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I want to live up to 100 years
「長生きなんてしたくない」という人の気持ちがわからない――。「将来の夢は長生き」と公言する四十路のオナニーマエストロ・遠藤遊佐さんが綴る、"100まで生きたい"気持ちとリアルな"今"。マンガ家・市田さんのイラストも味わい深い、ゆるやかなスタンスで贈るライフコラムです。
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■幸せになりたい?

「君は、幸せになりたくないの?」

年上の男の人と飲んでいて、そう聞かれたことがある。10年くらい前だったろうか。実家でニート暮らしをしていた私が暇にまかせてAVのファンサイトを始め、頻繁に上京するようになった頃のことだ。
結婚もせず彼氏もいない30代半ばの無職女が「オナニー! オナニー!」と騒いでいるのを見て、こいつは一体大丈夫なのかと心配になったのだろう。

「お見合い話も断わってるんでしょ。今はいいかもしれないけど、将来のこととか考えると不安にならない?」

今考えると「大きなお世話じゃ!」と思うのだが、相手が真顔だったので私もつい真剣に考えてしまった。

「いや~、こう見えて今もけっこう幸せなんですよぉ」

その後には「見合い結婚に期待するなんてバクチみたいなことできないし!」とか「そもそも"幸せ"ってなんだよ、ムードで漠然としたこと言われてもわかんねえよ!」とかいろんな言葉が続くのだけれど、それをグッと呑みこむくらいの分別はある。

相手はそれ以上追及してこなかった。でも、比較的自由な考えを持っているだろうエロ業界の人にも自分みたいな女は不幸に見えているんだなと、能天気な私にもそれだけはわかった。そんなことないのに。正直、少し傷ついた。

それから数年が経ち、40歳のときに予想外の結婚をした。
自分でも驚いた。というのも、それまで「結婚願望」というものがまるでなかったからだ。
たぶん、実家暮らしだったのが大きいのだと思う。実家はとにかくラクだ。食うに困らないし、家に帰れば必ず誰かがいてくれるから寂しくもない。まあ「私がいなくなったら祖母や老母が寂しがるだろうな」という気持ちも30%くらいはあった。
とにかく、先々のことを考えれば早めに結婚したほうがいいんだろうなとは思うけれど、この生活がずっと続くならそうしていたい......というのが、ぐうたらな私の正直な胸のうちだったのだ。

10年近くもニートをしていただけあって、私はたぶん他の人よりも危機意識が薄い。それがどうして、40歳という微妙な年齢になってからいそいそと結婚することになったのか。
何回か前のコラムに書いたように、直接の理由は老母に背中を押されたからなのだが、そうなるまでの過程を一言で言い表わすならそれはきっと「流れで......」だ。

これを言うと驚かれることが多いので今では半ば持ちネタみたいになっているのだけれど、夫は私よりも10歳年下。けっこうガチなM男性である。最初に会ったときは、たしかまだ大学生だった。
地方在住のAV好きアラサー喪女と東京のマゾ大学生がどういうきっかけで知り合ったかは御想像にお任せするが(まあ、あんまり褒められた感じじゃないです)、AVサイトを始めるまで女友達としか遊んだことのなかった私にとって、10歳年下でしかも内気なマゾ青年はすごく打ち解けやすい相手だった。
仲間うちの飲み会で隣に座ったり、2人でパフェを食べに行ったり。それまで男の人とマンツーマンで遊ぶことなんてなかった私に、初めてできた男友達。
いろいろあって途中で連絡をとらなくなった期間も何年かあったけれど、誰よりも気を使わなくてすむ相手なことはずっと変わりなかった。
お見合い相手に言われてもなかなかしっくりこなかった「結婚」という言葉が、彼からならスッと入ってきた。それはきっと、家族といるときのような安心感があったからだと思う。

祖母の喪中にかこつけて結婚式は省略したけれど、東京へ出てきて最初のお盆には2人で区役所へ行き、入籍届を提出した。後で気づいたのだが、初めて会った日からちょうど10年目の同じ日だった。
おかげさまで、今のところ毎日快適である。M男とエセM女(私です)のカップルのいいところは、なんといっても喧嘩をしないことだ。どちらも人に謝ることに慣れているから、たまに衝突してもこじれることがほとんどない。小さなことを気に病むしつこいタイプの私にとって、これはすごくありがたいことだ。

「君は、幸せになりたくないの?」

昔、そう聞かれたときに感じた違和感はなんだったのか。今ならわかる。
あのとき私は、結婚さえすれば幸せになれるのに......と頭から決めつけられた気がしたのだ。
もちろん、そんなの幻想だ。
結婚、事実婚、お一人さま、不倫の恋。すべての物事にはいい面と悪い面がある。どれが一番だとか、どれを選べば絶対だなんていうマニュアルはない。そしてどの形が自分にあっているか、見分けられるのは自分だけだ。
子供の頃は、両親と同じようにお見合い結婚をするんだろうと思っていた。30歳を過ぎて「お見合いは向いてない」とようやく気づき、こりゃずっと一人かも......と半分覚悟を決めた。
そんな強情で臆病でぐうたらな私が40歳になって結婚に踏み切ったのは、幸せになりたいとか、幸せにしてもらえると思ったからじゃない。この人となら、結婚してもこれまでと同じ自分のままで、機嫌良く暮らしていけると思ったからだ。
じっくり考えすぎてやたらと時間がかかってしまったけれど、そのぶん大事にしていきたいと思っている。

このあいだのGWは、私と私の女友達と3人で台湾に行ってきた。
ギャーギャーうるさい四十路女に混じってマンゴーかき氷の列に並び、小籠包の美味さに顔を赤らめ、初めてのスパ&マッサージ体験に感動するわが夫。
結婚してもう4年。いろいろうまくいかないこともあるけれど、そんな姿を見るたびに、非マッチョ系男子の素晴らしさを噛みしめる私なのである。

文=遠藤遊佐




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遠藤遊佐(C)花津ハナヨ
(C)花津ハナヨ
遠藤遊佐 AVとオナニーをこよなく愛するアラフォー女子。一昨年までは職業欄に「ニート」と記入しておりましたが、政府が定めた規定値(16歳から34歳までの無職者)から外れてしまったため、しぶしぶフリーターとなる。AV好きが昂じて最近はAV誌でレビューなどもさせていただいております。好きなものはビールと甘いものと脂身。性感帯はデカ乳首。将来の夢は長生き。
遠藤遊佐ブログ=「エヴィサン。」

市田 ブログのコミック化や新書等で活躍するマンガ家。
著書に『家に帰ると必ず妻が死んだふりをしています』(PHP研究所)、『日本霊異記』(KADOKAWAメディアファクトリー新書)など。
ウェブサイト=「http://urban.sakura.ne.jp」
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15.06.20更新 | WEBスナイパー  >  100まで生きたい。
文=遠藤遊佐 | 市田 |