Goldman presents The Rock'n Roll Ero-Manga
鬼才AV監督・ゴールドマンがお勧めのエロ漫画を熱く語る!
淫語インストラクターにして官能小説家、そしてベテランAV監督であるゴールドマン氏が「ズリネタ」として唯一活用しているモノ、それは「エロ漫画」だった! プロのエロ事師は何故、「エロ漫画」でなければヌケないのか、「エロ漫画」にしかない魅力とは、一体何なのか。ゴールドマン氏が実際にズリネタとして使用している大好物な作品たちについて、編集部がインタビューを敢行。好評につき続投中です!!編 ゴールドマンのロックンロールエロ漫画、第19回です。今回ご紹介していただくのは。
ゴールドマン(以下「ゴ」)momi先生の『恋乳ているず』(マックス)です。イマドキ感満載でね、帯には「超大型新人が放つ極上おっぱいエロス!!! 衝撃の大注目1stコミックス!!! 艶髪ツインにむっちりおっぱい...この娘とヤリたい」というコピー。
編 この表紙、かなりインパクトがありますね。
ゴ この表紙だけでいい感じのエロ漫画、というよりイラスト集のようなニュアンスがあるよね。
編 この艶のある黒髪のツインテール、でっかいリボン、そしてはちきれんばかりのやわらかそうな胸、締まったウエストと、おっきいお尻にニーハイを穿いて、パイパンの下半身には薄い透け透けの下着が張り付いています。
ゴ まるで昭和感がないよね。
編 一切ないですよ。というわけでmomiさんの作品を見ていきますが、これはポプリコミックスなんですね。
ゴ そう。井ノ本リカ子先生の『娘これ♀』もだね。内容的にはやはり、ピュアラブな感じ。
編 冒頭のカラーページ、シルバーな髪の毛のいかにもチアガールっぽい格好をしたツインテールの娘さんがチンコを舐めてるところから始まります。
ゴ しっかり性器も描いてる。さすがに陰毛はないね。
編 ツインテールという造形もそうですが、出てくる女の子がアニメというか、キャラっぽいですよね。
ゴ そうなんだよ。顎の小ささといい、アニメ造形というかね。エロ漫画は、特にフェラチオのときにあんまり顎が小さいと描ききれないところがあると思う。だから全体的にフェラチオシーンがちょっと短いかな。
編 なるほど。イラマチオみたいなガッツリ根元まで咥える描写が、顎が細いと描きづらい。
ゴ ということじゃないかな。
編 なのでこの冒頭にあるような、亀頭をチロチロ舐めるくらいの描写になると。
ゴ まあ仕方ないよね。
編 出てくる男性も、その辺にいそうな男子ではなく、アニメキャラ的、漫画的な男子が描かれています。
ゴ 女子と比べるとよりリアリティがないね。あと着目したいのは着衣率。自分は全裸というのが苦手なんだけど、このmomi先生の作品では、女子がほぼ全裸にならない。衣装を残しつつ胸を出したり、局部は結合するとき露出するけど、極力脱がずに最後まで......というのが好感持てるよね。
編 脱がせないからだと思いますが、布地が体に張り付く描写が多々ありますね。
ゴ うん。パンツがウェットな感じ。一番気になったのはね、「どぎまぎ家族計画」で、公園で先輩の彼氏とイチャイチャしてるときに、アイスをこぼしちゃったからなんだけど、自ら水道でわざと濡らして濡れ着衣にするところ。
編 胸を強調した変わった形の制服が透け透けになってます。
ゴ ここらへんがピークのような気がするね(笑)。
編 もうここだけでいいぞと。
ゴ 本当はね。一応エロ漫画だからセックスシーンもあるけど、この張り付いてる感の汁気がいい。
編 そして最近の作品らしく特徴的なのは、開いてる口の輪郭がグチャグチャしてますね。これでほにゃらかに感じている様子を表現する、というのが最近の傾向のように思います。
ゴ トロ顔というんですかね。
編 そして、先ほどもご指摘いただいたように、なかなか根元まで咥え込むフェラチオは描かれてないですね。
ゴ ペニスは太くてしっかり描かれてる。momi先生は釣鐘というかロケット型、柔らかそうなんだけど先が尖って垂れ乳ではない、張りのある乳房を描くんだよ。
編 これは本当に特徴的で素晴らしいですよね。
ゴ うん。下から描かれてるおっぱいが凄く多い気がする。いわゆる下乳ね。下乳感で、ロケット感もありつつ、柔らかさもある。あんまり見ませんよね。
編 性器の描写はどうですか。
ゴ ちゃんと奥まで、下手すると子宮じゃないかっていうところまで描かれてるよね。そのへんのバランス感覚が絶妙。
編 ペニスの描写も、リアルといったらおかしいですが......。
ゴ そう。この手のアニメ的なキャラなのに、性器はしっかりとリアルというかグロテスクに描かれてるんだよ。
編 たまにちょっと陰毛、ありますね。
ゴ 若干ね。よくアップで見ると毛が残ってる。やっぱりマニア気質なのかも。
編 そして結合シーンはガッチリ描かれてます。あともう一つ、汁気が非常に多いです。
ゴ 常に濡れそぼってるね。
編 濡れそぼってるし、服を着てるし、ツインテールで、その辺のグラデーションといいますか、帯にも艶髪とありましたが、髪の毛の光沢、さらに肌の光沢もあり、そこに服の光沢もあり、柔らかそうな皺であったり、そしてもちろん女の子の感じている表情などを含めて、とても情報量がある絵ですよね。ある意味雑多にも見えると思うんです。
ゴ そうだよね、そこまで必要ないんじゃない?っていうくらいまで工夫されてる。そういう部分も含めて女性的な感性を感じるね。設定もお互いに好きだったり、キスから始まったり。
編 物語には純愛的な要素が常にあって、間違っても凌辱される展開はないですね。
ゴ やっぱり凌辱というのは昭和で終わってるということなのかな。
編 (笑)。
■赤ちゃん発言にみる貞操観念とエロ漫画の関係
ゴ 「プリティ・ぶれいく!!」っていう、ありがちなアイドルネタの話があって。アイドルとその従兄弟がマネージャーになって、昔からよく知ってる二人なんだけど、写真撮影の現場でね、女の色気がないといわれた彼女が、頑張ってそのマネージャーとエッチすることで女らしさを出そうといろいろやっちゃうわけ。そこで普通にエッチしてるかと思ったら、こういう台詞がある。「翔兄の赤ちゃんッ 欲しいのッ」「エッチなミルクッ」「優菜のオマンコにッ」「ビューってしてくださいッ」「あッ 妊娠ッ 妊娠するのッ」「産むッ 産むのぉ ぁかちゃん」というね、「あかちゃん欲しいの」って言ってセックスする、この感覚。
編 これは本当に昭和の時代、いわゆる凌辱をベースとしたセックスからでは、絶対生まれない台詞ですよね。
ゴ そうだよね。逆だよ。孕みたくないから中出しは絶対しないでということで、僕らは興奮してきたから。
編 ところが今はそうではなく、真逆になってる。「赤ちゃんッ 欲しいのッ」「妊娠ッ 妊娠するのッ」「産むッ 産むのぉ ぁかちゃん」。
ゴ こういう世界観というのは、さっきの「どきまぎ家族計画」では、最初が「子供ってかわいいよねー」って公園のベンチで彼氏がつぶやいたことで、「子作りしたいんですか?」っていう流れで始まるけど、最後のほうでまた「あかちゃんのもとッ いっぱいッ」「出してぇ...」っていうふうになるんだけど、これなら納得できる。でもアイドル設定で、楽屋でセックスしてるのにそういうふうになる感覚は、僕ら古いオナニストからすると新しいなって思うよね。どうなんだろう、今「あかちゃんのもと出して」みたいな作品、他にも結構あるからね。
編 最近のエロ漫画では妊娠確実みたいな、孕む孕まないみたいな要素がセックス中の表現として普通に出てきますよね。
ゴ 興奮する要素になってるんだね。
編 そういうことなんでしょうね。その感覚は正直言って私にもないです。
ゴ それはやっぱり感覚が古いってことなのかな(笑)。そこが一番気になるね。
編 なるほど。
ゴ キャラのフォルムにはイマドキ感があるよね。特に最近アニメやフィギュアが大好きだから、これでオナニーしていくともう昭和に戻れない感覚はあるけど、メンタルな部分では、じゃあ赤ちゃん産んで育てるの?っていうさ。
編 (笑)。そうやって現実的な問題に立ち返ると、萎えちゃうところがあると思うんです。「ケンジならッ 特別にッ」「出してッ なかにッ いっぱいッ」って言われても......。アダルトビデオでも中出しはありますよね。でもその時に赤ちゃん云々っていう話はしませんよね。
ゴ うん。赤ちゃんって言葉が出ると男は萎えるような気がするけど、イマドキのオナニストはそうじゃないのかな。
編 その先の未来をも感じさせるという意味で、より純愛要素を強めてるんでしょうか。
ゴ だから愛なんだろうね。
編 現実的な未来の問題云々で萎えてしまうことよりも、純愛の強さみたいなものが勃起と興奮を高めていると。
ゴ 全部含めて、セットでね。昔の凌辱テイストが入ってないとダメみたいな男はさ、やっぱり女はしょせんやり捨て感覚だから。
編 極端な話、女を穴としか思ってないみたいな。
ゴ やりたい女と付き合いたい女は違うみたいなこともあるじゃない。そういうのが今は、一体化してるのかね。好きな人としかしないというね。
編 本当に特徴的なセリフがありまして、さきほどの「家族計画」の次に載っている「友達イジョウ妹?ミマン」なんですが、これは挿入してる最中に「一つだけお願いッ 聞いてッ」「なんでしょう」「こ...このま...ま...」「さ...最後まで...」「責任取って...くれる?」(笑)。
ゴ (笑)。
編 非常に分かりやすい台詞が出てくるんですね。そして「本当のッ」「家族になりたいよッ」。
ゴ 逆に、昔っぽい感じがするね。
編 一周回ってですか。
ゴ うん。僕らの高度成長期の反動でスレた世代のもっと前。お見合いしてちゃんと結婚した人たち。
編 貞操観念みたいなものが、しっかり根付いていた時代ですね。
ゴ そう、貞操観念のある人たち。逆に古い感覚なのかもしれないね。
編 ということは、スレた昭和世代ではなく、純な昭和世代であると。
ゴ 戦前じゃない?
編 それくらい昔の感覚なんですね(笑)。
ゴ 貞操観念がある人のエロ漫画だね。
■通常の人の営みとしての性愛行為をいやらしく描くということ
編 そうやってお話を伺うとこれが今の時代感とマッチしてるのなら、さとり世代というか、彼らもそういう価値観なんですかね。
ゴ さとり世代というのは無駄遣いしないし余計なことしない。真面目だよね。我々が歪んでただけであって。
編 (笑)。さらにもうひとつ先の作品で「ドキドキふれきしぶる!」。これは新体操部の生徒と先生のやり取りで、いつもと同じように接してハメて中出しするんですが、最後の1ページ、予後のシーンで「こ...これからもオレが...」「ずっと面倒見てやる」ということが示されるんです。
ゴ 僕は35、6年エロ漫画でオナニーしてるけど、これはなかったし、そういったテイストのものを読んでこなかったのかもしれない。これはまっとうな人間が読むズリネタなのかもしれないね。......なんか、歪みに気づいたな......。
編 ご自分の(笑)。
ゴ うん。でもどうなんだろうね、赤ちゃんっていうワードで興奮度が高まるのは、やっぱり嬉しいっていうことなのかな。
編 そこまでいくと、エロ漫画がオナニーツールとしてだけではなく、ラブコメを読むような体験に近づいていきますね。
ゴ 単にオナニーとかズリネタとか、分けて考えてること自体がもう古いのかもしれない。
編 オナニーも出来るのは嬉しいことだけど、登場人物たちの純な恋愛模様プラスセックスを楽しむみたいな、単純に自分がヌクこと以外の何かが含まれてる可能性がありますね。
ゴ やっぱりピュアな精神を学んでいくものなんだね。この「めいど×テンション☆」っていう話も、挿入して、パンパンパンパンッていう激しいファックの後にね、「約束しますッ オレッ...」「部長の事ッ 大好きですからッ!」で、「あ...ぁ...私も...信一の事...」「私もッ... 好きひぃぃぃッ...」と叫びながら中出しされてる。
編 うーん。
ゴ こういう感覚はなかったね。
編 ここで描かれているのは、単純にセックスという行為だけでなく、やっぱり愛情みたいなものに基づいた性愛行為ですよね。
ゴ そうだね。それは、でも人間としては当然のことだよね。
編 当然のことですが、それがここでエロ漫画のフォーマットにのっとって、しずる感と擬音たっぷりに、エロエロに描かれているということが、やっぱり面白いですよね。
ゴ なるほどね。ねじれすぎて正常になって、でも所詮エロ漫画だからオナニーに使われてしまう。
編 今のネームだけ取り出してしまうと芸術的な映画みたいじゃないですか。薄闇の中で、男女の結合部がまったく分からず、もちろん正常位、そういうセックスの最中の台詞だったら、素直に受け止められそうな気がするんです。
ゴ そうだね。普通の純愛映画でもファックシーンがないだけであって、実際付き合ってたらセックスするからね。それで子供が生まれるってことは中出ししてるわけだから。それを省略しないで全部描いてるということは、完成されたピュアラブストーリーなのかもしれない。
編 そしてそれが物足りなさもなく、非常にいやらしい。
ゴ 不足してるものはないね。これはもう完成されていて、これを最後にエロ漫画が衰退していくような(笑)。そんなことはないか。
編 ただこういった作品が、アニメ化されるほど、ちゃんと今のユーザーに評価されてるということが重要だと思うんです。
ゴ 最近アニメを観るようになって思ったんだけど、アニメ好きの人って、いい人が多いような気がしてね、やたら友情とか仲間を大事にしたり、みんな純でしょ。恋愛っていってもドロドロした恋愛は絶対出てこないし、なんとなくお互いを意識して頬がポッみたいなね(笑)。純度が凄く高いから、みんなオタクはオタクなんだけど、やさぐれ感がない。
編 僕もそれは凄く感じます。アニメに登場する人物たちってみんな、お互い傷つけないように誰かの気持ちをしっかり思いやって、そういう中で物語が進んでいったりしますよね。
ゴ そうなんだよ。仲間を凄い大事にするし、裏切ったりしないし、明るくほがらかなものがあるじゃない。でもアニメ以外のドラマって日本だとさ、小説はわりと卑屈なものが多いし、明るいものって受け入れられない。だからアニメを観てる人が一番いい人なんじゃないかと思うんだよ(笑)。
編 テレビドラマだと、悪いやつは本当に悪いやつだったりします。
ゴ どこか嫌な部分がないとみんな惹かれない。特に日本映画なんて卑屈なものが多かったりするから、二分化されてるのかなと。
編 識者によれば「傷つきたくない現代の若者」みたいに評されたりもしますが、でもそういう捉え方をしなければ、とても肯定的に見てとることができますよね。
ゴ そうだね。
編 といったように、現代の若者、もしくは愛の形みたいな、アダルトコンテンツ、アダルトビデオの存在意義にもかかわる話にも思えます。やっぱりそれは、これからセックスがどのように描かれるのか、そういう話に繋がるようにも思うんです。
ゴ だから、ゆとり世代さとり世代の、特に男子の性欲が減退して、もうやたらセックスしたりしないというのは、それはピュアだからであって、それまでの我々の世代というのはやたらめったらに好きでもない女とセックスしたがった野蛮な人種。それが絶滅して、いい時代になったんじゃないかな。
編 そして貞操観念が復活していると。
ゴ うん。本当に好きな人と結ばれたいという当たり前のことが当たり前になったということなのかな。
編 そして、その当たり前のことがアダルトコンテンツでも当たり前に描かれるようになったと。
ゴ そうだね。正当な表現に立ち返った。戦前というか、明治だか大正だか知らないけど。
編 今の話を聞いて思ったんですが、そうした当たり前の貞操観念を育むために、オナニーツールの中でそうしたことが謳われるというのは、とても理に適ってますよね。
ゴ そして、エロ本の出版社がどんどん潰れていったりしてるのも、そういう意味では、浄化されているのかもしれない(笑)。
編 というわけで今回は複雑な現代の世相を如実に感じるMOMIさんの『恋乳ているず』でした。
ゴ おそらく女性作家さんだと思うんだけど、女性の感性が実は正しいと(笑)、最近の実感をひしひしと思い出させる一冊だね。
編 ポプリコミックス、人気があるということで、入手しにくいようですが。
ゴ 是非家宝にしていただきたい一冊です。
(続く)
『恋乳ているず』(マックス)
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