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the toriatamachan season3
女の子にとって、「美醜のヒエラルキー(それによって生まれる優劣)」は強大だ! 「酉年生まれゆえに鳥頭」だから大事なことでも三歩で忘れる(!?)地下アイドル・姫乃たまが、肌身で感じとらずにはいられない残酷な現実――。女子のリアルを見つめるコラム、シーズン3は「わたしのすきなこと」にまつわるアレコレです。私はその言葉の意味を完全に理解することはできないけれど、仲が良いから打ち明けたんだよという柔らかくて悲しい雰囲気だけは感じて、いつも何も言えないまま、爪のささくれのあたりをこっそり引っ掻く。
私はだいたいのことが人より良くなかった。
足は遅いし、体型は歪だし、いつも悲しかったし、考え方も変だった。
今でも、やっぱりだいたいのことは人より良くないと思う。
私にとって家族は、数少ない良いものだ。
この人達と血が繋がっていることは、完璧なことだと思う。
料理人の子供が複雑な味を理解できるように、司書の子供が良質な本を読めるように、私は絶え間なく家族から安心を与えられてきた。
でも、私はこれを言葉にすることを避けてきた。
高校の昼休み、女の子が昔の万引きでも告白するみたいに、「家族、仲良いよね?」と聞いてきた。私の家族は仲が良い。家族で旅行に行ったこともないし、何をしていたか互いに知らない日もたくさんあるけど。そして彼女の家族も仲が良い。「うちもね、仲良いの」と、なんでもないように言う。私は、うん、と応えた。彼女も小さくて賢い鳥みたいに、うん、と言い返す。私達は見つめ合いながらわかっていた。
なんとなくそれを、大きい声で言ってはいけない気がすることを。
彼女もだいたいのことが人より良くないタイプだった。いつも悲しそうだったし、考え方も変だった(その代わり彼女はとってもスタイルがよかったけど)。
私達の友人は、酒癖の悪い父親から夜ごと怒鳴られていた。酔っ払っているところを撮影して、本人に見せたら少しだけ大人しくなったと話していた。母親が父親の前で平然と不倫相手と電話するので、憤っていた子もいた。両親とわかり合えずほとんど家に帰らない子や、両親を罵倒する子もいた。
私達ふたりは、だいたいのことが人より良くなかった。だいたいに入らないのが、家族だった。
良くないことが多すぎて、自分達がなんて声をかけられたら嬉しくなるのか、楽になるのか、わからなかった。あるいは、誰になんと声をかけられても、嬉しくも、楽にもならないことを知っていた。だから友人達の事情を聞きながら、いつも黙っていた。私達はふたりとも遠くを見たり、お弁当を食べたりしていた。
「人に迷惑をかけないように早く死にたい」と言われる時、私は迷惑をかけてほしいと思ってしまう。たくさん迷惑をかけてほしいと思う。私は祖父が、忙しい時期に病気になって亡くなっていったことも嬉しかった。忘れるなと言われている気がしたから。
私の愛情はもしかしたら距離感がおかしくて、警戒心がなくて、重たいのかもしれない。もうすぐ母親が私を生んだ年齢を過ぎてしまう。私はいつか、家族から与えられている絶対的な安心を、誰かに与えられる人間になれるのだろうか。
心許なくなる。
文=姫乃たま
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