Monthly Illustration series by inumoto
月一更新 イラストレーション・シリーズ「レイヤー百景2.0」
二次元と三次元とコスプレとレイヤーの境界を行きつ戻りつしながら筆を動かす多元的イラストレーション・シリーズ。絵師・inumotoさんが描き、綴る、物語の中でコスプレを考察していくユニークな連作です。「すっごーい!」
みどりが感嘆の声を上げる。
目の前には温泉宿備え付けの卓球台が設置してあり、そこで今まさに寅子と祥子が白熱した試合を繰り広げていた。決して広いとは言えないその空間を縦横無尽に駆け巡り球を追い、力の限り打ち返す。2人の目は真剣そのもので、周囲に他の客が居ないのをいいことに得点する度に雄叫びが上がる。
どちらかというと運動が苦手でおよそ学校の体育くらいでしかスポーツがの経験がないみどりはその光景に完全に圧倒されていた。
しかしそこで高菜が放った一言がさらに彼女を驚愕させた。
「あの2人はほとんど卓球の経験のない素人よ」
「嘘.........あの動き......とてもそんな風には......。いやでもよく見るとラリーもそんなに続かないし割と明後日の方向にスマッシュしている......」
「そう。2人は素人にも拘わらず見るものを圧倒する見事な"卓球"を披露している!」
「一体なぜ......そんなことが可能なの......」
「それはね、みどりちゃん......あの2人が正真正銘のコスプレイヤーだからよ!!」
「!!」
「2人は今その持ち前の"レイヤー力"によって、完全に"一流のテーブルテニスプレイヤー"になり切っているのよ!!」
「な、なんですって?!」
「成り切りはコスプレイヤーの基本! 祥子さんはもとよりまだレイヤーとして日の浅い寅子ちゃんも見事也!!」
「すごい......! 私も見習わなきゃ......!」
「その意気よ! さあ、私達もやってみましょう!!」
「はい!!」
2人に声をかける高菜。
「祥子さん寅子ちゃん、そろそろ交代してもらっていい?」
祥子が答える。
「いいわよ」
試合を終えお互いを讃え合う祥子と寅子。
「なかなかやるわね寅子」
「高校3年間みっちりやってたっすから......。でも祥子さんには敵わないっすね」
「こちとら小中高とやってたからね」
「高菜さん......」
「ん?」
「あの2人めちゃめちゃ経験者じゃないですか」
「やっぱそうだよねー」
カコンッ
「うわ全然真っ直ぐ打てない」
「ラケット持ち方変ですよ」
(続く)
登場人物紹介
山田高菜 勤務先:おにぎり屋
梅ヶ丘みと゛り 勤務先:おにぎり屋
鬼束寅子 勤務先:パチンコ屋
祇園祥子 勤務先:喫茶店
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第1回/山田高菜 ~その青春~
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