月一更新
the toriatamachan season2
女の子にとって、「美醜のヒエラルキー(それによって生まれる優劣)」は強大だ! 「酉年生まれゆえに鳥頭」だから大事なことでも三歩で忘れる(!?)地下アイドル・姫乃たまが、肌身で感じとらずにはいられない残酷な現実――。女子のリアルを見つめるコラム、シーズン2は「お金」にまつわるアレコレです。
空欄を作っては埋め続けて、かれこれ7年になります。ノートは3冊目になりました。友人は「昭和のお母さんみたい」と言います。いまどき、そういったものはスマートフォンの何かで、便利に管理できるそうなのです。
流行りのレコーディングダイエットは続かない女子高生だった私が、今日まで必死に昭和のお母さんを続けてきたのには訳があります。
最初のきっかけは、いつの間にかお金がなくなるようになったことでした。高校生になって、友人たちもアルバイトで収入を得るようになると、行動範囲も広がり、出費も増えます。だんだんと何に使ったか思い出せないけど、思ったより残高が少ないという状況が増えてきました。そこで、大学ノートに線を引き始めたのです。
数か月続けてみて、残高を減らしていた原因がメロンパンであることが発覚しました。当時、メロンパンが好きだった私は、そこかしこで見つけては買い込んでいたのです。結構な金額をつぎ込んでいました(女子高生なりに)。衝撃でした。
原因もわかり、引き出しの奥にしまった大学ノートを、私はまたすぐに取り出すことになります。高校2年生になってすぐ、地下アイドルを始めたためです。
ライブ後の物販では、時給850円でアルバイトをしている私の2ショットチェキが500円で売れます。2枚撮ったら時給を超えます。震えました。これに慣れてはいけないと、心の警報が鳴っていました。
高校生のアルバイトは、働ける時間が限られているうえに、時給を低く設定している店も多いです。同級生には居酒屋のキャッチなど、歩合制のアルバイトで派手に稼いでいる子もいましたが、押しの弱い私には無理なことでした。
実際に、同世代の地下アイドルで、アルバイトも学校も辞めてしまった子が何人かいます。みな「地下アイドルのほうが稼げるから」と口にしていて、私はその度にとても驚きました。私生活を急激に変化させる勇気と、ずっと地下アイドルでいようと決められる覚悟に、です。
しかし、彼女たちはみな、すぐに地下アイドルからも引退していきました。アルバイトも学校も辞めてしまうと、何かを続ける気力がなくなってしまうと、ひとりが話していました。そう聞くと、アルバイトをしながら学校を卒業したのが、賢明な選択だったように感じられますが、あの頃の私にすべてをなげうつ気概があれば、いまの活動はもっとマシだったかもしれないので、こればかりはわかりません。
こう書いていると、地下アイドルがものすごく稼げる活動のようですが、あくまで高校生のアルバイトレベルの話です。アルバイトより稼げるからといって、地下アイドルとして精力的に稼いでいたわけでもなく、かと言って、地下アイドル活動で好き勝手に赤字を出して補填できるほど、アルバイトに精を出していたわけでもありませんでした。
おかげで、当時の私はお金に対して非常に慎重でした。当時の大学ノートには、私生活の私と、地下アイドルの私の稼ぎが、色分けされて記入されています。月末になると、それぞれの収支をまとめました。
地下アイドルをいつ辞めても大丈夫なようにアルバイトも手を抜かず、趣味と呼んでもよかったはずの地下アイドル活動でも、赤字を出さないように苦悩しました。
自分が面白いと思っていることだけに執着すると、偏りすぎて収入に繋がらず、その逆もまた然り。活動を手伝ってくださる方々の、労力や技術など、見えないものに値段をつけるのも、未成年の私には難易度が高かったです。
しかし、いままで経験したことのなかったお金の難しさを乗り越えていく感覚もまた面白く、夢中になっている間に、就職を逃しました。続けることだけが取り柄の学生生活でしたが、さすがにここまで地下アイドルを続けてきてよかったのか、現時点では、いよいよわかりません。
今朝のニュースが、私と同時期に大学を卒業した人の就職率を、96.8%だと伝えていました。
子どもの頃から多数決でいつも負けたり、バイト先では「変わってるね」なんて言われたりして、もしかして自分はマイノリティ気味なのではと思った時期もありましたが、地下アイドルの活動をするようになってからは、表面上は似つかなくても、どこかで似たような価値観を持っている人としか会わないので、そのような考えは消え去っていました。
パンツ一丁でグレープフルーツを齧りながら、3.2%......と、思いました。いつも通り、それを良いとも悪いとも感じませんでしたが、午前11時にまだパンツ一丁の人がマイノリティでなければ、国が困ってしまうよなあとは思いました。
文=姫乃たま
関連記事
15.06.13更新 |
WEBスナイパー
>
とりあたまちゃん
| |
| |