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The ABLIFE January 2015
不遇の現代から起死回生を目指して「転生」した過去の世界で、妙齢のヒロインが彷徨う狂おしき被虐の地獄。裁き、牢獄、囚奴、拷問――希望と絶望の狭間で迸る、鮮烈な官能の美とは。読者作家・御牢番役と絵師・市原綾彦のペアで贈る待望の長編SMマニア小説。
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【7】被虐の嵐

ユキが永牢の罪囚の身となって、早二カ月あまりが経過している。

「おい、メス犬の奴よ。こっちへ来な......」

畳もないジメジメした湿気だらけの牢獄の床板に、蒸し暑さもある牢内で女囚たちは野獣のように囚われている。

大股を開いて、傍らの女囚に破れた団扇(うちわ)を扇がせている古参女囚のお沢が、牢格子にへばりつくように身をもたれかけさせているユキを呼んだ。

「はい......」

灰色の朽ちた木綿囚衣を素肌に一枚身に着けただけの哀れなユキは、立ち上がろうとしたが、お末に叱責された。

「こら、奴......! 卸牢内では、四つん這いで歩けと何時も言っているだろうが......!」
「は、はい......申し訳ありません」

ユキは牢名主の言葉で弾かれたように腰を落し、両手と両膝を床に付けて畜生姿になる。

「ほら、犬畜生のように着物の裾から丸裸のケツを晒して......ほんに、汚い女だねえ」
「しかも、尻たぶに大きな焼印まで押されて......これが女の尻かい?」

ゲラゲラと笑う女囚たちの前を、ユキは恥辱を噛み殺しながら這って進む。

彼女の右尻には、大きな「奴」という刑罰文字が、深々と刻印されている。

彼女が女牢に入牢して、翌日に施された烙印刑だった。

ユキは、尻だけでなく左の乳房の上にも「囚」の烙印を押されている。文字通り「奴囚」であることを柔肌に刻まれているのだ。

彼女は、そんな屈辱的な獄囚姿で、剥き出しの大きな乳房を乳牛のようにブラブラ揺らし、幾分薄くなった笞痕まみれの双臀の肉を左右に振りながら、二番役の前に土下座をした。

「......二番役さま、お呼びでございますか?」
「ちょいと股が痒いのさ。繁みの中に、虱様が住み着いていらっしゃるから手で取っておくれよ」

女しか居ない牢部屋の中で、お沢は恥もなく囚着の裾を捲り上げ、白い太腿を開いたまま股間の森を指差した。そこにはビッシリと毛虱の卵がこびり付いている。

囚人は、真夏でも月に一度、真冬も月に二度しか入浴できない。特に女の囚人は、男囚の入浴後の垢の浮いたドロドロの残り湯しか使用できない、酷い差別下にあった。

当然牢内は不衛生極まりなく、男女問わず汗と垢に塗れ、饐えた強烈な臭いが牢内を覆っている。

洗濯もしていないお仕着せの囚衣は、何年も着古された酷い代物だ。女囚たちが着ている大小穴開きだらけの獄衣を見ても、娑婆の小作女の着ている野良着のほうが、よほどまともであった。

薄汚れた獄衣一枚で白粉化粧も許されず、檻の中に囚われている女たちにとって唯一の楽しみは......同囚を苛めることであった。

あまりの不潔な女囚の下腹を見て、ユキは思わず嫌悪感の表情を露にしたが、抗う方法はない。

「はい......」

ユキは、お沢の臭い陰部に集る真っ白な卵を指で潰す。そんなユキの腋の下や、陰毛にも無数の虱の卵がへばり付いているのに、他人の恥部の害虫を取らねばならない......。

これが、牢内で最低の奴囚として生きるあたしの運命......。

「アア......何だか良い気分になってきやがった。やい、畜生め。このままあたしの女陰(ほと)を慰めておくれよ」

ユキは不条理な強要をされても絶対に反抗できない。もし、少しでもそんな素振りを見せれば、どんな悲惨なリンチを受けることか......。

彼女はこの二カ月間の女牢暮らしで、ここでの振る舞い方を嫌というほど骨身に刻んだので、もう抵抗することを止めていた。

「はい、承知いたしました......」

ユキは、顔を下げて、女の股間に首を突っ込んだ。獄衣から大きな尻を丸出しにしながら、獣姿の四つん這いになって、女囚の下腹に己の唇を近づける。そして、舌を差し出し女の汚れた陰部を舐め始めた。

ジュルジュル......と、なんとも言えず淫らな唾液の音が、暗い女牢内にこだました。

女たちは、この妖しく破廉恥な行為を食い入るように見つめている。

醜猥な視線を浴びながら、ユキは先輩囚の股間を吸い、舌先を伸ばし、汚れた陰部を舐め続けるのである。

「う、ん......良いじゃないか。久しぶりにお前の舌遣いを堪能したね。ようく舐めるんだよ。ほら、お前たち。おもしろいからこの牝犬の獄衣を剥いで尻の穴にアレを入れな」
「あいよっ!」

女しかいない、隔絶された牢内での淫行に、他の女囚も嬉々としている。

一人の女が牢の隅から棒切れを手にしてきた。それは一尺ほどの太い木の棒で、先には幾重にも囚衣の切れ端が巻かれていた。

これが女牢名物の「竿もどき」である。牢内では決して触れることのできない、男の肉棒を模倣した女たちの手製による淫具であった。

命令された女が、四つん這いになって尻を掲げているユキの粗末な囚衣を剥ぎ取った。剥き出しになった熟れた尻たぶには、「奴」の烙印文字が生々しく刻まれている。

昼尚薄暗い牢内で蠢く白い双臀の肉は、さながら異界の生き物のように見えた。

「さあ、この縄狂い。ありがたく竿もどき様をお受けしな」
「あ、アフウッ......ん!」

女たちは全裸の獣姿で痴行に耽るユキの尻肉を掴み、左右に開いた。黒く煤けた肛門と、すでに淫汁の滴る開いた陰唇が、女たちの眼に晒される。

「この色情アマ、人様の貝肉を舐めながら、もうこんなに濡れていやがる」
「これはまた挿しがいのある女の孔じゃないか」

女たちの色欲に火がつき、彼女らは手にした木の棒を、ユキの開かれた無花果の実に突き立てた。

ズブリ......ッという凄い音とともに、お沢の下腹に顔を埋めていた女の唇から、アア......ンと艶声が漏れた。

「さあ、思う存分堪能しな。この阿婆擦れは苛められることが、この上なく快感なんだからねえ」

お沢が悶えながら女たちに命じると、素っ裸の同囚の尻の割れ目に、何度も竿もどきを突き入れた。

「ウウウ......ア、アアン......ッ!」
「もっと、もっと苛めるんだよ。この女が根を上げるまでね」

狭く蒸し暑い女部屋は、淫行乱舞の間と化した。我慢できなくなった女たちは、勝手に自分の囚着を脱ぎ始めて全裸になると、ある者は壁に凭れて床に座り、股を開いて、己の指を肉棒代わりにして自慰に浸る。

「ねえ......ちょいと、あんたの身体を貸してよ......」

ある者は、女同士で絡み合いながら互いの股間を舐め回した。

こんな破廉恥極まりない情景が、女牢で日常茶飯事に繰り広げられていたのだ。

「あッ......い、いく、イぐうーッ!」

ユキは、口で女のオマンコに奉仕しながら、竿もどきの淫具で何度も膣の奥まで犯されて、一匹の牝獣となって咆哮した。そして彼女は、最後の一突きで昇天し、汚い牢床の上に恥業の果てに汗だくになった全裸の身を投げ出して、倒れ臥した。

「中々、面白かったじゃないか。ようし、お雪。お前には、もう少し褒美をやろう。さあ、この汚い牝犬を御開帳様にしな!」
「へえい......!」
「あ、うううく......っ!」

女たちは、素っ裸のままのユキを牢格子の前まで引き摺り、彼女を少し持ち上げ、尻が床に着かない場所で格子越しに背中を凭せ掛ける。そして、奴囚の両手を真上に上げて、囚衣の腰縄で縛り上げた。

ユキの両足首も同じように縄で縛ると、彼女の両足を掲げて左右に思い切りよく開き、縛られている両手首よりも高い位置で、それぞれの足首を格子に縄で固定した。

こうして牢格子に両手両足を大きく広げて固定された、哀れな女罪囚の浅ましい姿が、女たちの眼前に晒された。

露になった両腋の下は、この世界に来てから一年以上も手入れをされず、ボーボーになった虱の集る腋毛を無惨に晒している。

大股を開いて両足首を縛り付けられているので、恥ずかしい陰部も臍も丸出しにして拘束された、なんともふしだらな姿。卑猥な御開帳様と言われる牢内の壮絶な私刑であった。

「こ、こんな酷い恰好なんて耐えられない......どうか、お許しください」

牢格子に磔にされた奴女囚の哀願は、嗜虐に飢えた女たちの耳には届かない。

「何言ってやがるんだ、これからが面白いところじゃないか」
「......これから、もう一回この竿もどきを、開ききったお前の観音様に突っ込んでやろうかねえ」

彼女のくすんだ花弁から覗けるピンクの秘孔に、お沢の手にする竿もどきの木の棒が、深々と挿入された。

「うあ、や、やめ......ウッ......ウウ......ン。アン!」

一尺の硬い棒が、ほとんど全て挿し込まれるほど、ユキの下腹に深く吸い込まれた。

「よし、お前ら、夕飯時までこの狂った縄好きを自由にするがいい」

「エッ、本当かい。よし、この大の字にされたアマの身体を、十分堪能しようじゃないか......!」

牢格子を背に四肢を固定され、異物を挿入されたまま悶絶しているユキに群がり、色情に狂った牢内の女たちは彼女の身体を顔から足の爪先まで舌で舐めしゃぶり、唾液まみれにした。

「ほら、ついでにくすぐってしまえ!」
「あ、あぐぐ。や、止め......ひいいっ......!」

ユキは、剥き出しの腋の下や、足の裏を容赦なく指でくすぐられた。

「お、お願い......や、やめて......ヒイイ......ッ、くすぐったいよう......!」
「当たり前だ、くすぐったいようにしてるんだからさ」

ユキは、笑っているのか号泣しているか分からない状態で、絶叫と涙を際限なく迸らせた。

全身から大きな汗の玉を噴き出させ、下腹を突き刺す淫具の刺激に悶えながら、身体中をくすぐられ、舐め回される異様な感覚に悶え続ける......。極限とも言える状態の中、ユキの精神は、被虐を悦楽に変える縄狂いのそれへと完全に変貌していた。

彼女が格子に礫にされてから、すでに三時間程が経過している。

ユキは、漸く凌辱から解放されてもなお、牢格子に四肢を括り付けられたまま、荒い息で脱力していた。

夕闇の僅かな陽光を背に、女の恥部を余すところなく晒している哀れな女囚は、尻孔深く挿入された淫具の責め苦に悶えながら、漸く閉じていた眼を開いた。

この御開帳の私刑をくらい、半日近くも耐えてきた女はそういない。目の前の女刑囚が、想像以上の我慢と体力を備えていることに、さすがのお末もお沢も辞易した。

「ほんに、馬並みの心臓と肝だこと。さすがは永代奴の女だ」
「格子に括りつけられても、まだこの穴ぼこはグショグショのままじゃないか......とんでもないアマだねえ......」

女たちが、口々に開かされたユキの隆起する恥丘をマジマジと見つめながら、卑下の言葉を投げた。

しかし、辛い拷問にも耐えた性根を持つ女囚も、格子に縛られたまま、宙吊りに近い姿で長時間捨て置かれていることに限界を感じている。

「う、うウッ......」

自由にならぬ両手と両足首に全体重がかかるので、この上ない苦痛に襲われ、悶絶の声が干乾びたユキの唇から漏れる。縄で格子に括られたまま、宙に浮いている汚れた足指が、絶え間なく轟く。その光景は、女囚たちの眼に凄艶なものとして映った。

牢内の蒸し暑さにも嬲られ、また快感からくる脂汗で全身がヌラヌラと光り、大きな水滴がポタポタと牢の床に落ちていた。

「お雪......辛いかい?」

新参の女囚の涙に咽ぶ顔を見下ろしながら、牢名主のお末は、凄惨な喘ぎを漏らすユキの顎を小突きあげながら言った。

「......はい。とても辛いです......どうか、もうお許しください......」

ユキは、涙で潤んだ瞳で牢名主に哀願する。しかし、お末の返事は、無情極まりない。

「残念ながら、おめえは罪人としてこの御牢に閉じ込められているコイツらより、さらに卑しい非人の女奴......。この胸の文字のように、嫌らしい淫婦として、何時もこの股間に手を突っ込んで声を張り上げている、淫らな畜生女さ......。おめえは、こうして常日頃から欝憤の溜まる同囚の女たちの慰み物として、玩具のように扱われるお役目。それが仕事なんだよ――」

お末は、ユキの顔に唾を吐きかけ、髪を思いっきり引き上げた。

「あ、ぐううっ......!」
「お雪、おめえはこの牢の女たちの奴隷として、如何様な御命令も謹んでお受けする。裸になれと言われれば素っ裸になり、犬のように鳴けといわれればワンワン吠える......。だから、おめえは、こんなふしだらな姿で股を大開きにするしかねえんだよ......」

そう、それが奴女囚としてのあたしの運命......。

ユキは、汗と涎まみれの顔のまま、虚ろな瞳で女たちのいる暗い獄内を見つめる。

「いいかい、お雪。あたしは武家崩れの女は大嫌いだ。だから、あたしはこれからもおめえには、この牢内で生き地獄を味あわせてやる。もう死んじまいたいというくらいね......」

あまりにも絶望的な運命に、ユキは、牢格子に縛られ涙したままガックリとうな垂れた......。

(続く)

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