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浜不二夫式・常識ある大人の為の肉筆紙芝居 第6弾
子宝を授かりたい夫婦がすがった黒装の怪しき僧侶。満願成就のためには前世の因果を清算しなければならないと言うのだが、その方法は妻がひとまず地獄へ堕ちて行を積むというもので......。「女囚くみ子」シリーズのマニア作家・浜不二夫氏が描く大人に向けた紙芝居。
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【二】罪障消滅の行

~お美和の語り~

お白洲を出るとすぐに大きな建物があり、頑丈な門の両脇には二匹の鬼が金棒を突いて門番をしていました。

「ここが修行道場。その方たち女亡者が、罪障消滅の行として地獄の折檻を受ける場所じゃ。明日からお前もここで修行をする。見ておくがよい」

見せられた道場はガランと広く、太い柱が立ち並び、柱には無数の蝋燭がともされて、部屋の隅々まで照らしています。天井には頑丈な格子が縦横に何本も渡されていて、その天井格子から、白い物体がいくつも縄で吊り下げられてゆらゆらと揺れ動いていました。

その物体は......ある程度予想していたとは言え、やはり息が止まる恐ろしさ、浅ましさでした。それは、私同様腰の物一枚のあられもない姿で後ろ手に縛られた女の人たちが、片足を天井から吊られ、足を上、頭を下にしてぶら下げられている姿なのです。

「お前より七日前にこの地獄へ参った女亡者どもじゃ。ここは淫奔の罪を償わされる部屋。この通り逆さ吊りにされておるが、膝に腰巻きの裾を挟ませておいてやったのじゃ。貞節固く膝をシッカリ締めておれば、こんな恥を晒さずにすむ。すぐに股を開く淫ら女はかような姿になるのだ」

お役人様が、手にしている竹鞭でピタピタと叩いて示した目の前の女の人は、最後の腰巻が完全に頭のほうへ捲れ上がって、白い丸々としたお尻から下腹の恥ずかしい草むらまで丸見えでした。何匹もの鬼が女たちの間を巡り歩き、手に持った鞭で、おヘソから下を丸出しにしている女の人のお尻やお股をビシビシと打ち据えるのです。

「アアーッ」
「ヒイーッ」

哀れに泣き叫ぶ女の人たちの浅ましい姿。裸の尻を鞭打たれる苦痛に片足が宙を蹴れば、足の間の女の一番恥ずかしい所が、淫らにもチラチラ見え隠れするのです。

「アアッ、もう駄目!」

最後の女が哀しく呻いて膝から腰巻きを落とし、部屋中の女の人が卑猥に下半身を晒しました。どこかでドロドロと太鼓が鳴ると、縄がゆっくりとゆるめられて、女たちは床に下ろされました。逆さ宙吊りの苦痛からは解放されたわけですが、後ろ手緊縛の縄目はそのまま。捲れ返った腰の物を直すことも出来ずに、全員、おヘソの下を丸出しにして哀れにもがいています。

子宝を願う女たちですからいずれも十八、九から三十路そこそこの若い女房たち。それが一人残らず、白い大きなお尻も下腹も、お股の前の黒い茂みまでも露にして悶える様は、何とも浅ましくも、目を覆いたい淫らな眺めでした。

もう一度ドロドロと太鼓が鳴り、ゾロゾロと異形の者どもが入ってきました。顔にお面をかぶり、ブヨブヨの中年男の体つき。越中褌をしていますが、ほとんどそれが役に立たぬほど股間の一物をおえ返らせています。

「色情だけしか持たぬ色餓鬼どもだ。淫ら女は色餓鬼に嬲られるのじゃ」

それは正に地獄絵図でした。色餓鬼たちは、陰部まで晒して転がされている女たちに群がり取りつき、口を吸い、乳を揉み、アソコにまで指を入れ、舌で舐めしゃぶり、褌から一物を取り出して女たちの口に咥えさせるのです。

哀れにも淫らな光景。転がされた女たちは、後ろ手の縄も解かれぬまま、色餓鬼どもに組み敷かれて、回し念仏講(輪姦)で体を遊ばれていました。

女の私には見るに堪えない淫ら絵図。でも私も、腰の物一つの裸で後ろ手に縄を頂戴していて、目を覆うことさえ出来ずに立ち竦んでいるしかないのです。それを見て、お役人様がおっしゃいました。

「フフフ、見たか、お美和。これが地獄の修行。前世の罪を償うための責め折檻じゃ。但し、これはこの世でのその方の身に起こることではない。お前の魂のなかに起こることで、この世から見たらいわば夢幻じゃ。従って、そなたの操が汚されるということは絶対にない。安心して、罪障消滅の修行に励むがよい」

そう聞かされて、ホッと安心しましたが、それでも、明日から私も、女の身にこのような恥ずかしくも浅ましい責め苦を頂戴しなければならないのだと思うと、身も心も凍るような恐ろしさに足がわなわなと震えました。しかし、こうして後ろ手に厳しく縛り上げられて、地獄のお役人様にしっかりと縄尻を握られている身、どうやってもここから逃れる術はないことを哀しく思い知りながら、追われて歩くほかありませんでした。

「ここが、お前たちの寝泊まりする部屋だ」

修行道場の裏手の建物。中は、話に聞いた伝馬町のお牢屋敷のように牢格子が嵌まった小部屋がズラリと並んでいました。そのいくつかにはもうすでに、私と同じように腰の物一枚の若い女が入れられていて、手で乳房を抱えて身をすくめているのが牢格子の外から見えます。

「お前はここじゃ」

牢部屋の一つの格子の潜り戸が開かれ、やっと私を後ろ手に縛ったお縄が解かれました。大急ぎで腰巻き前を合わせて、シモの毛の辺りまで丸出しの浅ましさからやっと解放されたのです。

牢部屋の中は広さ二畳ほどで、隅に厠の穴があるだけ(外から丸見えのここで用足しをするのです)ですが、ふかふかの布団が敷いてあり、思いのほか居心地は悪くありません。

縄を解かれればお乳丸出しの裸が恥ずかしく、私は両手で胸を抱えて布団の上にうずくまっていました。前には頑丈な格子、三方は木の壁。まさに獣の檻。私は畜生同然に裸で檻に入れられたのです。

「明日からの修行は厳しいぞ。しっかり食べて精をつけておけ」

出された食事はとても美味しく、量もタップリありました。お料理を見て空腹を思い出した私は、恥ずかしいほどお腹に詰めこみました(若いのです)。なぜかすぐに眠くなった私たちは、明日の不安も忘れてぐっすりと深い眠りに落ちていったのです。

ガンガンと木と木を打ち合せる音と男の怒鳴る声で目が覚めました。無意識に襟元を合わせようとして手がジカに乳房に触れて、まだ目覚めきっていない顔で、

「アレ、私、なぜ肌襦袢も寝間着も着ていないんだろう......」

と思って、やっとハッキリ目が覚めました。私は、外から丸見えの檻の中に、湯文字一枚の裸で布団にくるまって寝ていたのです。改めて自分がハダカなことを思い知らされて、顔が熱くなりました。

「起きろ! 起きろ! 女亡者ども!」

地獄の牢役人様が、大声で叫びながら牢格子を六尺棒で叩いていきます。女亡者というのが私たちのことなのです。

「お美和、立ちませい!」

牢格子の外に数人のお役人様が立たれて私を呼びます。男のお役人様の前に腰巻一枚のこの姿で......と思うと、身を切られる思いですが、どうすることも出来ません。私は両腕で胸を抱きながら、檻の潜り戸を出るしかありませんでした。

「お縄じゃ、両手を後ろに回せ!」

床に正座はしましたが、胸を抱いた両腕は離せませんでした。舌打ちをしたお役人様に、腕をつかまれグイと背中へねじ上げられて、

「アレッ!」

人一倍大きな乳房を人目に晒しながら、背中へ回した両手首に素早く縄が搦みついてきて......。お役人様方の縄捌きは誠に鮮やかなものでした。たちまち私の両手は背中でビクとも動かなくなり、ムキ出しの乳房の上下を縄で縛られてくびり出され、

「アアッ、ハアァ......」

喘ぐ首筋にまで縄が掛けられてグイと引き絞られて、思わず身を悶えて、やっと合わせていた腰巻きの前がまた割れて、白い太腿を晒します。ほんの数呼吸で私は、今日もまた豊かに膨らんだ双つの乳房ムキ出しで、両手を後ろ手に厳しく縛り上げられ、腰巻きの前から真っ白な太腿を覗かせた、妖しくも無残な裸女の縄目姿を、大勢の男のお役人様方の前に晒すほかありませんでした。

見廻すまでもなく、どの牢格子の前でも同じような女の哀しい悲鳴と喘ぎが聞こえ、私と何の変わりもない腰の物一枚で後ろ手に縛り上げられた女たちが誕生していました。

私の隣のお牢の前で縛られていた女の人(髪形からみて、私と同じ商家の若い嫁でしょう)は、お役人様が、

「立て!」

とお命じになっても、己の姿の恥ずかしさに床につっ伏したまま動こうとしませんでした。

「こやつ、逆らうか!」

太い革鞭を持たれたお役人様がそばに立たれて、いきなり彼女のお尻を包んでいた桃色の湯文字の裾をグイと捲り上げられました。女の大きなお尻の山が二つ、白々と宙に晒されます。

「アレーッ」

悶える彼女の頭を足で踏みつけたお役人様のお鞭がその白いお尻に続けざまに炸裂して、

「アーッ、痛いっ。やめてッ。お許しをッ」

彼女は泣き叫びながら白いお尻を振り立て、股間の女のダイジな観音様まで周り中の人に公開する哀れな尻振り踊りを踊られされていました。

「ハダカでお縄まで頂戴してしまったんだもの、もうどうしようもないんだわ」

見せられた私は、諦めていました。

「並べ!」

引き立てられて、私たち十数人の女亡者は縦一列に並ばされました。そして前の女の人の後ろ手の縄の先が私の首に巻き付くと判って、私は目が眩みました。

「行け! 歩くんだ」

先頭の女の人が鞭に追われて歩き出せば、首を繋がれた私たちは後ろをついて行くしかないのです。殆ど丸裸で後ろ手に縛られ、縄で首を繋がれて曳かれて行く私たちの浅ましい姿は、どこから見ても牛馬並みの畜生でした。私たち畜生の群れは、牢屋敷から修行道場まで首を繋がれて歩かされたのです。



いよいよ昨日見た地獄の責め苦、前世の罪障消滅のための行が始まるのです。歯の根の合わぬ恐ろしさに足がすくみますが、裸で縛られ首を繋がれた私たちは逃れる方法がないのです。

(続く)

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浜不二夫
異端の作家。インテリジェンス+イマジネーション+ユーモアで描く羞美の世界は甘く、厳しく、エロティック。
「 悪者に捕らわれた女性は、白馬の騎士に助けてもらえますが、罪を償う女囚は誰にも助けてもらえません。刑罰として自由を奪われ、羞恥心が許されない女性の絶望と屈辱を描きたかったのです。死刑の代わりに奴隷刑を採用した社会も書いてみたいのですが――」
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