Does
it know as "ZINE"?
The book which I want to read by myself is made!
“本”と私たちの新しい関係を巡って
“ZINE”≠ART BOOK?
先週の記事において、「ZINE」と、その「ZINE」を取り上げたイベント「ZINE'S MATE」をネットワーカー・ばるぼらさんに紹介していただきました。同人誌やミニコミとは違う自主制作出版物「ZINE」は未だ大衆には知られておらず、そのためか意図的に定義を混同した紹介も見受けられます。電子書籍やケータイコミックの普及が進む現状に逆行するかのような「ZINE」たち。にわかに盛り上がる実状を、引き続きばるぼらさんにレポートしていただきます。
The book which I want to read by myself is made!
“本”と私たちの新しい関係を巡って
“ZINE”≠ART BOOK?
取材・文=ばるぼら
先週の記事において、「ZINE」と、その「ZINE」を取り上げたイベント「ZINE'S MATE」をネットワーカー・ばるぼらさんに紹介していただきました。同人誌やミニコミとは違う自主制作出版物「ZINE」は未だ大衆には知られておらず、そのためか意図的に定義を混同した紹介も見受けられます。電子書籍やケータイコミックの普及が進む現状に逆行するかのような「ZINE」たち。にわかに盛り上がる実状を、引き続きばるぼらさんにレポートしていただきます。
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先週の予告どおり「BOOK OFF / ZINE OFF」に行ってきた。千代田線西日暮里駅のすぐ近く、ビルの三階の一室「op.00302」で7月24日まで開催されている。開催というほど改まった様子はなく、主宰の山本悠氏以外は誰もいなかった。歩くのさえ容易ではなかった「ZINE'S MATE」の盛況さとは対照的である。
このイベントの考えるZINEとは何か。公式サイトでは「個人、あるいは有志のあつまりが自主的に発行する出版物のことを、とくにzineと呼びます」と簡潔に説明する一方で、「同人誌、ミニコミ、プライベートプレス、リトルプレスといった言葉たちよりも一層、捉え方が人それぞれであり、形態も目的もさまざまで定義のあいまいなzineという言葉には、限定されていくメディアのあり方や、現状行われるコミュニケーションの姿をたえず解体し、造形し、見つめていく、そのような期待が込められていると考えます」と、ZINEに何かしらメディア変革への意識を託したコメントもついている。ならばそのようなZINEが並んでいると考えていいのだろう。
入口すぐに現在販売されているZINEが並べられ、奥の部屋には売り切れた、または一点もののZINEが参考に置かれた棚がある。つまり買えるZINEと買えないZINEが分かれていた。一通り目を通した印象では、買えないほうにも面白そうな本が多かったので残念だったが、ひとまず気になったものを4冊購入。『旅行』(PANPANYA)、『第100理科室』(落下傘)、『俺の考えた三輪彩子』(鎖国探偵)、『kuso zine』(koya)。すべて漫画かイラストレーション集で、たまに文章が混ざる。どれも良い。他にも盗撮ZINE、一言ZINEなど、並んでいるZINEは総じて興味深いものが多かった。
「BOOK OFF / ZINE OFF」店内の様子。 |
ばるぼら氏購入の4冊。 |
右中:『俺の考えた三輪彩子』/鎖国探偵 右:『kuso zine』/koya
観ていて引っかかったのは、会場や一部の本のスタンスがどこかしら「アート」を意識している点である。例えば一点ものは買えない。作者と本のあいだの距離が非常に近いというのはZINEの特徴ではあるが、しかしこの時受け手が介在する余地がほとんどなく、会場を訪れた人が閲覧者になるだけでは、“現状行われるコミュニケーションの姿をたえず解体”することは非常に難しいのではないだろうか。作品が作品として孤立し、それを受け手が一方的に解釈する姿はアートのそれである。つまり企画の題目と実態にズレが生じている。ZINEの間口の広さに惹かれてZINEという言葉を選んだのなら、そこは慎重に「ZINEの魅力」を演出してほしかった。
ただ、逆に考えてみると、前回紹介した海外ショッピングサイト「Etsy」や、コミックマーケットのような同人誌即売会の主催者側は、「場の提供」に徹している。最低限の審査以外は本のセレクトに自分達の意図を混ぜない。そうしたインフラ的役割を考えてこの「ZINE OFF」を企画したのならば、それはある程度成功しているだろう。
連鎖的に二つのZINEイベントが開催されるこの現状を、素直にZINEが盛り上がっているのだと感じるが(「ZINE'S MATE」はまた開催するかもしれないらしい)、何かものすごいZINEが出てきて、ZINEの世界に革命が起きたというわけではないと思った。変わってきたのは、ZINEの認知度と流通形態である。海外では「ZINEで注目されてビッグになりたい」という作者と「センスのいい本を置きたい」という店側の思惑が合致し、作者をサポートするパトロン的なギャラリー/ショップも出てきているようだし、日本でも同様の展開が起きているということだと思う。本来「商業出版ではありえない別解」というオルタナティヴな存在であったZINEが、「メジャー予備軍」というインディーズ枠で括られてしまうことにならなければ、歓迎したい動きである。
文=ばるぼら
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ばるぼら ネッ
トワーカー。周辺文化研究家&古雑誌収集家。著書に『教科書には載らないニッポンのイ
ンターネットの歴史教科書』『ウェブアニメーション大百科』など。なんともいえないミ
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