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I want to live up to 100 years
「長生きなんてしたくない」という人の気持ちがわからない――。「将来の夢は長生き」と公言する四十路のオナニーマエストロ・遠藤遊佐さんが綴る、"100まで生きたい"気持ちとリアルな"今"。マンガ家・市田さんのイラストも味わい深い、ゆるやかなスタンスで贈るライフコラムです。
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■私の分身

私と姪っ子は似ているらしい。
「顔はそうでもないけど、性格はほんとにそっくりだよ」老母はいつも、自信満々でそう言う。
可愛い服や『アイカツ!』(※中学生の女の子がオシャレなコーディネートしてオーディションとか受けてアイドルになるみたいなアニメです......)が大好きな姪っ子と、スカートが大嫌いで家で本ばかり読んでた私。全然似てないじゃんと思っていたけれど、最近「もしかしたら似てるのかもしれない」と思うようになってきた。
内弁慶なところ、夢見がちなところ、明るく見えて実は内気なところ。うん、言われてみればそっくりである。

私には8歳年下の弟がいて、7歳の姪と5歳の甥がいる。
長野生まれの長野育ち。ずっとこのまま大きくなっていくんだろうなと思っていたのだが、最近弟の転勤が決まり、子供たちも一緒に東京へ引っ越してきた。
おじいちゃんやおばあちゃんが近くにいて、これでもかってくらいのんびりしていた長野から都会への急な引っ越し。勉強の進み具合も違うだろうし、テレビドラマを見てると都会の学校ではいじめやスクールカーストなんかも普通にあるって聞く。うーん、あのマイペースな姪っ子がうまくやっていけるんだろうか......。
その心配は見事に的中し、彼女は転校3か月で不登校気味になってしまった。

弟嫁の話によると、姪っ子は、新しい小学校で取り残されてしまったらしい。
いじめられるというのではないけれど、彼女が通う小学校は少人数性の新設校で仲良しな相手というのがすでに固定している。だからふと気づくと一人ぼっちになってしまう。
「私も入れて」と言えればいいんだろうが、彼女はそういう性格じゃない。一人になるのが嫌で、学校に行きたがらなくなったんだそうだ。
弟嫁は優しい人なので、学校へ行かない姪っ子のことを怒ったりせず、懇々と粘り強く言い聞かせる。説得がうまくいったときはしぶしぶ学校へ行き、どうしても嫌なときは休んで家の中にいる。
昭和生まれの田舎のおばさんである私はつい「甘やかさずガツンと言ってやればいいのに!」と言いそうになる。でも、ワイドショーで子供が自殺したなんてニュースを見ると「そういうわけにもいかないんだよな......」とも思うのだ。

子供に恵まれなかった私には、正直言って今の子供達の住む世界のことはまったくわからない。もっというと、10歳、20歳年下の子が話す「学生時代の話」すら、よくはわかっていない。"スクールカースト"や"いじめ"って言葉は知っていてもあまりピンとはこないし、小学生の頃から受験勉強しなくちゃいけないような環境も「???」だ。
これはたぶん昔の人間であることと田舎で育ったことが原因だと思うのだが、もしかしたら「喉元すぎると熱さを忘れる性格」のせいもあるのかもしれない。
姪っ子ちゃんの話を聞いて、いじめられたり一人ぼっちで寂しい思いをしたりしたことはなかったっけ......と思い返してみたら、フッとそれらしき記憶が浮かびあがってきた。
小学校6年生の頃だっただろうか。私はブサイクなアダモちゃんだったにもかかわらずなぜか担任教師に目をかけられていた(たぶん先生からの頼まれごとを断われないタイプだったからだと思う)。そのせいで、クラスメイト達から「遠藤さんは先生に贔屓されている!」と糾弾された経験がある。
「え、面倒なことやらされるだけで何ひとつ得してないのに、なんで?」という感じだったのだが、糾弾の輪はどんどん広がっていった。今でも覚えているのは、昨日まで四六時中一緒にいた仲良しの子が、急にあだ名じゃなく「遠藤さん」とわざわざ「さん付け」で私を呼ぶようになったことだ。
「なんでそんなふうに呼ぶの?」と聞いたら「自分の胸に手を当ててよく考えてみなよ!」と睨まれた。こっちにはなんの悪意もないのに、こんなふうに一方的に憎まれることもあるんだと始めて知った。

でも、学校を休んだ記憶はないし、その友達とは今も普通に付き合っている。よくは覚えていないけど、きっと何もなかったかのように徐々に元の状態に戻っていったんだと思う。
もしかしたら傷ついて大泣きしたのに、いつもの「喉元過ぎれば......」で忘れてしまったのかもしれない。でもまあ、30年以上も昔のことだし、今年の夏もまた同級会で彼女たちと顔を合わせ酒を飲んで大騒ぎするんだから、今となってはどっちだっておんなじだ。

姪っ子ちゃんが不登校気味だと聞いてから、私はときどき弟の家へ通うようになった。7歳の女の子を一人で家に置いておくのは心配だけど、弟嫁もそう頻繁に仕事を休むわけにはいかないからだ。
彼女と一日一緒に遊んでいると、やっぱり今どきの女の子なんだなと思う。
この間は、私の鞄の中に入っていた3DSを見つけて「何でもいいからゲームがしたい」というので、アバターの作り方を教えてやった。いろんな髪型や目や鼻や口がある中から自分に似ているものを選んで、分身を作っていく。
姪っ子ちゃんのアバターはものすごく可愛い。髪は絶対に長く、目は絶対に大きく、洋服は絶対にピンクだ。

「この子はみみかちゃんていうの。すっごくモテモテでみんなのアイドルなんだよ」

可愛らしさを煮詰めたようなアバターを見て満足そうに言う姪っ子。

「でね、こっちはマリンちゃん」「この子はマリンちゃんの彼氏のショウくんなの」

一番可愛いと思ったパーツしか使わないから何人作っても同じ顔だ。
「同じ顔作ったってつまんないじゃん。もっと個性的なの作ろうよ」と、髪の短い子や目の小さい子を作ると「やめて! せっかくかわいいアイドルなのに!!」と本気で怒る。きっとどの子も彼女自身で、大事な分身なんだろう。
ちょっといじわるな気持ちになって、写真から自動的にアバターを作る機能を教えたら、ちびまるこちゃんみたいなジミな顔が出てきて、一気に不機嫌になる。
まだ自分がわき役になることなんて考えてもいない7歳の姪っ子ちゃん。その地味極まりないちびまるこちゃんが自分の本当の顔だと彼女はいつ気づいてしまうんだろう。3年後? それとも5年後?
きっとそう遠くないうちに、一重の目や大きくてプクプクしたカラダにコンプレックスを感じてしまうときがくる。私がそうだったように。それを思うと、胸が痛い。

子供を持つことを諦めたとき、なんとなく「これからは現在だけを生きていくんだろうな」と思った。人が自分の過去を思い返したり、遠い未来のことを本気で心配したりするのは、子供の存在があるからこそだ。
いじめとか教育改革とか原発問題とかのニュースを聞いても、これまではどこか他人事だった。でも、こうして姪っ子の姿を見ていると、いろんなデータや言葉がものすごくリアルに迫ってくる。いじめで自殺した子のニュースなんかやってると、見ていられずにチャンネルを変えてしまったりもする。
もうすぐ夏休みが終わる。彼女は元気に学校に行けるんだろうか。自分の中にある世界と外の世界は違うと気づいて、傷ついたりはしないだろうか。
たぶん、傷つくだろうと思う。現代の東京で生きる彼女は、私が通ってきたのと同じ、いやそれよりもっと複雑で疲れる道を行くに違いない。

「ねえ、辛くてキーッてなりそうになったら、我慢しないでおばちゃんに言いなよ。みんな○○ちゃんの味方なんだから」
「んー、わかったー」
叔母の心、子知らず。聞こえてるのかいないのか、姪っ子ちゃんは上の空でひたすら可愛いアバターばかりを作り続ける。
小さくて、ブサイクで、わがままで、あさはかで、傷つきやすい私の分身。
これから先、嫌なことがたくさんがあっても、すぐに忘れてしまえますように。そして、少しでもたくさん笑って大人になれますように。

文=遠藤遊佐




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遠藤遊佐(C)花津ハナヨ
(C)花津ハナヨ
遠藤遊佐 AVとオナニーをこよなく愛するアラフォー女子。一昨年までは職業欄に「ニート」と記入しておりましたが、政府が定めた規定値(16歳から34歳までの無職者)から外れてしまったため、しぶしぶフリーターとなる。AV好きが昂じて最近はAV誌でレビューなどもさせていただいております。好きなものはビールと甘いものと脂身。性感帯はデカ乳首。将来の夢は長生き。
遠藤遊佐ブログ=「エヴィサン。」

市田 ブログのコミック化や新書等で活躍するマンガ家。
著書に『家に帰ると必ず妻が死んだふりをしています』(PHP研究所)、『日本霊異記』(KADOKAWAメディアファクトリー新書)など。
ウェブサイト=「http://urban.sakura.ne.jp」
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