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「長生きなんてしたくない」という人の気持ちがわからない――。「将来の夢は長生き」と公言する四十路のオナニーマエストロ・遠藤遊佐さんが綴る、"100まで生きたい"気持ちとリアルな"今"。マンガ家・市田さんのイラストも味わい深い、ゆるやかなスタンスで贈るライフコラムです。
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■テレビゲームがなきゃ生きていけない

最近、テレビゲームばかりしている。
『スプラトゥーン』のソフトをようやく買ったからとか、相変わらず体調イマイチで家にひきこもっているからとかいろいろ理由はあるけれど、ひとことで言えば「そういう時期だから」だと思う。
私は、いわゆるゲームマニアじゃない。
その証拠に、たいして巧くはないし、仕事が忙しいときはほとんどやらない。プレイしたソフトの数も本当に好きな人に比べると何十分の1とかだと思う。人生における優先順位でいったら、ゲームはたぶん5本の指にも入らないんじゃないだろうか(ちなみにオナニーは3番目くらいです)。
でも、何年かに一度、バカみたいに熱中して朝から晩までやってしまう時期がある。今は、わりとそんな感じだ。

テレビゲームというのは、すごい娯楽だと思う。
最初にそれが目の前に現われたときのことは、今でも覚えている。確か中学生のときだった。私は、当時発売されたばかりのファミコンを親にねだることができず(ソフト込みで2万円というのは、田舎の中学生をビビらすのに十分な金額だった)、ゲームをするためにたいして仲良くもない登校拒否の同級生男子の家に毎日足しげく通っていた。『ドラゴンクエスト』も『ポートピア連続殺人事件』も『ゼビウス』も、その子の家でクリアしたんだから、今考えるとけっこうずうずうしい。
子供の頃、ゲームソフトは誕生日かクリスマスじゃないと買ってもらえないくらい高価なものだったけれど、大人になってみるとこんなにコスパのいい暇つぶしは他にないと思う。なんてったって面白いソフトなら、数千円出せば1カ月や2カ月がっつり遊べる。映画が1本が1800円、安い居酒屋でぐでんぐでんになるまで飲んで3,4千円なのと比べると、タダみたいなものと言っても過言じゃない。今はスマホの無料ゲームなんてのもあるから、ゲーム好きとしては夢のような環境と言っていいだろう。

ここんとこ、私の一日はゲームとともに始まっている。
朝起きて夫を会社に送りだしたら、まず3種類くらい並行してやってるスマホゲームを立ちあげる。ぼんやりした頭で順番にプレイし、無課金でできる回数を終えたらしぶしぶ仕事に着手する。仕事に飽きたら骨休めにまたスマホゲーム。夜になったらWiiUでスプラトゥーンだ。お風呂に入るときも3DSを持ち込んでずっとレベル上げしてるんだから手に負えない。
アクションやシューティングみたいに運動神経がモノを言うゲームも嫌いじゃないけど、一番好きなのは、しつこくプレイしていればいつかは必ずクリアできるRPGゲームだ。それはたぶん、「同じことをコツコツ繰り返していれば必ずレベルが上がる」という昭和的なシステムが性に合っているのだと思う。
気に入ったゲームは絶対にラスボスを倒すまで諦めないし、隠しダンジョンも隅々まで舐めるように探索する。瞬発力がないかわりにねちっこいタイプだ。ミッションを一つこなし、また一つこなし......何週間もかけてクリアしたときは、何か大きなことをやり遂げたような幸せな気分になる。「このまま一生ゲームの世界にいられればいいのに」としみじみ思う。

しかし、そんな私に異を唱える厄介な存在がいる。8歳年下の弟だ。
子供の頃は、どっちがドラクエを先にクリアするか本気で競い合ったものなのに、30年経って真っ当な社会人に成長した彼は、ゲームに熱中する私を見るとあきれ顔で「よく飽きないね」と言う。

「なんで? 別にいいでしょ」
「いや、ゲームするのは悪くないけどさ、いい大人が一日中そればっかりしてたらダメだろ」

むむむ......。
夏休みの自由研究代わりにしてやったのは誰だと思ってるのだ。あんたが大学生のときに貸してやったパチンコ代の3万だって返してもらってないぞ!
そう思うものの、バシッと言い返せない。高校入学と同時に親元を離れ、就職活動を勝ち抜いて、20代で結婚して、子供を儲けて、家を買って。そんな世間的に見たら「ちゃんとした大人」である弟の言葉は、いつも私の痛いところを突いてくる。
「ゲームなんて生産性がないことにばかり熱中しているのは社会人としてよろしくない」というのが、彼の主張だ。
でも、ダメな姉は思う。何も作りださないって、そんなにいけないこと? 
子供の頃からずっと「打ち込むものがないのは恥ずかしいこと」「何も作りださないのは悪いこと」と思ってきたけれど、アラフィフになった今改めて考えてみると、それで困ったことだなんて人生で一度もない。
テレビゲームやスマホゲームのいいところは、熱中すると現実の時間が止まるところだ。画面に向かっている間は自分という存在が消え、めんどくさい人間関係やストレスやコンプレックスから自由になれる。あるのは小さな達成感と充実感だけ。それがたまらない。
でも、そんなことを言っても毎日バリバリ働いている弟にはピンとこないだろうから、黙っている。

そんな私であるが、実は最近、ちょっとモヤモヤしていることがある。それは某スマホゲームのランキングで、生意気な弟にどうしても勝てないことだ。
フリーの私と違って彼は会社員、一日のプレイ時間では絶対負けない自信がある。なのに勝つどころか差はどんどん開いていく。
あまりに悔しいので「課金してるんでしょ。金にモノ言わせやがって......!」と抗議したら(大人げなくてすみません)「姉ちゃんのことだから、どうせ一人でコツコツやってるんだろ」と笑われた。

「え、そりゃそうだよ。だってゲームは一人でプレイするもんでしょ?」
「あのね、このゲームはLINEでつながってる友達が多いほうが絶対的に有利なんだよ。仲間と協力し合ったほうが効率的に点数稼げるの......知らなかった?」

ガーン......ゲームの世界にまでそんなリア充贔屓なシステムが導入されているなんて。私の数少ない心のオアシスは、一体どこに行ってしまうんだろうか。
とりあえず今は、少ないLINE友達を増やす努力をすべきか思案中である。ああ、しかし生きにくい世の中になったものよ......。

文=遠藤遊佐




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遠藤遊佐(C)花津ハナヨ
(C)花津ハナヨ
遠藤遊佐 AVとオナニーをこよなく愛するアラフォー女子。一昨年までは職業欄に「ニート」と記入しておりましたが、政府が定めた規定値(16歳から34歳までの無職者)から外れてしまったため、しぶしぶフリーターとなる。AV好きが昂じて最近はAV誌でレビューなどもさせていただいております。好きなものはビールと甘いものと脂身。性感帯はデカ乳首。将来の夢は長生き。
遠藤遊佐ブログ=「エヴィサン。」

市田 ブログのコミック化や新書等で活躍するマンガ家。
著書に『家に帰ると必ず妻が死んだふりをしています』(PHP研究所)、『日本霊異記』(KADOKAWAメディアファクトリー新書)など。
ウェブサイト=「http://urban.sakura.ne.jp」
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16.03.26更新 | WEBスナイパー  >  100まで生きたい。
文=遠藤遊佐 | 市田 |