(笑)。
ば (笑)えー、ワタシが行った時は全然そんな雰囲気なかったですよ......。
編 試写会の会場に(笑)。
ば そうそう。だって試写会に満席で入れなかったら嫌だなと思って、ちょっと早め、上映20分前に行ったら「トップバッターです」と言われた(笑)。で、最終的に試写会に来たの自分入れて3人。
編 ちなみに僕は最終日に行ったんですけど、10人ぐらいしかいなかったです。
ば やっぱり年齢層は上な感じでしたか?
編 上な感じです。なんかもう上映前に皆さん思い出を語っているような......、同窓会みたいな感じでした。
ば 「TMはやっぱり最初の10年だよ~」みたいな(笑)?
編 その「最初の10年」の映像がまとまってたこちらの映像でしたが......。
ば ワタシは予想外に楽しかったんですけど、正直「マニアックなファンはこれ観て怒るんじゃないかな~」と思いました(笑)。ちょっとチケット代高いし。
編 ねえ。某マニアさんの検証によるとほぼ既発映像らしく、未収録映像ありと書かれていたんですが、未収録映像は恐らく2つでしかもその1つは台詞だけらしい......。
ば まあ、既発以外の別カメラの映像を探してくるというのは予算的にできなかったんじゃないですか。
編 大体2時間くらいの尺なんですよね。僕は観ていて非常に楽しい時間でした。
ば ワタシも、〈CAROL〉関連の部分でちょっと中だるみ感があったんですが全体は楽しめました。
■1994年解散後のTM NETWORK
編 実はTM NETWORKは94年の解散後もちょこちょこ活動されているんですが、2012年再結成、本格的に活動を再開しています。
ば それについては言いたいことがあるんですけど! まず1994年の終了時に「今後、TMNあるいは、TM NETWORK名義の新作が発表されることはありません」と宣言されたにも拘わらず、意外とすぐリリースが何回もあって、それでちょっと自分の中にある原理主義者的な部分が「なんでよ!」と反応したことは忘れずに言っておきたい(笑)。今の活動も追ってるファンからするとそういうことは言うなよって感じでしょうけど......。
編 なるほど(笑)。SONY時代原理主義者的なところからすると。
ば 1994年で綺麗に終わったはずだったんじゃないのか?みたいな......。
編 新聞一面の広告とか、かなり大々的に発表してましたもんね。
ば 許せるのは1994年のバラード・ベスト盤『TMN BLUE』に入ってた「ANOTHER MEETING」までです! これはラスト・シングル「Nights of the Knife」のカップリング用に録音されたんだけど、ベスト盤を売るために別扱いにした曲ですね。一番最初に「えっ!?」って思ったのが1996年の『Gaball screen』というゲームが出た時。「Detour」という曲が収録されてるんです。「あれ?新曲?これ?もう発表しちゃうの?」みたいな。
編 なんかの番組で見たんですけどその時には「俺ら3人が集まってなんかやる、TM NETWORKとは言わないけど」みたいな事言ってましたよ。
ば 言ってましたけど、結局『TIME CAPSULE』というシングル集にボーナストラックで入っているのでこれはもうTMの新曲です!
編 他にも色々あります。「GET WILD DECADE RUN」が1999年です。これはTM NETWORK再始動のシングル。そしてTM NETWORK名義を終わらせた1989年からの10年後記念として「10 YEARS AFTER」があります。
ば そうだそうだ。Ten Years Afterってイギリスのバンドから曲名とったなと思ったんだった。
編 さらに同じ1999年に「Happiness×3 Loneliness×3」もあります。
ば TM NETWORKの「再結成史」みたいなのが、もはや歴史がありますね(笑)。30週年のうち後半20年は「なんかいつの間にか再結成になっているぞ」みたいな時間だったな......。
編 そして2000年には「MESSaGE」、「IGNITION, SEQUENCE, START」。ついに「We Are Starting Over」なんてタイトルをつけたシングルも2000年には出てますね。
ば びっくりしました。
編 そして2002年、これもレーベルはROJAMですね、「CASTLE IN THE CLOUDS」。
ば そうそう。吉本の頃か......。『TKプロジェクト ガチコラ』って吉本芸人のアルバムが出た時は「え~」って思ったなあ。
編 そして「NETWORKTM」で、これはレーベルがR&Cというインディーズですか?
ば Rojamと吉本が合体したレーベルで、分類上(日本レコード協会に所属しているか否か)は一応インディーズ。
編 そして2007年に「WELCOME BACK 2」。
ば 発売が飛び飛びですよね、毎回数年おき。
編 そして2012年の「I am」、ここからavexです。
ば なるほど、この時に復活ライヴ的なものが行われて......。
編 『Incubation Period』という映像作品になっていますね。
ば そこから継続的に活動していくと公に発表した感じになったと。
編 2014年にはアルバム『QUIT 30』。これで30周年になるわけですね。
■TM好きなら楽しめるのは間違いなし!
ば 映画の話に戻りますけど、ライヴ盤の『TMN COLOSSEUM』の3みたいな感じがしましたね。いろんなライヴ素材を組み合わせて架空のライヴを作ってしまう、みたいな。
編 そういうコンセプトアルバム『TMN COLOSSEUM』1、2というのがありましたね。
ば 1992年でしたよね。それっぽいコンセプトとして理解すればわからなくもない、って今回思いました。
編 そしてやはりTMの楽曲を知ってる人達が見に行けば、楽しめるのは間違いないですよね。
ば そうですね。間違いないです。やっぱり1番観たい時期ですから。
編 うんうん。
ば 最近もうビデオデッキとかで昔買ったやつ見れないな、でもDVD買い直すのはちょっとな......っていう人にはまさに丁度いい。
編 僕も『FANKS the LIVE』のVHSを何本か持っていたような......。やっぱりこの時期のTMの曲で観たいんですよね。
ば やっぱり『DRESS2』的アレンジのライヴツアーを観たい人は相当ハードコアなファンじゃないですか。
編 あれ、ウツの声がサラっとしてますし。
ば あとTM時代はまだ時間的余裕があるから曲を丁寧に作ってるけど、それ以降は小室先生も量産型になったことで、サビ以外の印象的なメロディがだんだん少なくなっていく感じがあって、その時代を経てもう一回TMをやると、なんだかAメロ・Bメロ・サビの繋ぎがチグハグしすぎているのが強調されてませんかね。
編 ああ、確かにそれは感じますね、globeの後期とか。
ば それがどうしても馴染めないんです。これをTM NETWORKと呼ばれてしまうとなんか違うなって思うんです。
編 びっくりするほどキャッチーなフレーズとか出てくるんですが......。
ば メロディを一つだけ取り出したら良いんですよ。ただ一曲通して聴くとなんか違う。
編 まあTM NETWORKはずっと変わり続けてきたバンドであるのは間違いないんですが、それでもやはりこの10年の評価が揺るぎない。
ば あと最近のリリースは値段が高いし(笑)。再発盤も別に安くなったりするわけじゃないし。
編 ソニーは相変わらずblu-specCD商法をされていますが、Twitterでは小室さんがハイレゾによく言及されているのでハイレゾリマスター音源商法もやってくるでしょう、間違いなく。
ば そうですね。そういえばちゃんと買ってます?
編 何をですか?
ば 1994年の終了以降の一連のプロダクト。
編 解散以降は小室さんのソロだけ買ってます(笑)。
ば ワタシも似たようなもんだけどベスト盤は買ったりしますよ。『TM NETWORK ORIGINAL SINGLES 1984-1999』とか買ってないんですか(笑)?
編 買ってないんです。ばるぼらさんから音が良くなってると聞いて気にはなってるんですけどね......。あと『CAROL』の全編インストが気になります。
ば あ、インストの方が気になるっていうのはありますよね!
編 全部のアルバム、インストで出してくれればいいのに......。
ば 配信とかで出してくれたらいいのにって思いますよね。
編 TM NETWORKには資料的な物もたくさんあるし、マニアさんもものすごくいらっしゃると。アウトテイクみたいなのも収録されてますし。
ば まだまだ残ってますね、表に全然出てない音源が。未だにハンバーグ&カニクリームコロッケ(※3)がCD化されないとか、細かいものがいっぱいあるんですよ。
編 いっぱいあるんですね、なるほど。そういう中でこれはその「マニア向け」ではなく、もっと当時普通にTMを好きだったなあと、アルバム持ってなくても何かこれ聴いたことあるなあ、みたいな人たち向けの緩いベストムービーですよね。
ば そうですね。できれば入場料は1800円にして欲しかったです(笑)。人にちょっと勧めづらかった......。
編 ですね。
ば 価格だけマニアなんだけど内容は一般向け、みたいな。
編 これも「TM NETWORK30週年」を記念した試みだと思いますので......。
ば まあ、懐かしい気持ちを持っている人がいたら行って損はないと思います。
編 というわけで『TM NETWORK THE MOVIE 1984~ 30th ANNIVERSARY』、懐かしい人は観てください。
(了)
【註釈】
※3 ハンバーグ&カニクリームコロッケはTM NETWORKの3人と日詰昭一郎で組んだラジオ番組内企画ユニット。限定シングル『神社でB/恋のながら族』がある。
■その他参考になる資料
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ばるぼら ネットワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』など。最新刊は共著の『20世紀エディトリアル・オデッセイ』。
「www.jarchive.org」 http://www.jarchive.org/
15.02.08更新 |
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