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The ABLIFE April 2015
不遇の現代から起死回生を目指して「転生」した過去の世界で、妙齢のヒロインが彷徨う狂おしき被虐の地獄。裁き、牢獄、囚奴、拷問――希望と絶望の狭間で迸る、鮮烈な官能の美とは。読者作家・御牢番役と絵師・市原綾彦のペアで贈る待望の長編SMマニア小説。
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【最終回】終の棲家へ

さらに最近のユキは、拷問蔵で軸足の指先が地面に触れるばかりの状態で片方の足を後ろへ折り曲げられ、両手首を吊っている天井の滑車に繋ぎ留められたまま放置される、過酷な縛り責めを十日間も受けた。

彼女はその後、全身を真っ裸に剥かれ、割座の姿勢で右手と右足首、左手と左足首を厳しく緊縛された姿勢で、拷問蔵の床でうつ伏せに転がされていた。

両膝を折り曲げ四肢を互いに繋がれた状態で前のめりになり、霜柱さえ立っている拷問蔵の土間床に顔をつけている女罪人の尻肉は、宙に浮き上がっている。

その熟れた巨尻が、先ほどから何度も激しく痙攣し、暗闇の中で艶かしく揺れている。

「ウウ......ッ、ウウ......ン!」

苦痛に顔を歪め悶絶する試し台の女の額や頬には、極寒の中にもかかわらず汗が噴き出し、顎先からポタポタと滴り流れている。溢れ出す涙と鼻水で泥や砂埃が肌に容赦なく張り付き、グシャグシャになっている。見ている者からすれば、凄惨という以外にない表情を成していた。

顔面だけでなく全裸の女囚は、全身に玉のような汗粒を噴き出させ、乱れて地を這う黒髪もベッタリと濡れている。その壮絶な肢体が、役人たちの目に晒されていた。

「ウウッ、アア......ン!」

ユキが、時折顔を上げ、苦悶に咽ぶ妖艶な姿に連動して地べたを踏ん張る足の指が虚しく空を蹴る様は、被虐美さえ匂う。

「さすがは、十日間の片足逆海老縛りの吊り責めにも耐え抜いた奴よ......。この霍乱(かくらん)責めを受けてもう二刻にまでなるのに、未だに根を上げぬとは......」
「本日は他の責め方の研修ということで集まってもらっているが、これではこの責めだけで終わってしまうかも知れぬな」

阿鼻叫喚の地獄に裸身を蛇のようにくねらせながら、煩悶する罪人女の周囲を囲む同心たちは、地面にへばりつき悶える女尻を見つめながら、「まるでこの猥らな尻が生きているようだ......」などと彼女の羞恥心を構いもせず言葉している。

ユキがその身に受けている「霍乱責め」......それは非常に辛い拷責の一つである。

その拷問は罪人に強力な下剤を飲ませ、尻孔に栓をしたまま縛り上げるという残酷刑であった。

ユキはまさにその拷責の真っ只中にいた。二刻前に腹下しの薬を飲まされ、肛門は太い棒栓で蓋をされており、簡単に排便できないようになっていた。

強力な薬の効果はたちまち表われた。猛烈な痛痛が絶えず胃や腸を突き刺し、ユキの下腹は傍目からみても激しく蠢動を繰り返していた。

「ウッ......ウウ......シ!」

腹部からギュルギュルと胃腸が悲鳴を上げている音がする。ユキは冷や汗を垂らしながら蒼白な顔を上げて、彼女を冷たく見下ろす同心たちに哀願した。

「も、もうこれ以上は......あ、あうウウ、ン......!」
「まだだ。責められ好きの縄狂いのお前には、この責めなど朝飯前だろう。あれを持て」

四肢を緊縛されたまま、全裸で悶絶する女罪人の眼に映ったのは、役人の手にする非情な革製の黒鞭であった。

「これはな、紅毛の国に伝わる鞭だ。我々が拷問に使う箒尻(ほうきじり)と比べ弾力があり打撃力もある」

そんな、SMプレイに出てくるような鞭で......。

ユキは下剤の効果で絶えず襲い来る腹痛に、冷や汗と涎をダラダラ流しながら戦慄した。

同心は黒革の鞭先をあて、猥らにくねらせている女科人の烙印された尻たぶの「奴」文字をスッと舐めた。

「う、ウウッ......お、お願い......ゆ、許し......」

ユキは泥まみれの顔をもたげて、同心に哀れみを乞う表情を見せた。

その彼女の裸尻に向けて、同心の手にする黒光りする刑具の刃先が、唸りを上げて振り下ろされた。

ビュウウ......ッ!

「ヒッ、ヒギャアア......ッ!」

それは人間の悲鳴ではなかった。奴の女囚の乾いた唇から獣の咆哮にも似た叫びが迸った。

空気を鋭断した鞭先は、凶器となって女の剥き出しの尻肉の上で弾けた。

一瞬、柔肌が痙攣し、その後に猛烈な疼痛が背筋を這い上がってくる。

「ウッ......ウウ......ン!」
「ほら、もっと踊り狂え」

バシイイ......ン!

「ウ、ギャアア......ッ!」

そんなやり取りが延々と続いた。

ユキは霍乱の責めを受けたまま、尻肉だけでなく露になった背中を西洋の鞭で打たれながら思う......。いったい何時までこの地獄の苦痛を味わなければならいいのか......。

苦みと苦しみが頭の中でドロドロに混濁し、阿鼻叫喚の悲鳴を張り上げ続けた。

女座りで縛り上けられたままの女囚の裸身に、真っ赤なミミズ腫れが幾筋も刻まれ、臀部に施された罪人文字が、さらに鮮明に浮き出すほどになった。

背中から臀部、さらに何年も前に彼女が自分で舐めた両足の裏まで鞭打たれた。

全裸の女囚は、全身赤紫色に変色し、肌肉が裂け血塗れになっていた。

それでも四十七歳にもなったユキは、この地獄の責苦に耐え続けたのである。

いや......。

それどころか、あれだけ悲鳴を上げ続けていた彼女の身体は、鞭打たれるたびに、妖しく艶めき悦虐に咽ぶ淫らな女体へと変貌していた。

アア......なんて気持ちが良いんだろう。

「......何という女だ。霍乱責めを受けたあげく、この異国の鞭にすら根を上げぬとは」
「しかも、こんな酷い身体になりながら、鞭打たれるたびに嬉々とした声すら上げておりますぞ」
「さすがは淫乱稼業で男漁りを繰り返し、骨の髄まで数多の輩を吸い尽くした、蟷螂のお雪と呼ばれただのことはある。なんと下劣な囚徒よ。これが昔、我等と同じ人の女であったとは到底思えぬ......」

もう良い......縛めを解いてやれ、と辟易のため息とともに命が下りた。同心が、ハアハアと肩で息をする汗だくの女罪囚の縄目を外す。

見るも無惨な体を晒し、尚も腹痛に喘いでいる哀れな女囚の姿を見ながら、

「尻の栓も抜いてやれ。開いた孔から糞が一気に出るから注意されよ」

と、さらに命が飛ぶ。

役人がユキの裸尻の前にしゃがみ込み、顔面蒼白で汗だくになりながら拷問蔵の土間でのたうつ奴女の突き出した尻の裂け目に、深々と食い込んでいる刑具の先に結ばれた紐を引っ張った。

ブスッ......!という空気の抜ける異音と共に、女囚の肛門から大量の茶色い水便が噴射された。

「ウッ......クアアーッ!」

甲高い鳥の鳴き声のような悲鳴を迸らせながら、手足を拘束されたまま醜い排便の痴態を晒す女罪人の何とも浅ましい姿......! ユキの座す床は忽ち悪臭と汚物まみれになった。

「何とも下劣な......。こんな風になるまでよくも我慢できるものよ」
「これが責められ好きの畜生女だ......あまりにも酷い成れの果てではないか」

呆れ返る同心たちの前で、指南役の筆頭同心は、足元で裸身をくねらせながら、尚も尻孔から下痢便を噴出して悶絶している畜生女を冷ややかに見下ろし言葉した。

「この牝奴に情けなど無用でござる。このように獣姿で縛されたまま、高らかに裸の尻を宙に突き上げて大小便を垂れ流す女など、最早人の身とは思えぬ。下賎の極み......こやつはもう決して人には戻れぬ畜生の端女なのです」

ユキは辛辣な言葉を汗まみれの肌身に浴びせられ、激しく悶絶しながら、しかし言葉にできない陶酔の中で思った。

そうよ......これが二十年間此処で暮らした挙句、底の底まで落ちぶれたあたしの姿――。

畜生よ、ケダモノよと揶揄されても仕方のない酷い自分の姿がそこにあった。

この牢獄で、散々鞭打たれた傷だらけの乳房や臍のみならず、尻の孔すら剥き出しにしているあたし......。

霍乱責めの拷問で、排便すらも操作され、四肢を縄で縛られたまま土間に転がされているあたし......。

漸くその地獄の責めから解放されたのも束の間、露出した尻を汚物まみれにして床を汚し、まるで野良犬のような無様なこの姿を見て、誰が憐れみをかけてくれるだろうか――!

糞尿まみれの尻を晒した女囚は、未だに襲い来る下腹の疼きと便意に苛まれながら、罪人文字の刻まれた汗と埃まみれの肉を猥らに揺らしている。

「確かにこんな阿婆擦れの非人女に、同情の余地など一片もありませんな......」

「それでは、今日の試し台を終了します。後はこの牝犬をどのようにでもしていただいて結構です」

そう言うと、指南役の同心は下卑た笑みを零した。

どのようにでも......御験し台にされている奴女囚の真なる地獄は、まだ続くのである。

「このような牝畜の糞まみれの尻など、性欲の捌け口にもならぬが、下級役人の我らに江戸吉原の花魁は高嶺の花......。牢屋の女罪人で我慢せねば仕方あるまい」

裃の裾をからげ下肢を晒した同心の褌は、すでに硬く勃起した男根を露に剥き出している。

男は牢屋下男に、土間床に転がされている女囚の汚れた尻を洗うように命じた。

下役は巨大な水樽から桶に水を汲むと、突き出したユキの爛れ開いている肛門へ無造作に振りかけた。

「ウッ......アア......ン!」

哀れな女罪人は、熱く火照った柔尻に冷水を浴びせられた衝撃に身を捩じる。冷気で素肌から白い湯気が立ち昇った。

拷問蔵の女囚は、赤紫色のミミズ腫れが走る笞痕の傷も痛々しい尻たぶの肉を、まるで肛門から直腸まで雷撃を受けたように戦慄かせながら、惚けたように淫らな声を絞り出した。

「見てみろ......。こんな酷い責めをくらっても、色情狂いの獣のような声を上げておるわ。これは我等の一物を欲しくて仕方ないと言っていると同じであろう」

同心は卑猥な冷笑を浮かべ、びしょ濡れになっている女の割れ目に己の男根を挿入した。

「あ、アア......ッ!」
「ほうれ、武士の御印を有難く頂戴せよ......!」

彼女は日々実験体に処された後、こうして役人たちからの恥辱の処遇を受けているのであった。

もう何度......いいえ、何百回こうして犯されただろう......。

そんな思いに浸る間もなく 強烈な震動と衝撃が、ユキの下半身へ大津波のように何度も押し寄せてきた。

「ウウッ......ムムゥ......ッ!」
「ほら、蟷螂のお雪と穢れた名を与えられただけあって、何ともいえぬ卑猥な声をあげるではないか」

同心の剛棒が、ユキの黒ずんだ秘貝の肉を擦り上げ、否応なく責め立てる。

脳天を直撃するような悦楽の高ぶりに、背後から犯されている女罪人は髪を振り乱して猥らに腰を振っている。

「あ、アアン......アアーッ!」
「凄い。もう陰穴から汁が溢れておる......いつも思うがこの年増女の局部は、すでにボロボロのはずなのに、男にとっては千両箱に等しい」

同心は恍惚としながら喘ぎ声を吐き、後の者も控えておるのでここらで......と強烈に己の下半身を何度も哀れな女尻に突き上げた。それが陵辱に悶える女には絶頂の鐘に聞こえた。

「アッ、い、イヤッ......い、イクーツ!」
「今まで何十回、何百回もイッただろうが。今さら何だ。それッ......!」

拷問蔵という特殊な場所での恥行に浸る一人の牢役人と、全裸に剥かれた女囚の身体が一瞬静止した。

一息置いて、大きなため息を吐きながら同心が自分の肉竿を女罪囚の尻から引き抜くと、白濁した精液が、ユキの笞痕の刻まれた巨尻の割れ目からドッと溢れ垂れた。

「何とも艶めかしい......こんな汚れたアマの尻でさえ、本当に女人の尻肉とはこうも男を惹き付けるのか」

別の役人の露出した下腹部が、再度ユキの柔肉に吸い込まれ、そして猥らな性行為が始まる。

こうしてユキは、拷責め後の陵辱を五人の男たちから次々と受けた。それは、何も特別なことでないばかりか、何時もより人数が少ないほうである。験し台の日、多い時は十人以上の男から緊縛されたまま輪姦されることも日常茶飯事だった。

ユキは強姦によって子種ができ、懐妊する度に女囚たちの手で強制的に堕胎されていた。その影響で二度と子どもの産めぬ身体になっている。

女としての機能をなくした、木偶人形と同じだね......。

女囚たちから言われた言葉で、完全に人間として否定されてしまったように思えた。無性に悲しくなり、あたしは五十歳間近の孤独な熟女囚よ......と悲涙に鳴咽をかみ殺し、牢の片隅で忍び泣くこともある。

「ああ、気持ちよかった。久しぶりに女の肉孔を堪能した」

同心たちが満足げな表情を浮かべている。彼ら役人の眼下には、ボロ屑のように手足を縛られたまま生傷だらけの裸身を土間に横たえ、穢された尻を突き上げてグッタリしている女罪人の哀れな姿があるのみであった。

そして、今......。ユキは中庭の地面に打ち込まれた杭に縄付きのまま括られ、雪の積もる地面に直に座らされている。

唯でさえ、外は極寒の真冬にも拘わらず二十年も着続けた襤褸切れ同然の灰色の囚衣一枚で、雪面に露出した生足を付けて正座させられているのだ。

彼女はすでに三時間以上も雪の上で身を凍らせていた。剥き出しのまま晒された尻孔を冷気が犯し、女の身体を芯から底冷えにさせている。

獄衣の裾から出ている太腿と膝小僧は、ガクガク震え、凍気に晒された肉尻の下に重ねられた裸足の足鎖が、カチカチ絶えず音を奏でている。

「ウッ、ウぐぐウ......ッ」

彼女の口からは先ほどから呻き声しかでない。胸縄を施され、女囚衣から凄惨にはみ出した、ついに張りを失い垂れきった乳房の黒ずんだ乳首も、あまりの冷たさで勃起している。

ああ、辛い......。こんな、こんな辛い責めを何故受けなければならいの......。

自問自答する女罪囚は、全身血の気が引いて蒼白になり、寒気で身体中の震えが止まらない。

「まだ、我慢しておるか......。やはりトンでもない女だな」
「足の指も、先ほどまで真っ赤だったのに今では雪のように真っ白だ」
「片足吊り、海老責め、逆さ吊りに、逆海老縛り......ありとあらゆる縛り責め、ありとあらゆる拷問術にも耐える女ですからな。縄狂いの畜生として、これからも良い験し台となるでしょう......」

このまま暫く様子を見ましょう......。さらにユキはこの場に放置されることになった。

昼過ぎには空は灰色になり、真綿のような雪が静か降り落ちてきた。

雪は幾重にも彼女の裸出した両肩や白髪の頭の上に降り積もり、ユキの意識も次第に遠のいていく......。

もうあたしは現世には帰れない――。

そう、あのテレビや自動車に囲まれた現世こそが、あたしの過去の世界になってしまった。

ユキは雪責めを受けながらそう思った。二十一年も、この江戸時代で女囚として捕らわれたまま過ごしてきた。今さら何かの拍子で、あの芦田のいる洋館に戻ることがあろうとは、毛頭考えられない。あたしはもう村上ユキではない......。

「あたしの名はお雪......。前世は、村上ユキでございます。この空から降り落ちる雪の如く、冷えきって、何もかも真っ白な雪尽くしの哀れな奴女囚でございます......」

ユキは冷気に慄きながら、震える声でポツリと口から吐き出した。

この牢屋敷に死ぬまで繋がれたまま、これからも、おぞましい苦役に身を投じるお雪こそが、本当の自分の転生した女囚なのだ......。

そして彼女は雪を被りながら思う......。この牢屋敷の女牢こそが、恥獄の前世に転生した、哀れなあたしの終の棲家なのだと――

(了)

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