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the toriatamachan season3
女の子にとって、「美醜のヒエラルキー(それによって生まれる優劣)」は強大だ! 「酉年生まれゆえに鳥頭」だから大事なことでも三歩で忘れる(!?)地下アイドル・姫乃たまが、肌身で感じとらずにはいられない残酷な現実――。女子のリアルを見つめるコラム、シーズン3は「わたしのすきなこと」にまつわるアレコレです。わが家の誕生日は、冬から春にかけて詰まっている。母が11月、弟は1月、私は2月、父が4月生まれだから。どんなに忙しくても、家族の誕生日と元旦には休みをとる。私にとって冬は家族の季節だ。そしてうちは、サンタさんが来る家でもある。
小学校の同級生の中には、クリスマスの夜にトナカイの鈴の音を聞いたという子がいた。お母さんがサンタさんからお金を預かっていて、現金をもらっている子もいた。うちはクリスマスツリーにサンタさん宛ての手紙を飾っておくと、クリスマスの朝、窓が少し開いていてプレゼントが置いてあった。煙突がないので仕方ない。
このサンタさんの対応の違いはなんなのだろうと、子供の頃ずっと考えていた。いい子にしてないとサンタさんは来ないと言うけど、子供はいい子かわるい子かだけでは分けられない。現金をもらう子もいれば、物をもらう子もいる。家族もそれぞれ違うから、サンタさんはちゃんと見ているのだと思う。サンタさんと直接会ったお母さんがいれば、電話だけなら出来るお父さんもいるらしい。
いつか弟と一緒に、サンタさんにクッキーを作ったことがある。クリスマスイブの夜に牛乳と一緒にツリーの下に置いて、サンタさんを待ち伏せしていたけど、気がついたらふたりとも眠っていた。
朝になるとツリーの下に、まるで赤ちゃんが食べたようにクッキーの食べかすと牛乳が飛び散っていたので、弟と顔を見合わせて、「サンタさんって本当に忙しいんだねえ」と目を丸くした。今でもあれはどういうことだったんだろうと、少し可笑しくなる。この間、母親に聞いてみたら、「忙しかったんじゃない?」と言っていた。
お正月は東京に住んでいる父方の祖父母と、それから伯母と過ごす。
おせちの具材は、年末に築地で買い揃える。メインは鮭の酢漬けで、少し甘い。これは祖父がまるまる買った鮭を包丁で解体して作ってくれる。
祖母は普段怖がって揚げものを作らないけど、お正月にはからあげを作ってくれる。大きなお皿に盛りつけて、きれいに飾り付ける。去年は、「Merry Christmas」と書かれたプレートが刺さっていた。英語は読めないのだ。でも、おめでたい感じがする。
おせちを食べて一通り会話すると、みんなすることがなくなって、それぞれテレビを観たり、座布団やなんかに適当に寝転がる。たまに起きては、喋ったり、おせちの残りを食べて、また眠る。伯母はここぞとばかりに、去年買って使わなかった化粧品や衣類を私に試してくる。可愛い人なのだ。
外にいる時の私は、いつも戦っている。笑顔で、目を見開いて。私にとって、いいことも、わるいことも、どちらでもないことも、毎日たくさんある。
戦って、帰宅して、寝静まっている家族を起こさないように、そろそろ部屋へ向かっていると、たまに忍者みたいな気持ちになる。湯船の蓋を開けると、ゆずが入っていたり、菖蒲が浮いていたりするので、忍者は時々驚く。
仕事が終わらなくて明け方に帰宅して、湯船にゆずの残骸が漂っていたり、食卓の上で七草粥が冷めたりしている年もある。
そういうものを見た瞬間、私は忍者じゃなくなる。どんなに戦っても、帰る家があることに気が付く。だから、しきたりが好き。それを教えてくれる季節と、家族が、私にはある。
2016年は「私もそうなりたい」と思うことが多い年だった。いつも笑顔の人を見ては、私もそうなりたいと思い、好きな時だけ笑う人を見ても、そうなりたいと思った。
去年から鮭の酢漬けは、母が作るようになった。私は今年で、母が私を生んだ年齢を追い越す。でも私には子供がいないし、当たり前だったことが少しずつ変わっていって、そうなるはずだったものが、そうならないことに気づいていく。
私はまったく同じようには、この家族を作れない。やっとそこのことに気が付いて、誰かみたいになりたいと思うことが増えたのだろう。今は将来の自分の家族を思うと、違うクリスマスを過ごしていた友達の家のことみたいな、変な感じがする。家族が作れないまま死んでいく自分もありえる。次の冬、私はどうしているのだろう。今年の冬は、家族といた。
文=姫乃たま
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